『ラストスタンド』

TOHOシネマズ西新井、スクリーン1前に掲示されたチラシ。

原題:“The Last Stand” / 監督:キム・ジウン / 脚本:アンドリュー・クノアー / 製作:ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ / 製作総指揮:ガイ・リーデルエドワード・フィー、マイケル・パセオネック、ジョン・サッチ / 共同製作:ヘルナニ・ペルラ / 撮影監督:キム・ジヨン / プロダクション・デザイナー:フランコ・カルボーネ / 編集:スティーヴン・ケンパー,A.C.E. / 衣装:ミシェル・ミッチェル / キャスティング:ロナ・クレス,CSA / 音楽:モグ / 出演:アーノルド・シュワルツェネッガーフォレスト・ウィテカージョニー・ノックスヴィルロドリゴ・サントロジェイミー・アレクサンダールイス・ガスマンエドゥアルド・ノリエガピーター・ストーメア、ザック・ギルフォード、ジェネシス・ロドリゲス、ダニエル・ヘニー、ジョン・パトリック・アメドリ / ライオンズゲート/ディ・ボナヴェンチュラ・ピクチャーズ製作 / 配給:松竹×Pony Canyon

2013年アメリカ作品 / 上映時間:1時間47分 / 日本語字幕:林完治 / R15+

2013年4月27日日本公開

公式サイト : http://laststand.jp/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2013/04/27)



[粗筋]

 メキシコとの国境付近にある小さな町、ソマートン。普段は大きな犯罪など起こらない静かな町だが、その日、保安官を務めるレイ・オーウェンズ(アーノルド・シュワルツェネッガー)の家の電話が鳴ったのは、深夜のことだった。ダイナーで働くクリスティが、いつも決まった時間に牛乳を運ぶ農場主が来ていないことを心配して、調べて欲しい、と頼んできたのである。

 レイの指示で調査に向かった保安官補のジェリー(ザック・ギルフォード)とサラ(ジェイミー・アレクサンダー)は、そこで変わり果てた姿の農場主を発見した。もうひとりの保安官補マイク(ルイス・ガスマン)とともに現場に赴いたレイは、農場主が別のところで殺害され、屋内に運び込まれたことを突き止める。

 ちょうどそのとき、レイの携帯電話が鳴った。今度の相手は、FBI捜査官のジョン・バニスター(フォレスト・ウィテカー)と名乗る。バニスターは、護送中だった囚人が脱走、メキシコ国境を目指して逃亡していると考えられる、と告げた。国境に断崖があるソマートンを経由することはまずあり得ないだろうが、もし通りかかってもSWATに委ねるので手出しするな、という警告だった。電話の時点では、殺人犯の手懸かりを探すのに必死で、深刻に耳を傾けなかったレイだったが、奇妙な符合に、不安を覚える。

 ルイの予感は的中していた。バニスターたちが追っている逃亡犯――麻薬王ガブリエル・コルテス(エドゥアルド・ノリエガ)はバレル(ピーター・ストーメア)たち配下が予め確保していたモンスター・マシンを駆って高速を猛スピードで走り抜け、一路ソマートンを目指していた……



[感想]

ターミネーター』シリーズを中心とする数々のアクション映画で主演、一時期はアクション・スターの代名詞ともなっていたアーノルド・シュワルツェネッガーは、だが2004年、カメオ的な出演をした『80デイズ』のあと、カリフォルニア州知事に就任、以来2期、7年以上に亘って映画界を離れていた。だが2011年に退任すると着々と準備を始め、盟友シルヴェスター・スタローンによるアクション・スター・ムービー『エクスペンダブルズ2』で久々に本格的出演、肩慣らしのようにアクションを披露したのち、本篇で遂に主演復帰を果たした。

 最後の出演となった『80デイズ』のときで既に57歳、本篇では65歳になっている。アクション映画で主演を張るには体力的には辛い、と思われるが――しかし、本篇でそういう種類の不満を覚えることはまず、ない。ここにいるのは往年のオーラと、年輪を経て更に貫禄を身につけた、依然として“アクション・スター”であるシュワちゃんの姿が確かに存在する。

 気になるのは、作中でシュワルツェネッガーが肌を見せるシーンがないことだ。政界引退から2年ほどではまだスクリーンで晒すに相応しい肉体美を復活させるには足りなかったか、と若干危ぶんでしまう。

 しかし、着衣から窺える体格は決して衰えていない。服を盛り上げる大きな大胸筋、袖から覗く二の腕の膨らみは逞しく、かつてのスクリーンに溢れんばかりのヴォリュームはきちんと取り戻している。やや皺が増えたか、という印象はあるが、画面に現れるなりすぐに“帰ってきた!”という感慨をもたらしてくれる。

 一方で、決して従来のままでないのも美点だ。本篇の主人公レイは町の保安官として奉職して長く、依然として壮健だが、いくぶん年齢を自覚している。少しだけ重そうな身のこなしが、しかしそれでも町を守ろうとする使命感を伝えてきて快い。こういう人物像は、恐らくこれだけ年輪を経てきたからこそあえて受け入れたものだろう。そういう“成長”が幾分ながらも窺えることに好感が持てる。

 だが、そうした我らがアクション・ヒーローの復活もさることながら、それに見合うだけの、いい意味での“B級”感が漲るアクション映画に仕上がっているのが嬉しい。

 序盤から、幾つもの動きが交錯して膨らんでいく不穏な気配。そのなかで、まず主人公たちが戦わねばならない敵の凶悪さ、理不尽なまでのパワーをきっちりと描き出す。こういう逃亡に、あんなモンスター・マシンを持ち出す必要もなければ、あんな大掛かりな細工が必要なはずもないのだが、それを敢えてやらせてしまう、堂々たる荒唐無稽ぶりに感嘆し、その道具立てを無駄にしない見せ場の数々に惚れ惚れしてしまう。

 そして、そういう前提があるからこそ、クライマックスでのレイ・オーウェンズと仲間たちとの奮起ぶりがいっそう痛快になる。レイはともかく、他の面々は決して戦い慣れているわけではないが、しかしそれ故に懸命であるからハラハラドキドキが止まらない。随所でドジを見せ、笑いを誘う辺りも絶妙だ。そのうえ、メンバーに兵器マニアを加えているので、敵方に匹敵する無茶な攻撃に及び、配分までがツボをわきまえている。

 アクション映画を愛する者ならニヤリとせずにいられない“お約束”的な見せ場は無論、独創性のある見せ場もきちんと用意されている。特筆すべきはクライマックスのカーチェイスだろう。本篇の宣伝活動のなかでシュワちゃんが自ら言及してしまっているので、先に知ってしまったひとも少なくないだろうけれど念のために伏せておくこの見せ場は、一種見え見えの伏線で仄めかしつつも、驚きと興奮に満ちている。その手前でど派手なことをやり尽くしてしまっているので、このあとどう持たせるのか、と一瞬の不安を与えたあとでのこのくだりは、だから余計にインパクトが凄い。

 評価が分かれそうなのは、そのあとの締め括りであるが――あれとて手順はまったく間違っていないのだ。作中、随所で主人公レイの老いをちらつかせており、そして長いブランクのあとでのシュワちゃん復帰第1作である本篇には、ああいうフィナーレが何より相応しい。

 いい意味で決して変わっておらず、いい意味で下らない、いい意味でエンタテインメントを貫いている。政治家としての生活を経て、文芸派に転向するような似合わない真似はせず、往年のファンたちが望んでいたスタイルへと舞い戻った。年齢が年齢であるだけに、当人がどれほど壮健をアピールしようと不安は完全に拭えるわけではないけれど、その心意気に嘘はないことがはっきりと実感できる快作である。



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