『プリキュアオールスターズ New Stage3/永遠のともだち』

TOHOシネマズ西新井、施設外壁に掲示されたポスター。

原作:東堂いづみ / 監督:小川孝治 / 脚本:成田良美 / オリジナルキャラクターデザイン:稲上晃香川久馬越嘉彦川村敏江、高橋晃 / キャラクターデザイン&作画監督青山充 / 美術監督:渡辺佳人 / 色彩設計:澤田豊二 / 製作担当:藤岡和実 / 音楽:高梨康治 / 声の出演:中島愛潘めぐみ松井菜桜子、山本匠馬、生天目仁美寿美菜子渕上舞、宮本佳那子、釘宮理恵西原久美子今井由香福圓美里金元寿子井上麻里奈小清水亜美水樹奈々水沢史絵沖佳苗三瓶由布子竹内順子伊瀬茉莉也永野愛前田愛仙台エリ樹元オリエ榎本温子本名陽子、ゆかな、能登麻美子愛河里花子、玉川砂記子、辻美優、高橋美衣、花房里枝吉村那奈美剛力彩芽、吉田小南美、平野文野沢雅子菊池正美 / 配給:東映

2014年日本作品 / 上映時間:1時間11分

2014年3月15日日本公開

公式サイト : http://www.precure-allstars.com/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2014/03/24)



[粗筋]

 別世界にある妖精学校で、プリキュアの妖精となるべく勉強を続けていたグレル(愛河里花子)とエンエン(玉川砂記子)は、先生に頼まれて、新たに誕生した“ハピネスチャージプリキュア”のことをプリキュア教科書に記載するべく、彼女たちについて調べるために人間の世界へと赴いた。

 ふたりは前の事件で知り合った妖精シャルル(西原久美子)を頼りに、新しいプリキュアの妖精リボン(松井菜桜子)を紹介して貰い、何とか“ハピネスチャージプリキュア”のふたり、愛乃めぐみ(中島愛)と白雪ひめ(潘めぐみ)に逢うことが出来た。

 だがそんな矢先、人間の世界で奇妙な事件が起きる。多くの子供たちが突如として眠りから目醒めなくなっている、というのだ。奇しくもめぐみが似たような症状を呈しており、“ハピネスチャージプリキュア”のサポートをしている地球の精霊・ブルー(山本匠馬)が相田マナ(生天目仁美)たち“ドキドキ!プリキュア”の面々とひめを送りこむと、そこにはめぐみと、眠りに就いたままの子供たちが暢気に戯れていた。

 そして、そこにはかつて、グレルとエンエンと同じ妖精学校で学んでいたバクの子供・ユメタ(吉田小南美)とその母親マァム(平野文)の姿もあった。どうやらマァムは、なにか思惑があって子供たちを夢の世界に閉じ込めているらしい。解放しようとしたマナたちに、マァムは吸い込んだ悪夢を差し向ける。プリキュアに変身したマナたちは果敢に悪夢を蹴散らすも、夢の世界ではバクであるマァムたちに対抗できず、現実の世界に押し戻されてしまう。

 マァムに立ち向かうためには、ほかのプリキュアたちのアイディアも借りたい。ひとまず一同は翌朝、改めてプリキュア仲間たちに呼びかけることにして家路に就く。

 しかし夜が明けると、思わぬ事態に発展していた。グレルたちが夢の世界に落としてきたプリキュア教科書を手懸かりに、プリキュアたちをみな夢の世界に閉じ込めてしまったのである。難を逃れたのは、まだ教科書に記載されていなかっためぐみとひめだけ。

 プリキュアになりたてのめぐみと、ちょっと前まで勝った経験もなかったひめ。頼りないふたりだが、何とか活路を見出そうと、自分たちだけで夢の世界へと乗り込むのだが……



[感想]

 いつの間にやら恒例となった、歴代プリキュア総出演のシリーズ、累計で6作目であり、“New Stage”と銘打っての第3作である。最初の3作でいちどピリオドを打ったのと同様に、今度も3作目で一区切り、ということになった。

 しかし、前の3作がもともとはお祭り的な企画から出発して膨らんでいったものだったのに対し、“New Stage”の3作については、もっとまとまりのあるものを、という意図をもって製作したことが窺える。本篇はシリーズの決着に相応しい内容となっているのだ。

 率直に言えば、シナリオは弱い。子供向けだから容赦して、といっても、やっぱりこの安易な組み立ては気になるところだ。

 プリキュア教科書作りのために妖精学校の生徒が人間の世界を訪ねてきたところから話が始まり、その成り行きで最新のプリキュアに活躍の場が設けられる、という経緯は、毎回オールスターズにて、最も経験が浅いはずの新しいプリキュアが活躍する違和感を実に自然に受け入れさせて絶妙なアイディアだと思うが、問題は眠らされたプリキュアたちの反応や、その後の人物配置だ。言うまでもなく、彼女たちは自力で活路を見出すのだが、そのきっかけがないのでどうにも唐突の感は否めない――言うまでもないくらいに自明な話とはいえ、もうちょっと何かしらきっかけがあった方が興奮も感動もあったように思える。

 また、一部のプリキュアの出し方もまた唐突なのも気になる点である。最新のテレビシリーズ『ハピネスチャージプリキュア!』は既にOPにおいて4人グループになることが示唆されていて、うちひとりキュアフォーチュンは登場済ながら作中で単独行動をしているために、オールスターズの通例として合流はしていない(『ハートキャッチ〜』や『スイート〜』でも、別行動を取るプリキュアがオールスターズの公開時には登場していたが、オールスターズには加わっていない)が、残るもうひとり、キュアハニーは本篇公開後1週間を経た2014年3月23日の放送でも登場しておらず、予告篇からしてどうやら30日放送でようやく初お目見えとなるらしい。にもかかわらず、本篇には彼女が極めて唐突に――他のどの出来事よりも遥かに唐突に登場する。その出し方には、TVシリーズでちゃんと紹介されておらず、かつ上映期間中には登場するであろうことに配慮したことが窺えるのだが、ただ出て来れば嬉しい、という本当にいとけない子供ならともかく、やっぱりいい歳をした大人には無理矢理に思える。この段階では加わっていない、と割り切ったほうが良かったように思えるのだ。

 と、だいぶうるさく書き連ねてみたが、しかしだからと言って不満が多かったのか、と問われると、違うのである。むしろ、“New Stage”になって以降、薄れていた類の満足感が本篇にはある。

 シンプルに“お祭り”という性質を打ち出した印象の強い最初の3作に対し、仕切り直しての“New Stage”はお話としてのまとまりを重視していた。第1作ではメインのプリキュアではない女の子を主人公に据え、第2作ではプリキュアを補佐する妖精たちがどういうふうに交流しているのか? という観点から描き出した。いずれも、同じプリキュアだから何となく集まった、というイメージのある旧作と一線を画し、物語として愉しめるものを、という意図だったと推測出来るが、それ故にどうしても、“New Stage”第1作時点で30人近くなっていたプリキュア全員に可能な限り均等に出番を割り振ることは難しくなり、また本来対象とすべき年齢層が(再放送も実施されているので親しむ機会はあるとは言え)初期のキャラクターについて知っているのか、という疑問もあってだろう、比較的最近のシリーズ以外のプリキュアたちは出番を削られ、顔は出て来るが台詞はない、というのが大半になっていた。

 本篇においても、台詞がない――エンドロールにキャラクター名の記載がないことからも明らかだ――キャラクターはいる。だが、すべてのシリーズから、最低でも中心となる1名は登場し、まんべんなく網羅している。さすがに全員の変身シーンや必殺技を完全な尺で組み込むところまでは出来ていないが、可能な範囲で採り入れ、ワンカットはお披露目するところを作っている。しかも、異なるグループのプリキュア同士が組んで戦う場面を多く設けることで、結果として「みんないる」という雰囲気を出しながらも、台詞がないキャラクターがいることをほとんど意識させない工夫までしているのだ。よほど目敏いひとでもない限り、本篇中で誰が喋っていなかったか、を意識することはないだろう。出演シーンの細かな配分とイメージの演出により、下手をするとこれまでの“オールスターズ”作品6本のなかで最も全員が勢揃いしている、と感じさせる仕上がりになっている。

 何より、本篇は“New Stage”3部作の締め括りとして実に綺麗な展開を用意しているのだ――個人的にはもうちょっと、そこに至る伏線にも繊細であって欲しかった、という嫌味はあるのだが、このアイディアが3部作としての決着に必要不可欠だった、というのは、観た大人なら納得していただけるはずである。

 この趣向は、“オールスター”の豪華さを犠牲にしてでも、物語に力を注いだ前2作があってこそ活きている。前々から、このシリーズのスタッフは旧作に対する反省を重ね、研鑽を怠っていない、と感じていたが、この“New Stage”については早い段階から、第3作で一括りとする意識のもとで製作していたのかも知れない。そのくらい、趣向の配分がはっきりしている――前2作で前提を築いたうえで、本篇では煩雑に物語を組み込むことなく、オールスターの贅沢さと、全体を貫く物語を決着させるカタルシスを成立させようとした。

 単品で論じようとすれば、どうしてもお話としてのぎこちなさ、唐突さに否定的な見解を連ねたくなる。だが、これはあくまで『プリキュア』というシリーズを通して楽しんでくれるひとびとへのサーヴィスなのだ。3作を費やして、その意図を完遂した本篇に、ストーリーの完成度とは別次元の充実感があるのも当然なのである。



 ちなみにこの作品、新人が活躍するあいだ、昔のプリキュアたちはそれぞれが理想的な夢の世界に閉じ込められるのだが、この際の様子がオリジナルシリーズを観ているといちいち頷けるのも見所だ。

 キュアドリームこと夢原のぞみは、勉強が苦手にも拘わらず教職を志す、というくだりがTVシリーズ終盤で描かれているが、まさに作中の姿はそのままだ。キュアメロディこと北条響は大勢の前でピアノ演奏をお披露目しており、昨年の主役キュアハートこと相田マナは女の子の姿のままで総理大臣になっている。ちゃんとそれぞれの作品のヒロインについて記憶しているひとなら、彼女たちが閉じ込められている、という危機的状況にも拘わらずニヤニヤしてしまうはずである。

 初代のキュアブラックこと美墨なぎさが、本篇のあいだずっと憧れていた先輩とのロマンスをまったく夢想していないのも考えてみると面白いことだが、しかしこの夢の描写で、個人的にいちばんツボだったのはキュアビートこと黒川エレンである。あえてここでは説明しないが――本当に君はそれしか望みがないのか君は。



関連作品:

プリキュアオールスターズDX/みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!』/『プリキュアオールスターズDX2/希望の光☆レインボージュエルを守れ!』/『プリキュアオールスターズDX3/未来にとどけ! 世界をつなぐ☆虹色の花』/『プリキュアオールスターズ New Stage/みらいのともだち』/『プリキュアオールスターズ New Stage2/こころのともだち

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