『怪談新耳袋殴り込み!劇場版<魔界編>【後編】』

渋谷シネパレス、施設入口前に掲示されたポスター。 怪談新耳袋 殴り込み!劇場版<魔界編 後編> [DVD]

監督:市川力夫、青木勝紀 / プロデューサー:丹羽多聞アンドリウ、山口幸彦 / ラインプロデューサー:後藤剛 / 撮影:今宮健太 / 編集:佐藤周、青木勝紀 / 音楽:スキャット後藤 / 主題歌:藤田恵名『ライブドライブ』 / 出演:ギンティ小林、市川力夫、青木勝紀、後藤剛、今宮健太、山口幸彦、はち、わらびん、ハブ、小原猛、木原浩勝、中山市朗、平山夢明 / 制作:シャイカー / 協力:映画秘宝編集部 / 配給:日本出版販売 / 映像ソフト発売元:KING RECORDS

2013年日本作品 / 上映時間:1時間35分

2013年7月20日日本公開

2013年8月7日映像ソフト発売 [DVD Video:amazon]

公式サイト : http://www.nagurikomi.net/

渋谷シネパレスにて初見(2013/07/20) ※初日舞台挨拶つき上映



[粗筋]

 沖縄本島でのミッションを終えた新耳Gメンたちは、次なる舞台、宮古島へ赴く。

 しかし、“神の島”とまで呼ばれるこの地に関する情報は驚くほどに乏しい。どうにか得られた情報提供者は、この島にはユタが多く、ユタでなくとも“視える”というひとが少なくない、と語り、ここが“呼ばれたひと”だけが足を留める地なのだ、と言う。だからGメンたちも招かれたのだ、という言葉を頼りに、情報提供者が示してくれた土地へとすぐに車を走らせる。

 宮古島での最初の殴り込みスポットは、ある砂浜。かつて、間引きされた子供が風葬された、という話の残る土地である。本島での冒険ですっかり消耗しきったメンバーに、現場監督の市川力夫が課したのは、女性隊員である市松人形・はちを赤子に見立てて埋葬し、それをもうひとりが発掘して連れ戻す、というもの。

 砂浜のラブレター、ならぬ砂浜のデスあみだで選ばれたのは、埋葬役がカメラマンの今宮健太、発掘役が仕上げ監督の青木勝紀。2012年の劇場版から参加した今宮は、新耳Gメンならではのイかれたミッションを指示されてもきちんとそれを実行する生真面目さを示したが、その生真面目さが思わぬ波乱を招くのだった……



[感想]

 2013年の新耳Gメンは、さすがに酷使されすぎだったように思う。ニコニコ生放送を用いてのリアルタイム殴り込みを繰り返したうえ、さらにDVDオリジナルの<地獄編>、そのうえ休む間もなく沖縄を舞台にした<魔界編>に突入している。スタッフいわく、この【後編】で宮古島に上陸したときには、もはや疲労困憊でかなり訳が解らなくなっている、ということだった。

 しかし憔悴しきっているからこそ、より直線的なアプローチが効き、剥き身に近い反応が出て来る。そういう意味では、未だに怖がってはいるものの、それでも若干慣れてきた感のある新耳Gメンたちには――というより初期から追ってきた観客には、と言った方がいいのかも知れないが――好都合だったようだ。

 たとえば最初の浜辺でのミッション自体がそうだ。予め得られていた情報が少なかった、というのもあるのだろうが、手許にある情報と素材とで可能な“挑発”を試みている。アイテムや、妙な遊び心が働き過ぎると、次から次へと脱線していくのが彼らの面白さであると同時に怖さを削ぐ悪い癖でもあったが、このくだりでは遊び心がシンプルに、当事者の恐怖を増幅する方向に働いている。初っぱなに真面目な今宮カメラマンを向かわせ、予想外に状況をハードにしているのも奏功していた。この流れは続くファイル002でも活かされているが、オチが1本目と異なっているのにもニヤリとさせられる――うまいこと言ったつもりで大してうまくない、というのも本当だが、それもまた味だ。

 後半ふたつのファイルでは、序盤に消極的だったことを反省したのか、少し凝ったミッションを設定している。しかしこの2箇所、場所の選択とミッションの内容がうまいこと噛み合ったようで、怖さと笑い、それにミッション本来の狙いである怪奇現象の収穫、というすべてに成功している。

 こと傑出しているのはラストファイルだ。この宮古島上陸は最初から徒手空拳の雰囲気が色濃かったが、最後に訪れた喫茶I廃墟は、直前で得た証言が不明瞭であったために捜索から難渋する。やむなく接した現地のひとびとの振る舞いに怯え、ようやく遭遇した喫茶Iの異様さに衝撃を受ける。

 この一連の流れ、まるで初期の彼らの活動を彷彿とさせる。映像化される以前、『新耳袋』著者と直接の交流がなく、ただ文中のスポットを実際に目の当たりにしたい、と考えて、捜し回っていた様子を再現しているかのようだ。現地入り前にある程度情報を仕入れ、下調べしたうえで、効果的な挑発を用意して突入する――という手順が固まりつつあった最近としてはいっそ新鮮であると同時に、もともと深く考えずに危険な噂のある場所に踏み込もうとする、ある意味愚かで、ある意味愛すべきひとびとの振る舞いを正しく見せている。

 それでいて、いざ深夜の突入となったときの畳みかけ方が凄まじい。現場の異様さに、ジャンケンや力夫現場監督の指示による少数での突入では成り立たない、と考え、全員が何かしらのミッションを携え突入する、という総力戦に挑む。そして、そこで行われる挑発のクレイジーさは、観ていて笑いが止まらない。

 しかし、彼らの目線に立ってみると、これほど怖いものもない、と実感する。あまりに馬鹿げているからこそ、やってはならないことをしている、という背徳感が増し、恐怖を膨らませる。しかもこの場所、序盤から怪しげな気配を振りまき、挑発に見事応えている。終盤、劇場では繰り替え笑いが渦巻いたのだが、しかし現象を抽出するくだりになると途端にざわめきが広がる、というのが繰り返された。この狂気の悪循環は最後のひとりまで続き、遂にシリーズ屈指の収穫に辿り着く。

 たぶん、あの映像だけを単独で見せたところで、大したものではない、と感じるひとが大部分だろう。しかし、撮影に用いているのが暗視モードのカメラであることや、それまでの映像との比較で考えると、かなり異様であることが解るはずだ。何よりこの映像の凄まじいのは、カメラが捉えている場所を、別の角度からの目線でも押さえているため、別のカメラであったり、異なる場所にいる者の目撃で補強されていることだ。深夜、あたりにろくに灯りもなく、これ以上深入りしたくない、と思わせる場所での行為であり、目撃談がリアルタイムで収録されていることもあまり疑いようがなく、これほど異様さが保証された映像はなかなか得られない。

 ミッションの異常ぶりがもたらす笑いと怖さに、はっきりとし多収穫までついてくる。これまで『殴り込み』の撮ってきた映像をほとんど追ってきた者として、本篇のラストファイルが、彼らの最高のミッションであり、最高の成果を挙げた作品、と断言したい――が、その一方で、ここまでやってようやくこの量の収穫が出来た、という事実が、来年以降の彼らにとってきっと更なる負担になるだろうことを、憐れむと共に期待せずにいられないことも申し添えておきたい。

 今度はどこで何をしたら、満足のいくものが撮れるんでしょう、ねぇ?



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