『ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!? 未来につなぐ希望のドレス』

TOHOシネマズ西新井、Store脇に展示されたスタンディ。

原作:東堂いづみ / 監督:伊藤尚往 / 脚本:山口亮太 / キャラクターデザイン:高橋晃、上野ケン / 作画監督:上野ケン / 美術監督:倉橋隆 / 美術設定:増田竜太郎 / 色彩設計:小日置知子 / 制作担当:額賀康彦 / 音楽:高木洋 / 声の出演:生天目仁美寿美菜子渕上舞、宮本佳那子、釘宮理恵西原久美子寺崎裕香大橋彩香内山夕実今井由香杉山佳寿子池田勝谷原章介 / 配給:東映

2013年日本作品 / 上映時間:1時間10分

2013年10月26日日本公開

公式サイト : http://www.precure-movie.com/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2013/11/08)





[粗筋]

 面倒見の良さが行き過ぎて、学校の生徒会長から、遂にはプリキュアとなってトランプ王国復興の手伝いまでするようになってしまった相田マナ(生天目仁美)。そんな彼女をサポートし続けている菱川六花(寿美菜子)、四葉ありす(渕上舞)もプリキュアとなり、トランプ王国最後のプリキュアであり、王国滅亡のときから行方不明のマリー・アンジュ王女を探し続けている剣崎真琴(宮本佳那子)に協力し、キングジコチューの配下たちと戦い続けている。

 ある晩、彼女たちの暮らす街で、奇妙な事件が起きる。各家庭の押入や物置に仕舞われていたオモチャや楽器が突如飛びだし、空中で混ざり合って、空飛ぶ巨大な鯨に変貌した。マナも、祖母と母が着て式を挙げたウェディングドレスが舞いあがりそうになって目が醒めたが、辛うじてドレスは手許に取り押さえる。騒然とする街に出て行くと、鯨の上にはマシュー(谷原章介)と名乗る、クラリネットを奏でる仮面の男が佇んでおり、何と彼はマナに対して呼びかけてきた。共に行こう、と呼びかけられるが、彼の素性が解らないマナは戸惑うばかりだった。

 やがて空を飛ぶ鯨は奇妙な光線を放ち、街の人を吸いあげていく。駆けつけてきた六花たちと共にプリキュアに変身したマナだったが、マシューの放った刺客はいくら倒しても再生し、歯が立たない。やがて怪光線は、変身の解けたマナたちをも吸い込んでしまった。

 幸い、マナたちプリキュアの仲間であるシャルル(西原久美子)たち妖精は光線に囚われずに済んだ。自分たちだけでは大した力を持たない妖精たちは動揺するが、そこへマシューと古い馴染みである、という妖精ベベル(杉山佳寿子)が姿を現す。ベベルによれば、マナたち人間は過去の美しい記憶の世界に囚われており、その記憶の倉庫に入り込んで呼びかければ、マナたちを救い出せるはずだ、という。

 その頃マナは、およそ5年前の記憶の世界にいた。大好きな祖母いすずと、最愛のパートナーだったマロが、まだ傍にいたころの世界に――



[感想]

 どういうわけかプリキュアはほぼ全作品観ている私だが、2013年に放映されているこの『ドキドキ!プリキュア』のシリーズはあまり評価出来ずにいる。重要なキャラクターの出し方が唐突だったり、何か理由があって姿を隠すと、他の登場人物が心配する様子も何か知っている様子も見せなかったり、とすっかり忘れたまま進行したりする、驚きを演出したいにしても場当たり的すぎる構成がどうしても引っかかる。対象が低年齢層であるにしても、ここまで大切なものが放りっぱなしという作りは決していい印象をもたらさないはずだ。最終的な評価は最終回に接するまで控えたいが、1年という放送期間の長さを引っ張るには、この理不尽な構成は問題がある、と思っている。

 とはいえまるっきり嫌っているわけではなく、ちゃんと評価をしたいからこそ鑑賞し続けているわけで、同様に劇場版も毎度の如く映画館まで足を運んで観てきたのだが――はっきり言えば、テレビシリーズの欠点がそのまま剥き出しになってしまった内容になっている。

 テレビシリーズはお話としてのダイナミックさ、驚きを優先するあまりに、動機付けや裏打ちが乏しくなっているのだが、この映画でも同じ轍を踏んでいる。観終わってみて感じるのは、“何故いまなのか?”という点がまったく説明出来ていないモヤモヤ感なのだ。

 大人の眼には、マシューの正体が明白すぎる、というのは必ずしも欠点ではない。ただ、彼がこのタイミングで登場する理由付けはまったく出来ていないし、彼を動かしたきっかけがどこで訪れたのかも不透明だ。そこを伏せたままで描く、というのも物語の手法としてはあり得るのだが、それは主題の中心から逸れていれば成立する方法で、本篇のようにマシューの正体そのものが物語の根幹に関わってきていると、観ているあいだはともかく、観終わったあとで明確な答が得られないままでは、余韻が濁ってしまう。繰り返すが、決してマシュー登場の背景が悪いのではなく、その扱いが充分に整理できていないのが問題なのだ。

 私の中でテレビシリーズの評価が低くなった現時点での最大の理由は、5人目のプリキュア・キュアエースの登場があまりに唐突で、やはりどうしてこのタイミングなのかが不明瞭、そして他の登場人物もさしてその点に疑義を唱えていないことにあるのだが、この劇場版でも彼女の登場は非常に唐突で不可解だ。妖精たちが記憶の世界に飛び込むのに明確な理由付けが必要とされていたのに、彼女だけがそのルールから逸脱しているのは、いくら立ち位置が“切り札”だからと言って承服はしづらい。ただ、この劇場版の中に限っては、当人も自分の唐突な出陣をどうにかして納得させなければ、という意識があるのか、ギャグのように装っているのでまだしも受け止めやすくはなっているが、話作りの上ではかなり微妙だ。結果的に、マシュー出現の背景と作り方が一貫しているので、世界観としては統一されているとも言えるのだが。

 と、ここまでかなり辛く記したが、しかしこの劇場版全体としての出来映えは、作を追うごとに発展を続けているプリキュアシリーズの1篇らしく、質は高い、と感じている。

 個人的に好感を持ったのは導入部分、マナたちの日常を描いたパートだ。如何せん、30分枠のなかで導入からアクション、決着まで描かねばならないテレビシリーズは展開が早足になり、彼女たちの日常はごくざっくりと描かれる傾向にある。だが、劇場版でも最長に近い尺となった本篇では、序盤の会話で“ごく普通の女の子”としてのマナたちの表情がきっちりと表現されている。繊細な気配りが出来るはずなのに、自分の恋愛には鈍感なマナの姿と、そんな彼女を茶化しつつ恋愛への憧れを覗かせる4人のやり取りには、この年頃ならではの空気感が織りこまれている。従来の劇場版では、はじめから話が異世界に飛んでしまって興味が日常に向けられないか、年頃の女の子が戦いに身を投じる心情について語る方向に流れがちで、あまり扱われない部分だっただけに、ストーリーの根っこにも触れるかたちで日常を剔出した点は、このシリーズならではの研鑽が窺えるところだ。

 そして、マシューの背景こそ曖昧ながら、過去の記憶と接したマナたちの葛藤の描写は、アクションとは異なる見応えを演出している。大切な記憶のはずなのに、幼馴染みである六花やありすの記憶に他の面々が現れないように仕掛けているのは策としてお粗末なのでは、という疑問もなくはないが、しかし快い記憶のなかで閉じた世界に抱く違和感、というモチーフは、終盤で彼女たちが辿り着く結論ともうまく繋がりあって、きちんと効果を上げているのも確かだ。これでマシューが動き出した背景まで計算されていれば、となおさら惜しまれるのだが、本来の中心人物であるプリキュアたちが活躍しているのは評価出来る。

 他方で、妖精たちがいつも以上に活躍していることも特筆すべきだろう。力をプリキュアに託すことでしか貢献できない彼らが、それでもマナたちを助け出そうと奔走する姿はいじらしく、応援したくなる。とりわけ、妖精たちの中ではたぶんいちばんのヴェテランであり、アイドルとしての剣崎真琴をマネージャーとしてもサポートしているダビィ(内山夕実)の活躍ぶりは出色だ。ていうか、人間に変身した状態であれだけ強いなら、必ずしもプリキュアに頼る必要ないんじゃなかろうか、彼女に限っては。

 このプリキュアシリーズでは初期から3DCGを導入しているが、当然のようにこちらも作を追うごとに進化している。プリキュアではしばらく前からエンディングのダンスパートを3DCGで描画していたが、最初の頃は本篇との違和感が強烈だった。本篇はクライマックス、縦横無尽に襲いかかる触手を交わしながら鯨に特攻を仕掛けるプリキュアたちの勇姿を描かれるパートが恐らくはすべてCGで描かれているのだが、自在に動き回るカメラワークがなければ、CGとはすぐに気づかないくらいのレベルだ。3DCGアニメーションではピクサーやドリームワークスを擁するアメリカに後塵を拝している格好の日本だが、あちらとは異なるかたちで洗練された本篇の3Dムービーは、もはや独自の境地に達しており、可能ならいちど、この3DCGのスタッフのみで長篇を作ってみたらどうだろうか、と想像してしまうほどだ。

 テレビシリーズと同様の欠点を背負ってしまってはいるが、思想は一貫しているとも言え、翻ってテレビシリーズの仕上がりに愛着のあるひとならまず不満を抱くことはないはずだ。そのうえで、プリキュアシリーズとしての研鑽も決して怠っておらず、個人的に不満や認めがたいポイントはあれど、トータルでの質は高く評価したい。



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