『ロボコップ(2014)』

TOHOシネマズ西新井、スクリーン1の前に掲示されたチラシ。

原題:“Robocop” / 監督:ジョゼ・パジーリャ / 脚本:ジョシュア・ゼトゥマー / オリジナル脚本:エドワード・ニューマイヤー、マイケル・マイナー / 製作:マーク・エイブラハム、エリック・ニューマン / 製作総指揮:ビル・カラッロ、ロジャー・バーンバウム / 撮影監督:ルラ・カルヴァーリョ / プロダクション・デザイナー:マーティン・ホイスト / 編集:ダニエル・レゼンデ、ピーター・マクナルティ / 衣装:エイプリル・フェリー / 音楽:ペドロ・ブロンフマン / 出演:ジョエル・キナマンゲイリー・オールドマンマイケル・キートンアビー・コーニッシュジャッキー・アール・ヘイリー、マイケル・K・ウィリアムズ、ジェニファー・イーリー、ジェイ・バルシェル、サミュエル・L・ジャクソン / ストライク・エンタテインメント製作 / 配給:Sony Pictures Entertainment

2014年アメリカ作品 / 上映時間:1時間57分 / 日本語字幕:林完治

2014年3月14日日本公開

公式サイト : http://www.robocop-movie.jp/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2014/04/11)



[粗筋]

 時は2028年。アメリカの超巨大起業オムニコープはロボットによる警備、犯罪捜査のシステムを構築し、世界中の紛争地帯に提供し利益を上げていた。だが肝心のアメリカでは未だ、「心のないものに人間を裁くことは出来るのか?」という不信が根強く、法律によって規制され商機を得られていない。

 オムニコープのCEOレイモンド・セラーズ(マイケル・キートン)はアメリカ国民の抵抗を緩和するために、一策を講じることを決めた。機械の“支配”に抵抗があるなら、人間の心を与えればいい――そこで目をつけたのが、事故や事件により重度の障害を負った警官に、ロボットの技術を応用した義肢や器官を与え、スーパーコップとして再生し現場に投入する、というものだった。

 再生医療の権威であるデネットノートン博士(ゲイリー・オールドマン)の協力を仰いでの被験者探しは難航したが、思わぬきっかけから最高の適任者が現れた。奇しくもオムニコープのお膝元であり、犯罪多発地域となっていたデトロイド警察でも熱血漢として知られていたアレックス・マーフィ(ジョエル・キナマン)が、捜査中の犯罪組織の標的となり、瀕死の重傷を負う。無事な器官がわずかしか残されていなかった彼を救うためにも、とアレックスの妻クララ(アビー・コーニッシュ)を諭し、遂に計画は発動した。

 そして、アレックスは目覚める。はじめは、鋼鉄で覆われた自分の身体の状態を理解できず、収容された研究所を飛び出してしまう。だが彼の身体は既に脳や一部の臓器、右手部分を除いて、すべてが換装可能な機械で補われた状態になっていた。

 殺してくれ、と訴えるアレックスをノートン博士は懸命に諭し、現場投入のための検証と訓練を実施する。だが、すべてを機能的に処理するロボットと異なり、感情の存在が様々な場面で障害をもたらすのだった……



[感想]

 かつて大ヒットを果たしたSFアクションのリメイクである――が、相変わらず昔の作品に接していない私はそちらを鑑賞していない。特に昔は暴力や流血の描写がどうしても好きになれず(いまの鑑賞傾向からすると信じがたいだろうけれど)、恐らくテレビ放送なども敬遠して通っていたのだろう。だから、オリジナルとの比較では語ることが出来ない。

 しかし、だからこそ本篇が、オリジナルと切り離して、ディストピアを題材としたSFアクションの秀作に仕上がっている、と断言するのに躊躇を感じない。

 本篇の舞台は近未来のデトロイトである。デトロイトといえば、アメリカにおける自動車産業の中心地として発展したが、日本をはじめとする外国のメーカーに押されたことに加え長期化する不況の影響で大手メーカーが衰退、遂には都市自体が財政破綻に至った。犯罪率の高さは以前から知られていたが、どうやら現在に至っても明確な対策は打たれていないらしい。そういう土地柄だからこそ、人間の意志が介在しないロボットによる警察権の行使、という題材が説得力を持つわけだ。

 だが本篇の特色は、そういう現実の背景と共に、そうした制度を導入しよう、という試みがどんな反響を呼ぶか、ということを想定し、反発を考慮した結果として、タイトルロールである“ロボコップ”の登場が促された、という設定を用意していることだ。背景自体が現実の社会問題を汲み上げると同時に、SFらしい思考実験の味付けを本篇にもたらしている。

 その試みに、安易に飛びつくものがある一方で、高精度の義肢を開発する技術者がギリギリまで躊躇し、そのうえで被験者の選択にも経営者の理念が割り込んだり、当人や家族の心情を考慮したり、といった細部の作り込みも、この条件だからこその面白さ、リアリティがある。ロボットが警官になる、という表現だけ見ると子供じみた発想に思えるが、本篇はそれを“サイエンス・フィクション”としてきちんと練り込んでいる。決して晦渋ではなく、観ていれば理解できる程度の難易度だが、その堂々たる構築ぶりは真っ当なSFの趣がある。

 刑事のアレックスが瀕死の重傷を負い、“ロボコップ”として改造されたあともその手捌きは緩まない。開発の拠点がアメリカ国内ではなく、まだまだ人件費が安く土地の確保も容易、といった現実の社会情勢を反映して中国に設定されている、であるとか、人間であるが故の感情や理性が、咄嗟の判断を鈍らせ、ロボットによる警察組織を計画する者には不満を与える結果を導く……といったあたりには、現代的かつ洗練された観察眼を感じさせる。この観察眼に加え、序盤での問題提起に対してあえて明確な解答を示さない冷静な姿勢もまた、本篇の仕上がりに端整な印象をもたらしているのだ。

 これもある意味、正統派のSFらしい無機質な雰囲気を湛えた映像と、そのなかで繰り広げられるアクションの完成度も高い。ただ惜しむらくは、スピード感や生々しい質感を優先したが故だろう、アクションそれぞれの尺が短かったり、瞠目させるようなアイディアには乏しい。ロボコップの視点で、攻撃対象を瞬時に特定したり、人間離れしたスピードでの移動や発砲など、この設定特有の趣向が用いられているあたりには抜かりがないが、これほど端整に出来ているのだから、アクション面でももっと鮮烈なひと味が欲しかったように思われる。

 だがいずれにせよ、リメイクである、という点を考慮から省けば、本篇が極めて精緻に組み立てられたSFアクションであることは間違いない。もし旧作のイメージに囚われて判断したり、早合点して鑑賞を避けているなら、勿体ないことだと思う――そんなに旧作と違っているのか、私には解らないままではあるけれど。



関連作品:

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