『ツイン・ドラゴン』

シネマート六本木、施設外壁に掲示されたポスター。 ツイン・ドラゴン エクストリーム・エディション [Blu-ray]

原題:“雙龍會” / 監督:ツイ・ハークリンゴ・ラム / 原案:ツイ・ハーク、テディ・ロビン、ジョセフ・チェン / 脚本:ツイ・ハーク、ジョセフ・チェン、バリー・ウォン / 製作:ン・シーユン / 撮影監督:アーサー・ウォン(黄永恒)、アーサー・ウォン(黄岳泰)、アンドリュー・ラウ / 武術指導:トン・ワイ、トニー・リャン、ユエン・ウーピン、ツイ・シウミン、クリス・リー、ジャッキー・チェン / 音楽:ローウェル・ロー / 出演:ジャッキー・チェンマギー・チャン、ニナ・リー、テディ・ロビン、シルヴィア・チャンジェームズ・ウォン、デヴィッド・チャン、カーク・ウォン、アルフレッド・チョン、ガイ・ライ、ジェイミー・ラク、フィリップ・チャン / 封切り時配給:東宝東和 / リヴァイヴァル上映配給&映像ソフト発売元:TWIN

1992年4月5日日本公開

2014年4月5日春のプチ香港・中国エンターテイメント映画まつりとしてリヴァイヴァル公開

2014年2月12日映像ソフト日本最新盤発売 [Blu-ray Discamazon]

シネマート六本木にて初見(2014/04/07)



[粗筋]

 ひとつの誘拐事件が、同じ日に生まれた兄弟の命運を分けた。一方は裕福な両親の腕に残ったが、もう一方は無頼の生き方を強いられる。そして、28年の時が過ぎた――

 親元から引き離されたひとり、ジャッキー(ジャッキー・チェン)は自動車修理工として働きながら、ときおり兄貴分のターザン(テディ・ロビン)と騒動を起こしている。ターザンの思い込みとも知らず、彼が「自分の女だ」と語ったクラブの歌姫バーバラ(マギー・チャン)を守るために奮闘したりもする――チンピラだが、友情に厚いジャッキーは、それでもターザンを見捨てたりはしなかった。

 もうひとりの子供マー(ジャッキー・チェン)は、ニューヨークで教育を受け、いまや将来を嘱望される音楽家に成長していた。今回の帰国に際して、オーケストラを前にタクトを振ることになっており、好事家のあいだで話題となっている。政略結婚を目論んだ関係者がサリー(ニナ・リー)という娘を世話役として寄越したが、生真面目なマーにはあまりありがたくなかった。

 このふたり、双子というだけあって瓜二つだったことが、思わぬ騒動を引き起こした。ジャッキーはバーバラを助けるとき、その場を切り抜けるためにターザンが凄腕のレーサーだと吹聴し、バーバラに執心していたギャングのウィン(アルフレッド・チョン)の対抗心を刺激して逃げおおせたが、ドタバタの末にウィンに大怪我を負わせてしまい、ギャングからある仕事の運転手を務めることを要求される。

 事態はこの辺りからこんがらかり始めた。偶然同じレストランで隣同士になったとき、バーバラとサリーがふたりを取り違えて行動を共にしてしまう。バーバラは“ジャッキー”の思いがけない音楽の素養に惹かれ、サリーは“マー”が披露した腕っ節に理想の男性を見て、成り行きでベッドインしてしまう。更にはギャングまでもが、瓜二つのふたりに翻弄されはじめて……



[感想]

 実はこの作品、当時の香港映画監督協会が資金捻出のために企画したものらしい。だからなのかも知れない――この時期のジャッキー作品としては、あまり冒険のない作りになっているように思う。

 双子をひとりで演じてるだろ、と仰言りたいだろうが、率直にいえば本篇の冒険、特色はその1点に限られている、と言っていい。あとは基本的に、ジャッキーがいちど挑み、成功させた表現を応用しているだけなのだ。初期から観客を喜ばせることに熱心だったジャッキーは、意識して新作ごとに異なる趣向を凝らしている。こと、本篇が制作された時期は、アクションでの多彩さがそろそろ行き詰まりを見せていたあたりで、本篇と相前後して発表された『ポリス・ストーリー3』はミシェル・ヨーを大きくフィーチャーして新しい方向性を採り入れているし、アクションの派手さ以上にコメディ、ストーリーとしての面白さを追求した『ミラクル/奇蹟』も発表され、日本の漫画を原作にした『シティーハンター』などというのもこの時期に作られた。そもそも、ずっと自身が監督を兼任することが多かった彼が、このあたりから別の監督を起用するようになっていったのも、マンネリを打破しよう、という意図があってのことと思われる。

 双子という変わったシチュエーションに、ふたりの監督がドラマパートとアクションパートを分けあって演出する、という趣向は特異だが、そこで扱われるアクションやコメディの手法はほとんど既に試みたものが多い。似た男ふたりが、ひとりの女を相手にえんえん振り回される様子や、アクションシーンの流れなど、あくまで本篇に至るまでに試みた趣向を引き延ばしたような印象だ。既に完成されているだけに安定した面白さがあるが、ちょっと引き延ばしすぎている感もある。どこか幾分、守りに入っているようにも見えるのだ。

 だが、前述したように、本篇はもともと資金捻出が第一の目的だった。そのために必要なのは、確実にヒットさせることであり、実験に走ることではなかった。ジャッキーが性格の異なる双子を演じる、というところで強く目を惹きながら、アクションやコメディの部分で安定した面白さを追求する、という作り方は、目的からすれば非常に妥当だろう。

 そういう、意識して狙った作りだから、考えようによっては一般的な観客が求めていた、当時のジャッキー・チェンらしさが詰まった内容になっているとも言える。曲芸的なアクションも、ど派手なカースタントも、少し行きすぎた勘違いを引き金にしたドタバタ喜劇も、そしてあとを引きずることのない爽快な結末も、ちゃんと抜かりなく採り入れられている。資金捻出と言い条、その表現のためにセットやスタントもちゃんと準備している――あっちこっちに香港の映画監督が出演しているあたりはそれこそ予算削減なのかも知れないが、これも本篇の見所のひとつになっているのも間違いない。プログラムもきちんと購入しているような香港映画ファンでないと誰がどこに出ているのかまったく解らないだろうが、香港の監督は役者出身だったり兼任していることも多いので、それこそジャッキー作品に親しんでいると、ああ、このひとに見覚えがある、と感じるのも一度や二度でないはずだ。

 いわば本篇は、なにをどう使えば興収的に成功するか、解っているからこそ作り出せる、一種の堅実なプログラム・ピクチャーと言えるだろう。往年の香港映画らしいストーリーのハチャメチャっぷりも、ここまで来れば問題にする方が馬鹿げている。



関連作品:

強奪のトライアングル』/『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地争覇』/『ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝

ポリス・ストーリー3』/『ミラクル/奇蹟』/『プロジェクト・イーグル』/『ライジング・ドラゴン』/『燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激闘

チャップリンの独裁者』/『アダプテーション』/『THE ONE