偏屈な女傑に振り回される2本立て。

 TOHOシネマズの1ヶ月フリーパス、残すは今日を含めてあと2日。だいぶ前から、この2日は封切り作品を拾うつもりでしたが、出来れば観ておこうと思っていた作品がまだ幾つか残っているので、うち1本を封切り作品のついでに鑑賞するためスケジュールを組んだ結果、久々にTOHOシネマズシャンテで2本立てにすることになりました。TOHOシネマズ唯一の単館系作品メインにかけている劇場なので、もっとハシゴで利用する機会も多そうなものですが、意外と噛み合わないのです。

 天気予報では終日不安定な陽気らしいので、移動は電車を利用しました。出かけたときは雨も降ってませんでしたけど、映画を観たあとまで保証はないので、大事を取る。

 本日1本目は先月封切り作品、名作『メリー・ポピンズ』の映画版制作にあたっての、原作者とウォルト・ディズニーとの駆け引きをユーモラスに、しかし感動的に描いたウォルト・ディズニーの約束』(Walt Disney Studios Japan配給)

メリー・ポピンズ』がどうにもピンと来なかったほうなので、あんまり期待はしてなかったんですが……想像以上に私の好みの内容でした。原作者P・L・トラヴァースの過去をちらつかせて、何故ここまで頑固に映画化を拒んでいたのか、を解きほぐしていく過程が、ちょっとミステリ風なのです。序盤、憎たらしいほどのトラヴァース夫人が、強い想いをもってあの作品を手懸けていたことが解ると、なんとなく愛らしく見えてくるのも面白い。どこまで事実を反映しているのかは解りませんが、本篇を観ると『メリー・ポピンズ』がああいう内容になったのは必然だった、と感じる。詰まるところ、本篇は50年近いときを隔てて、あの映画を補完するために作られた、と捉えるべきなのかも。こういう、作品へのリスペクトと知性とが感じられる作品、私にはどーしても憎めません。

 小一時間ほど、ちょっとお買い物などして暇を潰してから劇場に戻り、鑑賞した2本目は、本日封切り、ピュリッツァー賞トニー賞を受賞した戯曲を、『ER』などを手懸けたジョン・ウェルズが監督、メリル・ストリープジュリア・ロバーツを中心に、豪華なキャストで映画化、家長の失踪を契機に、病身の母が巻き起こす騒動をシニカルにユーモラスに描く8月の家族たち』(Asmik Ace配給)

 こっちは粗筋やキャスト、スタッフの面々から期待大でしたが、まあ素晴らしく濃厚なドラマでした。ハシゴするとよくあることですが、中心となる女性の偏屈ぶりや父親像など、細かなところに似通った要素があるのにどうしてこうも違った内容になるんだか。家族といえども人間であるが故に抱える秘密や腹の探り合いが、ひとつの事件を契機に炸裂する。家族の絆なんて幻想なのだ、と容赦なく突きつける凄まじく毒のある話なのに、全篇に奇妙なユーモアと哀感があって、何故か慰められる心地もする。安易な感動とは無縁の重量がたまりません。どの人物も演じ甲斐があるからこそ結集した名優達も遺憾なく力を発揮してます。これは素晴らしい。

 方向性こそ違えど、たいへん優秀な2本立てだったので、満足して最寄り駅へ――が、困ったことに人身事故により、この時点で30分近く電車が来ない、という状況。別のルートで帰ろうと思い、母にショートメールを送ったところ、父が車を出してくれることになったので、20分ほど経った頃に拾ってもらって帰宅。きのうから山手線が止まることが多いのは、携帯電話に届く速報で感じてましたけど、まさか自分がもろに影響受けるとは思いませんでした。……お陰で電車賃がちょっとだけ浮いた。