『ワイルド・スピード EURO MISSION(字幕)』

TOHOシネマズ有楽座、外壁の看板。

原題:“Furious 6” / 監督:ジャスティン・リン / 脚本:クリス・モーガン / キャラクター創造:ゲイリー・スコット・トンプソン / 製作:ニール・H・モリッツ、ヴィン・ディーゼル、クレイトン・タウンゼント / 製作総指揮:ジャスティン・リン、アマンダ・ルイス、サマンサ・ヴィンセント、クリス・モーガン / 撮影監督:スティーヴン・F・ウィンドン,ACS / プロダクション・デザイナー:ヤン・ロールフス / 編集:クリスチャン・ワグナー、ケリー・マツモト / 衣装:サーニャ・ミコルヴィッチ・ヘイズ / 音楽:ルーカス・ビダル / 出演:ヴィン・ディーゼルポール・ウォーカードウェイン・ジョンソンミシェル・ロドリゲスジョーダナ・ブリュースター、タイリース・ギブソン、クリス・“リュダクリス”・ブリッジス、サン・カン、ガル・ギャドット、ルーク・エヴァンスジーナ・カラーノジョン・オーティスシェー・ウィガムエルサ・パタキ、デヴィッド・アヤラ、キム・コルド、トゥーレ・リントハート、ジョー・タスリム / オリジナル・フィルム/ワン・レース・フィルムス製作 / 配給:東宝東和

2013年アメリカ作品 / 上映時間:2時間10分 / 日本語字幕:岡田壯平

2013年7月6日日本公開

公式サイト : http://euro-mission.com/

TOHOシネマズ有楽座にて初見(2013/07/06)



[粗筋]

 モスクワで、派手な強奪事件が発生する。黒幕は、軍隊出身の国際的犯罪者オーウェン・ショウ(ルーク・エヴァンス)。どうやらショウは、通信衛星を作りだすために、必要な部品を様々な場所で奪っているようだった。この“狼”を狩るためには、別の“狼”が必要になる――ショウを負い続けていたFBI捜査官ルーク・ホブス(ドウェイン・ジョンソン)はそう考え、掟破りの手段に出た。

 アメリカから遠く離れたカナリア諸島に向かったホブスは、ある男のもとを訪れる。かつてはストリート・レースのカリスマ、のちに犯罪者として追われる身となり、訳あってブラジルでホブスと共闘、そこで大金を手にしてこの地に落ち着いたドム・トレット(ヴィン・ディーゼル)である。ホブスはドムと、彼の信頼する仲間たちの持つ多くの優れた技術に託そうと考えたのだ。

 もう犯罪の世界からは距離を置く決意を固めていたドムは当初、この頼みを断るつもりだったが、ホブスから渡された資料を見て、前言を翻す。ドムの妹ミア(ジョーダナ・ブリュースター)と結ばれ、子供を授かり名実ともにドムの兄弟となった元FBI捜査官のブライアン・オコナー(ポール・ウォーカー)を筆頭に、各地に散っていた仲間たちを、ロンドンに召集した。

 ドムが説得された理由は、ホブスが炙り出したショウの一味のひとりに、かつてのドムの仲間であり、事件に巻き込まれて殺害されたはずのレティ(ミシェル・ロドリゲス)の姿があったからだった。自分に協力すれば、“家族”を救い出すことが出来る、というホブスに、ドムは故郷を追われた自分たち全員の恩赦を条件に、協力を約束する。

 ホブスは先の事件でショウの部下をひとり確保しており、その口からショウの居場所を白状させていた。だが、ホブスがひそかに恐れていた通り、ショウは無数の罠を仕掛けて彼らを待ち構えていた。国際警察の包囲網をかいくぐったショウたちを、ドムたちは追跡するのだが……



[感想]

 シリーズものというのは、どうしても数を重ねるごとに尻すぼみになってしまう傾向がある。人気を博した作品で期待されたものを追求し続けていればどんどんアイディアは枯渇していくし、同じことを繰り返していれば観客の側は無論、作る側も倦んでくる。本邦の『男はつらいよ』のような、マンネリこそ鍵となる人情ものならまだしも、アクション映画のシリーズはだいたい3作止まり、4作5作と続けていくと一気に失速していくのは、やむを得ないところだろう。

 だがこのシリーズは、今のところ幸運な例外になっている。キャラクターを一新した3作目がやや不評だったが、第1作のメインキャストであるヴィン・ディーゼルが製作も兼ねて4作目で復帰すると、非常識かつ本物志向のカーアクションで観客を魅了し、続く第5作も大ヒットを遂げた。そして、6作目にして北米におけるユニヴァーサルの興収記録を更新する、という領域にまで到達している。

 そこには、4作目以降ほぼ固定となったスタッフ、キャストが一丸となり、如何に観客の期待に応えるか、ということにこだわり続けたことが奏功しているのだろう。プログラムによると、第3作の時点で復帰を請われたヴィン・ディーゼルは、自ら製作に就くと共に、この時点で第6作まで作りだすことを目標に掲げたらしい。そうすることで、段階的にスケールアップし、シリーズらしさを維持しながらも新たな魅力、インパクトを生み出すことが可能になった。

 序盤から観ていてアドレナリンが噴出しっぱなしの、熱い展開が繰り返される。ショウの罠のど派手さと、ユニークな改造車が作りだす前代未聞のカーチェイス。乗用車に縛られることなく、肉体を駆使した見せ場で繋ぎ、クライマックスには猛スピードで疾走する戦車に、輸送機を軸として複数の争いが並行して描かれる。前作のクライマックス、金庫を引きずりながらのカーアクションでもう行き着くところまで行き着いた、という気分だったが、まだその先へ、更に観る者の血を滾らせるシチュエーションを組み込んでくるその姿勢は実に天晴だ。

 その分、正直に言えば、ストーリーはかなり雑だ。そもそもショウのようなタイプの犯罪者に微妙にリアリティが欠けており、計画も派手すぎて採算が合わないのでは、と考えることもさりながら、しばしば細かな脈絡が疎かにされている感がある。しかし、それを意識させないほどに、ドムやブライアンたち、仲間たちの関係性、信頼やそれぞれに対する想いがシンプルながら繊細に描かれていて、意外なほどドラマとしても豊潤だ。レティの再登場は前作で予告されていたことだが、彼女の行動の謎、そこから派生する心情描写も味わいがある。こと、ドムと2度目の再会の場面など、この映画だからこそのロマンティックさがあって、迫力と共に爽やかなときめきまで演出しているのだ。決して、人気のキャラクターだから彼女を無理矢理連れ戻したのではない、というのが本篇にははっきりと感じられる。ついでに言えば、折良くハリウッドに格闘技出身の新たなるアクション・ヒロインであるジーナ・カラーノが現れていたことも幸いだった。やもすると単なるどつき合いになりがちだったこのシリーズの肉弾戦に、ジーナとレティ=ミシェル・ロドリゲスが、迫力と華麗さとをプラスしている。

 前作までの面白さ、魅力を踏襲しながら、新たな次元へと移行していく。プログラムで、ヴィン・ディーゼルが復帰にあたって提案した、という新たな3部作は本篇にて終結したことになるが、しかし大ヒットを連続しているが故のスタジオ、ひいては観客の期待に応えるべく、既に第7作の準備は始まっており、その布石も本篇のラストで示される。アクション映画愛好家なら、あの人物が登場した瞬間に興奮を覚えるはずである――シリーズを育ててきたジャスティン・リン監督のあとを引き継ぐことが決まっている『SAW』『狼の死刑宣告』『インシディアス』のジェームズ・ワン監督が、ここまで広げられた大風呂敷と大ヒットシリーズの続篇、という重みに耐えられるか、という不安があるにはあるが、少なくともこのシリーズが本篇に至るまで高みを目指してそれを見事に結実させ、更にハイレベルを目指す意欲があることは、このエピローグからもはっきりと窺える。恐らくそれほど待たされることなく私たちの元に届くであろう第7作がどうなるかは解らないが、本篇をもって、このシリーズは間違いなくアクション映画史にその名を深く刻みこんだ、と断言していいだろう。



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