『レザボア・ドッグス』

レザボア・ドッグス [Blu-ray]

原題:“Reservoir Dogs” / 監督&脚本:クエンティン・タランティーノ / 製作:ローレンス・ベンダー / 製作総指揮:リチャード・N・グラッドスタイン、ロンナ・B・ウォーレス、モンテ・ヘルマン / 共同製作:ハーヴェイ・カイテル / 撮影監督:アンジェイ・セクラ / プロダクション・デザイナー:デヴィッド・ワスコ / 編集:サリー・メンケ / 衣装:ベッツィ・ハイマン / キャスティング:ロニー・イェスカル,C.S.A. / 音楽監修:カリン・ラットマン / 出演:ハーヴェイ・カイテルティム・ロスマイケル・マドセンクリストファー・ペンスティーヴ・ブシェミローレンス・ティアニー、カーク・バルツ、エドワード・バンカークエンティン・タランティーノ / 声の出演:スティーヴン・ライト / 配給:ヘラルド・エース / 映像ソフト発売元:GENEON UNIVERSAL ENTERTAINMENT

1991年アメリカ作品 / 上映時間:1時間40分 / 日本語字幕:齋藤敦子

1993年4月24日日本公開

2010年5月12日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon]

Blu-ray Discにて初見(2014/02/24)



[粗筋]

 宝石店の襲撃計画のために集められたのは、6人の男達。ホワイト(ハーヴェイ・カイテル)、オレンジ(ティム・ロス)、ブロンド(マイケル・マドセン)、ブルー(エドワード・バンカー)、ブラウン(クエンティン・タランティーノ)、そしてピンク(スティーヴ・ブシェミ)。裏の仕事を統括するジョー(ローレンス・ティエリー)と息子のエディ(クリストファー・ペン)の仕切りで、万事そつなくこなす、はずだった。

 だが襲撃は、最悪の展開となった。ホワイトは腹を撃たれ瀕死の重傷を負ったオレンジを連れて、命からがらアジトへ舞い戻る。別経路で戻っていたピンクに事情を問われるが、ホワイトも状況を完全には把握出来ていなかった。同行していたブラウンは頭を撃たれて死んでいる。

 ピンクが言うには、仲間内に警察のイヌが潜んでいた可能性が高い、という。だがホワイトからしてみれば、事態を悪化させたのはブロンドだった。警報に手をかけた人間を容赦なく殺害したことで現場は壮絶な銃撃戦となり、この始末になったのである。

 遅れて戻ってきたブロンドと口論になり、アジトは険悪な空気に満たされた。ブロンドが現場で捕らえてきた警官から情報を聞き出そう、と言い出してしばし沈静化するが、エディが呼び出されると、ふたたび事態は紛糾する……。



[感想]

 処女作にはその作家の全てが詰まっている、と言われる。誰もがそうだとは限らないだろう――どうお世辞に眺めても若書きに過ぎない作品だってあるし、経験を積むにつれて大きく方向性が変わることだって珍しくない――が、クエンティン・タランティーノ監督については当て嵌まりそうだ。

キル・ビル』から彼の作品に接してきた私のような人間は、冒頭からいきなり「タランティーノだ!」と呟いてしまうくらい、その体臭は濃い。やけに個性の際立った男達が、食堂のテーブルを囲んで、明らかにどうでもいい議論に興じている。しかし、その雑談に紛れて交わされるのは、犯罪の計画だ。俗っぽい陽気さに垣間見える狂気は、『デス・プルーフ in グラインドハウス』の女性達が交わす会話にも似て、彼らの個性を素速く的確に観る側に浸透する。

 意気揚々と出陣する彼らの姿を見せたあと、だがオープニングを挟んだあとで事態は一転する。乗用車の後部座席で血にまみれてのたうつオレンジと、ハンドルを握りながら大声で励ますホワイトの様子は、計画が最悪の展開を迎えたことを直感させる。いったい何が起きたのか、という興味を惹きながらも、しかしなかなか答を提示しないまま、アジトで更にピンクを加えて混乱が続く。そのあとで唐突に視点は過去へと戻り、ホワイトが計画に加わった経緯が描かれる。ふたたび現在に戻ったかと思えば、新たに仲間が犯行後の混乱に加わり、そしてまた別の人物の過去を描いて、観客に事態の背景を仄めかす。時系列を縦横無尽に行き来し、観客を翻弄する手管は、およそ処女作とは思えないほどに堂々たるものだ。そして、もうこれ以上ないほどにタランティーノらしいのである。

 一方で、予想していたほどに暴力描写は過激というほどではない――当時としてはそうではなかったかも知れないし、ブロンドが捕らえてきた警察官相手に行うことなどは、たとえ直接描写がなくとも慣れないひとにはハードだろうが、後年の作品と比較すればまだまだ大人しい。銃撃戦があった、と序盤から仄めかされるわりには、ようやく描かれる過去のパートでのくだりは思いのほか簡単で、クライマックスも呆気ない、と感じる程度だ。だが、スピード感と、ストーリー運びのなかで絶妙なタイミングに挟みこんでいるからこそ生まれる緊張感はヒリヒリするほどで、インパクトは並大抵ではない。西部劇における決闘の緊迫感を、よりシャープに繰り出しているような感覚、といえば近いだろうか。後年の作品にもこうした緊張感の演出は見られるが、前後のやり取りにしばし悪ノリが添えられる傾向にあり、考えようによっては本篇のほうがより純化された、効果的な使い方をしているとさえ言える。

 故に、最初に掲げた感想を抱くわけである。他の作家がすべてそうだ、というわけではないだろうが、ことタランティーノについては、この処女作に彼のすべてが詰まっている。すべて、というのが大袈裟だとしても、ここに基礎があることを否定できるひとはいないはずだ。



関連作品:

キル・ビル Vol.1』/『キル・ビル Vol.2』/『シン・シティ』/『グラインドハウス』/『デス・プルーフ in グラインドハウス』/『イングロリアス・バスターズ』/『ジャンゴ 繋がれざる者

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