『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〔新編〕 叛逆の物語』

TOHOシネマズ錦糸町、スクリーン8前に掲示されたチラシ。

原作:Magica Quartet / 総監督:新房昭之 / 監督:宮本幸裕 / 脚本:虚淵玄ニトロプラス) / キャラクター原案:蒼樹うめ / キャラクターデザイン:岸田隆宏 / キャラクターデザイン&総作画監督谷口淳一郎 / 総作画監督:山村洋貴 / エフェクト作画監督橋本敬史 / メインアニメーター:下司祐也、菊田幸一 / 異空間設計:劇団イヌカレー / 異空間美術:南郷洋一 / 編集:松原理恵 / 副監督:寺尾洋之 / 演出:宮本幸裕、川畑喬 / 絵コンテ:笹木信作 / 音楽:梶浦由記 / 声の出演:悠木碧斎藤千和喜多村英梨水橋かおり野中藍加藤英美里阿澄佳奈新谷良子後藤邑子岩永哲哉岩男潤子吉田聖子松岡禎丞 / 配給:Warner Bros.

2013年日本作品 / 上映時間:1時間56分

2013年10月26日日本公開

公式サイト : http://www.madoka-magica.com/

TOHOシネマズ錦糸町にて初見(2013/12/17)



[粗筋]

 見滝原の街には、4人の魔法少女がいる。巴マミ(水橋かおり)に美樹さやか(喜多村英梨)、佐倉杏子(野中藍)、そして鹿目まどか(悠木碧)。ここに、転校してきた暁美ほむら(斎藤千和)が加わり、5人となった少女たちは日夜、協力しあって“ナイトメア”と戦っていた。

 だが、5人組となってから1ヶ月が過ぎて、ほむらだけは違和感を覚えていた。仲間たちの振る舞いに、記憶との微妙な食い違いがあるような気がする。ほむらは、先日まで隣町で活動していたはずの杏子に自分の疑問を打ち明け、検証のために、自分と一緒に隣町に行って欲しい、と懇願する。杏子は訝ったが、しぶしぶほむらに同行する。

 はじめは暢気だった杏子の表情は、次第に深刻なものに変わっていった。隣町に向かうはずのバスは、ひとつ手前で突如、循環バスに変貌する。業を煮やして徒歩で赴こうとしたが、理不尽に長く延びた道は、やがて見滝原の街にふたりを戻してしまった。ここに至って杏子も、自分が何らかの欺瞞に陥れられている、と悟るが、ほむらは自分だけで調べる、と彼女をいったん送り返す。

 ほむらは思い出していた――いまの自分たちのありようが、まやかしに過ぎないことを。彼女たち魔法少女が置かれている状況は恐らく、ほむらたちがかつて戦っていた敵――“魔女”の作りだした結界の生み出したものだ、と……



[感想]

 前2作は、地上波にて放送されたテレビシリーズを、作画を一部リニューアルしたり、手を加えて編集しなおしたものだったが、本篇は劇場用のために製作された完全新作である。

 人気に応えて成立した企画だっただろうが、しかし心配したひとも多いのではなかろうか。私自身は劇場版で初めてちゃんと物語を把握したのだが、既に発表されていた新作の内容に、正直なところ不安を覚えた。このうえでいったいどんな物語を紡ごうというのだろうか?

 発表された本篇の内容は、しかし考えてみれば決して必要な内容ではない――そもそも前2作で完結しているのだから当然である。だが本篇は、ただ単純に屋上屋を架したような内容にはなっていない。

 オリジナルシリーズもそうであったように、本篇も序盤から、いわゆる“魔法少女”もののお約束を踏まえながら、そこに謎めいた空気やサプライズをちりばめている。しかもそれは、オリジナルシリーズの主題や衝撃を殺すことなく、きちんと敷衍し、拡張することにも成功しているのだ。

 とはいえ、率直に言えば、本篇の大きなサプライズは、多少目端が利くひとなら、早いうちに看破することは可能だろう。あまり詳述はしたくないが、前作までの描写を踏まえ、序盤の状況を考察すれば、意図を汲み取ることは難しくない。

 しかし、それ自体が、本篇が前作までの世界観、価値観を重要視しているがこそ、読み解くことが容易なのだ。あのなかで語られた事実、登場人物たちの持つ論理、純粋な想いを尊重しているから、こういう物語が構想できる。

 解ったうえで観ていても、本篇は充分にドラマティックだし、そのうえで更に繰り広げられる展開の広がりの豊かさにき圧倒される。真相に気づいたときの衝撃、そして始まる新たな“戦い”の劇的なこと。およそ2時間、退屈する暇は一切ない。

 また、恐らくは旧作でやりたくても出来なかっただろう趣向を、意識的に採り入れていることも本篇の面白さのひとつだ。魔法少女をモチーフにしながら序盤から急激に逸脱していった前作に対し、本篇は最初のうち、かなり正統派の魔法少女モノを踏まえたような作りになっている。異様に凝った変身シーンに、芝居がかった見栄を決めるくだりもある。戦い方にちょっと可愛らしい趣向が施されているのも愉しいところだ。

 個人的には、魔女の正体を探るほむらが、仲間である巴マミと拳を交えるくだりの戦い方がひたすらツボだった。お互いに得意技を繰り出しての死闘なのだが、結果的にそのヴィジュアルは、一部でカルト的な人気を博しているアクション映画の傑作『リベリオン』を彷彿とさせる。魔法少女をモチーフとしつつもいささか過激なアイテムと戦闘を展開するこのシリーズなら許容可能ながら、作画や演出に費やす多大な労力ゆえに、テレビシリーズでは考慮もしなかったのだろうが、爆発的な人気に後押しされて誕生したこの劇場版という舞台で、存分にそのポテンシャルを発揮している。

 そして終盤、真相が明かされたあとで繰り返される逆転も秀逸だ――ただ、オリジナルシリーズを愛しているひとには、観たくなかった、という想いにも駆られうる終盤かも知れない。しかし、もともと本篇の主題が抱えていた奥行きの深さ、それが表現しうる激情を、充分な力をもって描き出した本篇が残すインパクトは、前2作が生み出したものに決して劣らない。

 あまりにアクロバティックなストーリー展開には少々無理があり、中盤で明かされる真相にしても、その手がかりに破綻がある。劇場用作品としての本篇の弱点は、前作を観なければまったく話が理解できず、驚きなど演出しようもない、ということだ。だがそれは、多くのシリーズものが背負っている業でもある。もし単純にテレビシリーズを観ていることを前提に、再構成版の上映も行われないまま、本篇ひとつだけが劇場公開されたとしたら、それは不親切の極みだっただろう。〔前編〕〔後編〕があったお陰で、本篇は劇場用映画3部作の掉尾を飾る作品として成立した。3作を合わせて、日本のアニメーションの爛熟が生み出した異形の傑作として、長く名を残すと信じてやまない。



関連作品:

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