『ディヴァイド』

ディヴァイド [DVD]

原題:“The Divide” / 監督:ザヴィエ・ジャン / 脚本:カール・ミューラー、エーロン・シーアン / 製作:ジュリエット・ハゴピアン、ナサニエル・ローロ、ロス・M・ディナースタイン、ダーリン・ウェルチ / 製作総指揮:ケヴィン・イワシマ、トニー・ローロ、キャシー・ローロ、クリス・オーウィンガ、ボビー・シュワルツ、マイケル・ホーン、ジェイミー・カーマイケル、マノジ・ジェイン、ロス・ブライアン / 撮影監督:ローラン・バレ / プロダクション・デザイナー:トニー・ノーブル / 編集:カルロ・リッツォ / 衣装:メアリー・ハイド=ケアー / 音楽:ジャン=ピエール・タイエブ / 出演:ローレン・ジャーマンマイケル・ビーン、マイロ・ヴィンティミリア、コートニー・B・ヴァンス、マイケル・エクランド、イヴァン・ゴンザレス、アビー・シックソン、アシュトン・ホームズ、ロザンナ・アークエット / 配給:Presidio / 映像ソフト発売元:松竹

2011年アメリカ作品 / 上映時間:1時間52分 / 日本語字幕:? / R15+

2012年6月9日日本公開

2012年11月7日映像ソフト日本盤発売/2013年7月26日最新盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon]

公式サイト : http://gacchi.jp/movies/divide/

DVD Videoにて初見(2013/06/24)



[粗筋]

 それは突然にひとびとを襲った。街に降り注ぐ無数の火の玉、そして膨張するキノコ雲――不意に訪れた核戦争にひとびとは恐慌を来し、ニューヨークの一画にあるアパートの住人たちは、地下にあるシェルターに殺到する。以前からシェルターで暮らしているミッキー(マイケル・ビーン)は、やむなく数人を通したあと、襲いかかる爆風を遮るために、他の者を見捨てて扉を閉ざした。

 地下に逃げこんだのは、ミッキーを除いて9人。ミッキーは彼らに備蓄を提供するが、外の騒音が収まり、表の様子を見よう、と言い出したジョシュ(マイロ・ヴィンティミリア)たちを力ずくで押し留めた。外は死の世界だ、決して開けちゃならねえ、と言い、水と食料を握ったミッキーはさながら暴君のように、避難者たちを支配していく。

 だがあるとき、シェルターの扉が外側から無理矢理こじ開けられた。防護服を着、物々しいライフルを構えた一団が押し入ってきたのである。彼らは避難者を助けるどころか、暴行を加え、唯一の年少者ウェンディ(アビー・シックソン)を拉致してしまう。ミッキーやマンションの管理人デルヴィン(コートニー・B・ヴァンス)が辛うじて侵入者をふたり殺害するものの、ウェンディは奪われ、ジョシュの弟エイドリアン(アシュトン・ホームズ)は肩を撃たれ重傷を負った。

 ミッキーはこの核戦争がアラブ系のテロ集団による攻撃が端緒だ、と決めつけていたが、しかし殺害した襲撃者はアジア系、デルヴィンが無線で辛うじて聞き取った会話は、アメリカ英語による「殲滅は完了した」という言葉だった。

 いったい何が起きているのか――襲撃者の屍体から剥ぎ取った防護服と兵器を用いて、避難者たちは外部の様子を探ることを提案、ミッキーもやむを得ず承諾し、ジョシュが防護服を着て扉の外に赴く。そこで彼が目撃したのは、予想もしない光景であった……



[感想]

 核戦争が起きてシェルターに逃げこんだひとびとのあいだで繰り広げられる極限の愛憎劇、というのは決して珍しい着想ではない。ただ、いわば箱庭実験のようなもので、関わる人物が変われば展開も大幅に変わり、幾通りもの見せ方があるのも事実であり、魅力的な題材と言えるだろう。

 本篇が一見して意外に感じられるのは、かなり早い段階で、いったんこの扉が外側から無理矢理こじ開けられ、登場人物たちが外部の状況を垣間見せられる点だ。このとき、避難者たちは外に何者かが徘徊していることを知ると同時に、彼らに自分たちを救う気がないことを悟る。そのことが、登場人物の抱く希望や疑問を変質させ、ほかの密室スリラーとは異なる緊迫感を生み出している。

 ただ、あいにくとそういう狙いは、シンプルに伝わりづらくなっていることも事実だ。なにせ、いったい外で何が起きているのか、侵入者たちの目的は何だったのか、についてはまず間違いなく、観客にとって納得のいく、明快な答は示されない。なまじ、侵入するくだりの描写が特異であるだけに、理由や背景が知りたい、と思うのは観客の当然の欲求だろうが、恐らくそれが満たされることはない。

 しかも、登場人物たちは次第に密室内での人間関係、力関係の変化に翻弄され、外界について意識がいかなくなっていくのだ。その過程はちゃんと納得のいくものではあるが、どうせ映画というかたちで、一定の尺の中で語られる話、として描くのなら――という嫌味を覚えるのは如何ともし難い。心理の綾を描くこと以上に、登場人物たちの狂気、逸脱した行為を抉り出すことに焦点を当てている本篇の方向性は重厚な心理スリラーというより、あえて俗悪であることを狙ったヴァイオレンスであり、だからこそ、そこが単純に目的化しないための工夫がもうひとつ欲しかった、と惜しまれる。

 いちおう、結末に向かって物語は沸騰していき、クライマックスはかなり派手に展開され、そこには一種の昂揚感がある。しかし、そうして提示される結末には、解決した、という安堵はない。なまじ過程が醜悪であるだけに、もうひとつ充足感が欲しい、と否定的な評価をするのも仕方ないところだろう。だが、終末を題材にした密室スリラーにひとつ施した工夫や、気づけば本来目指すべきところから逸脱していく異様さ、それを悟らされる結末の虚無感の表現は決してアイディアとして悪くない。観終わったあとでプロローグに舞い戻ってみると気づくはずだ――何も残らず、何もかもが変わり果ててしまったような終末だが、しかしそこには不思議な力が漲っている。そうした要素が届きにくい、というのは間違いなくマイナス点だが、発想と描写の重量に優れた、侮りがたい秀作である。



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