『インシディアス 第2章』

TOHOシネマズ西新井、施設外壁に掲示されたポスター。

原題:“Insidious : Chapter 2” / 監督&原案:ジェームズ・ワン / 原案&脚本:リー・ワネル / 製作:ジェイソン・ブラムオーレン・ペリ / 製作総指揮:ジャネット・ブリル、リア・バーマン、ブライアン・カヴァナー=ジョーンズ、チャールズ・レイトン、ピーター・シュレッセル、スティーヴン・シュナイダー / 撮影監督:ジョン・R・レオネッティ / プロダクション・デザイナー:ジェニファー・スペンス / 編集:カーク・M・モッリ / 衣装:クリスティン・M・バーク / キャスティング:アン・マッカーシー、ケリー・ロイ / 音楽:ジョセフ・ビシャラ / 出演:パトリック・ウィルソンローズ・バーン、タイ・シンプキンズ、リン・シェイア、バーバラ・ハーシー、スティーヴ・コールター、リー・ワネル、アンガス・サンプソン、アンドリュー・アストール / オーレン・ペリ/ブラムハウス製作 / 配給:Sony Pictures Entertainment

2013年アメリカ作品 / 上映時間:1時間46分 / 日本語字幕:松浦美奈

2014年1月10日日本公開

公式サイト : http://www.insidious2.jp/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2014/01/10)



[粗筋]

 霊能者ルイーズ(リン・シェイア)の死、という哀しい犠牲を払ったものの、ランバート一家を襲った謎の恐怖は退けた、かに見えた。

 だが、ルネ(ローズ・バーン)は怯えていた。我が子を“彼方の世界”から連れ戻したはずの夫は、しかしどこか以前と雰囲気が違っているように思える。災厄にまみれた新居をいちど離れ、ジョシュの母ロレイン(バーバラ・ハーシー)が暮らす実家に身を寄せることになったが、ルネにはまだ、怪しい気配が身辺にまとわりついている気がしてならなかった。

 同じ頃、ルイーズとともに“死者”の世界に関わってきたスペック(リー・ワネル)とタッカー(アンガス・サンプソン)は、まだルイーズが遠くに行ってしまったとは思えなかった。ふたりがルイーズの邸宅に赴き、彼女の気配を辿ることを試みると、彼女が携わった事件の資料が見つかる。やがて手に取ったビデオテープのラベルに記されていたのは、“ジョシュ・ランバート”――それは、ルイーズが幼いジョシュの忌まわしい記憶を封印した際に記録したものと思しかった。

 さっそく映像を確かめたスペックとタッカーは、そのなかに異様なものを発見する。謎の老婆の到来を告げるジョシュに、ルイーズが彼女の居場所を訊ねると、ジョシュは眼を閉じたまま「案内するよ」と漏らし、廊下のほうへと歩いていく。だが、ジョシュが言葉を口にしたとき、顔を向けたほうには、意外な人物の姿があった。

 いったい、ジョシュの過去に何があったのか。そして、死してなおルイーズは何を伝えようとしているのか? ふたりはその手がかりを得るために、記録映像にも登場している、かつてルイーズの仲間だったカール(スティーヴ・コールター)を呼び寄せる。カールがサイコロを用いた降霊術でルイーズに向かって問いを投げかけると、彼女は確かに傍にいるようだった……



[感想]

 本篇の第1章『インシディアス』は、クラシカルな匂いを備えながらも『SAW』で鮮烈にデビューしたジェームズ・ワン監督とリー・ワネルらしいサプライズを採り入れ、一方で『SAW』や他のホラー作品の傾向と一線を画し、広範な年齢層が鑑賞出来るように流血や暴力の表現を抑えながら恐怖を演出した革新的な内容で、ホラー映画愛好家から熱く支持された作品であった。

 しかし、私は前作を高く評価する一方で、続篇を発表することには少々懐疑的だった。確かにあれは、世間一般のホラー映画が備えるような、恐怖の果てにある爽快感、といったものはなく、続きが気になるような締め括りである。だが、だからこそ演出しているおぞましい余韻が、続篇によって払拭されてしまうのが、必ずしも好ましいこととは思えなかったのである。

 率直に言えば、私の危惧は的中していた。本篇は前作の、恐怖を引きずるあの余韻を、結果的に打ち消してしまっている。前作を高く評価していたひとほど、本篇に対しては辛辣になる可能性はありそうだ。

 とはいえ、さすがに前作や『SAW』など、ホラー愛好家を刺激する作品を発表してきたスタッフだけのことはあり、緩急を加えた恐怖の演出は優れている。

 相変わらず本篇では、血腥いシチュエーションを基本的に排除している。しかし、沈黙や気配の表現によってじわじわと緊張を募らせ、陸続と恐怖を繋いでいく手腕はすっかり堂に入っている。まるっきり背景がクリーン、というわけではなく、今回は一連の出来事の背後にかなり酸鼻を極める事実が隠されているのだが、それすらも直接的な描写はせず、巧みに印象を操り、登場人物を戦慄させ、観客たちにまで響かせる。前作では異世界に登場するガジェットが妙に小綺麗なのが滑稽で、いささかの違和感をもたらしていたが、背景をより血腥く、しかし直接描写を程良く避けることで、前作同様に全年齢対象の水準を保っている。このスタッフは前作と本篇とのあいだに、実話をベースにした『死霊館』という秀作も手懸けているが、あの作品を経て、恐怖表現の技術はより研ぎ澄まされたようだ。

 それでいて、恐怖ばかりではホラーは保たない、という点もよくわきまえていて、前作でいい味を出していたスペックとタッカーの2人組を再登板させ、変わらず細かな笑いをちりばめさせている。現象そのものは恐ろしく、その後の展開にもきちんと奉仕するものだが、それに対する彼らの反応がいちいちユーモラスで、高まりすぎた緊張をほどよくほぐしてくれる。一見不要なようだが、この弛緩がないと、緊張で観る側が疲弊し、却って麻痺させてしまう。こうした弛緩や、たとえば憎まれ役の痛快な悲劇、といった要素こそ、実はクライマックスまで観客を惹きつけるリズムを築く、ということを本篇のスタッフはよく解っている。だからこそ、このムード・メーカーのひとりを、原案と脚本を担当したリー・ワネル自らが演じているのだろう――美味しい役回りだから、というのも否定は出来ないが。

 前作のような鮮烈なサプライズはないが、しかし作品の世界観、細かな描写を引き継ぎながら、新しい驚きや意外性を生み出し、物語を牽引していく手管は洗練されている。前作、さらっと見送られた状況に新たな意味を与えるような趣向も加え、2作品で物語としての完成度を高めようという努力を怠っていない。

 前作の驚き、クラシカルな幽霊屋敷テーマを引き継ぎながらも生み出した清新なインパクトには及ばないまでも、あの前作をきちんと受け止めた作りには意欲と誠実さがはっきりと感じられる。ストレートな締め括りに満足せず、深読みをしたがるようなマニアにとっては好評でも、あれではスッキリしない、という層にとって望ましい仕上がりになっていることも、ホラーが決して晦渋な代物ではなく、もっと幅広い層が愉しむべきだ、という理解が窺える。それ故に、マニアにとってはやや物足りない結果を残す作品になっているとは言えるが、志と、その達成度の高さは賞賛すべきところだろう。

 それでも私としては、前作で満足しているなら必ずしも観る必要はない、と言わざるを得ないのだけど、結末に不満があったひとや、恐らく今後も当分はホラー映画界の旗手として活躍するだろうコンビの志をきっちりと見届けたい、というひとは観逃すべきではないだろう。



関連作品:

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