『鷹の爪7〜女王陛下のジョブーブ〜』

TOHOシネマズ日本橋、スクリーン7前に掲示された東京アニメアワードフェスティバル2014のチラシ。

監督、脚本、キャラクターデザイン、編集など:FROGMAN / 音楽:manzo / 主題歌:Sotte Bosse『Beautiful Life』 / 挿入歌:rieco『大丈夫』 / 声の出演:FROGMAN木の実ナナ、本田翼、尾美としのり、おたまじゃくし / 提供:タウンワーク / 制作&配給:DLE

2014年日本作品 / 上映時間:54分

2014年4月4日日本公開

公式サイト : http://鷹の爪.jp/taka7/

TOHOシネマズ日本橋にて初見(2014/03/20) ※東京アニメアワードフェスティバル・ワールドプレミア試写会



[粗筋]

 今日も今日とて、世界征服の野望のために労働に勤しむ鷹の爪団総統(FROGMAN)だった――が、またしてもあっという間に解雇されてしまった。

 いくらバイト先を見つけてもすぐにクビにされる現実に嫌気が差して、総統は遂にとんでもない計画を打ち出した。雇ってくれるところがないなら、自分で会社を経営すればいい。

 戦闘主任の吉田(FROGMAN)ら部下たちは最初こそ猛反対していたものの、総統が起業のためのアイディアを口にすると、一瞬で意見を翻した。総統は、公共施設のトイレにある“ハンドドライヤー”を、より快適なものに調整する事業を始めよう、というのである。

 しかし所詮は素人の思いつき――というか、具体的になにをどうすれば快適になるのか本人たちも解っていないから、順調に運ぶはずもない。なかなか契約が取れず、外回りの最中に溜息をついていた総統だったが、ひとつの出逢いが状況を一変させた。

 それは、ジョブーブ(おたまじゃくし)だった。人間の世界で働きたい、と考えて街に出て来たものの、雇ってくれるひとはおらず、途方に暮れていたジョブーブと出逢った総統は、同情して秘密基地に連れていく。

 折しも吉田たちがハンドドライヤーの風圧調整に試行錯誤していたところだったが、ジョブーブが手を加えると、途端にハンドドライヤーに驚くべき変化が起きる。はじめは総統のきまぐれに苦い顔をしていた一同だったが、この1件であっさり掌を返し、ジョブーブを“同僚”として受け入れる。

 鷹の爪団、もとい鷹爪コンツェルンによる新事業は、ジョブーブの加入で一気に勢いをつけた。やがて彼らは、ある大企業の依頼を引き受けるのだが、これが思わぬ事態に彼らを巻き込んでいく……



[感想]

 毎回、様々な趣向を凝らしてファンを愉しませてくれる『秘密結社鷹の爪』劇場版であるが、今回はアルバイト情報誌『タウンワーク』のサポートを受けて、“おごり”で公開する、という体裁を取った。これはシリーズのスピンオフ企画『ハイブリッド刑事』でいちど試みているものだが、再度実現したあたり、それなりの成果を収めたのかも知れない。

 そうした背景ゆえに、本篇では『タウンワーク』のマスコットキャラである“ジョブーブ”をゲスト、というよりも、鷹の爪団の面々に匹敵するメインキャラとして起用している。別の世界からのキャラクター導入、ということになると、他の作品の場合なら独特の作品世界が乱れるのでは、と不安になるところだが、ことこのシリーズではそういう心配は無用のようだ。もともとwebアニメとしてコラボレーション済だったこともあり、ほとんど自作のように物語に組み込んでいる。

 ただ、ストーリーの趣は、従来の『鷹の爪』劇場版とちょっと異なっている。島根が飛んだり宇宙に飛びだしたり、部分的に3DCGを導入して贅沢に描いたかと思えば、レオナルド博士が予想外のかたちで実写化したり、といった強烈なヴィジュアルをどこかしらに採り入れるのが常だった。だが本篇は、1時間に足らない短い尺ということもあるのだろうが、ヴィジュアル面での梃子入れは施していない。肝心のストーリーも、あり得ない展開ではあるが、わりと狭い範囲で決着している印象だ。

 提供した『タウンワーク』がアルバイト情報誌であり、マスコットのジョブーブもいわば“はたらくどうぶつ”なので、労働や経済活動がテーマになっている、という点も大きいのだろう。鷹の爪団の総統がアルバイトをしている、といった描写や、資金難故の困窮した暮らしぶりについてはしばしば触れていたが、今回は冒頭からかなり生々しい背景が描かれる。なかなかバイトが長続きせず、窮余の策として会社を興そうとし、やがて、並行して描かれていた大企業での出来事とリンクしていく。

 と表面だけ記せば若干まともそうに聞こえるが、実際の行動、計画は相変わらず『鷹の爪』らしくハチャメチャだ。総統がクビになる理由や事業の内容、大企業と繋がっていく過程まで、至るところにツッコミどころがちりばめられている。そのなかで総統や吉田くんが演じる役割はいつも通りだが、そこにしっかりとジョブーブを組み込んでおり、まったく違和感がない。本当に“鷹の爪団”にジョブーブが仲間入りしているかのような趣さえある。

 毎度ながらピンポイントで招いた豪華なゲストの、贅沢なのか妥当なのか解らない使い方も愉しい。木の実ナナは実物のゴージャスさとはちょっと異なる、貫禄のある実業家女性、といったキャラクターに扮しているが、台詞の端々に本人の個性とオーラが滲んでいてニヤリとさせられる。本田翼は、声優としてはあまりこなれた演技が出来ているとは言えないのだが、ヒロインを筆頭に7役を演じているそうで、ある意味贅沢、かつ乱暴な起用にきちんと応えている。彼女がどこで声を吹きこんでいるのか探すのもひとつの楽しみ方だろう。もしかしたらあちこちの記事で言及してしまっているかも知れないが、恐らくこんな作品でもない限り永遠に演じる機会などないであろう“役”もあり、あれが聴けるだけでも価値がある、と言ってしまいたい。

 ほぼギャグだらけだが、そこに紆余曲折、起承転結を設けて、ちゃんと結末のカタルシスに結びつける手管も相変わらず巧みだ。ただ、いつもよりも世界がちょっと地に足が着いている分、ギャグ自体が孕む無茶苦茶さをそのまま引っ張り込んでしまったような結末には乱暴さも感じてしまい、他の『鷹の爪』劇場版にある、「なんでこいつらに感動させられなきゃいけないんだ」という悔しさ混じりの爽快感も割り引かれている感は否めない。しかし、笑いや細かなネタをふんだんにちりばめ、チープな作りでも随所に豪華な趣向を凝らし、ひたすらに観客を愉しませ、快い気持ちで劇場から送り出してくれるサーヴィス精神は一貫している。映像ソフトリリースのときはどうなるか知らないが(『ハイブリッド刑事』の前例からすると、今回もプレゼントというかたちで限定配布される可能性もあるかも知れない。あくまで推測だが)、これが映画館の大スクリーンで、無料で鑑賞出来るというのはとても嬉しい話だ。ファンなら、この心意気に応えて劇場まで足を運んでいただきたい。そしてグッズや飲食物を購入して、映画館の収益に貢献してください。そうすればきっと、こんな奇特な企画にまた挑んでくれるはず。



関連作品:

秘密結社鷹の爪 THE MOVIE II 〜私を愛した黒烏龍茶〜』/『秘密結社鷹の爪 THE MOVIE 3 〜http://鷹の爪.jpは永遠に〜』/『ハイブリッド刑事』/『鷹の爪GO〜美しきエリエール消臭プラス〜

ピューと吹く!ジャガー〜いま、吹きにゆきます〜』/『friends もののけ島のナキ

それでもボクはやってない