『オールド・ボーイ』

オールド・ボーイ プレミアム・エディション [DVD]

原題:“Old Boy” / 原作:土屋ガロン(作)、嶺岸信明(画)『オールド・ボーイ』(双葉社・刊) / 監督:パク・チャヌク / 脚本:パク・チャヌクファン・ジョユン、イム・ジョンヒョン / 製作総指揮:キム・ドンジュ / 撮影:チョン・ジョンフン / 照明:パク・ヒョンウォン / 美術:リュ・ソンヒ / 音楽プロデューサー:チョ・ヨンウク / 音楽:イ・ジス / 出演:チェ・ミンシク、ユ・ジテ、カン・ヘジョン、チ・デハン、キム・ビョンオク、オ・ダルス、ユン・ジンソ / 配給:東芝エンタテインメント / 映像ソフト発売元:GENEON UNIVERSAL ENTERTAINMENT

2003年韓国作品 / 上映時間:2時間 / 日本語字幕:根本理恵 / R-15

2004年11月6日日本公開

2006年7月28日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video プレミアム・エディション:amazon|DVD Video スタンダード・エディション:amazon]

公式サイト : http://www.oldboy-movie.jp/ ※閉鎖済

DVD Videoにて初見(2013/03/20)



[粗筋]

 ある雨の日、酔っ払って醜態を晒していたオ・デス(チェ・ミンシク)は、突如、何者かによって攫われ、監禁された。

 何者かは、デスに危害を加えることはしなかった。ただ閉じ込めておくだけ。食事はきちんと与え、定期的に催眠ガスを室内に撒いて、デスを眠らせると、室内の清掃や散髪を行い、清潔を保たせる。部屋にはテレビも用意されており、そのニュースでデスは、自分の妻が殺害され、現場の痕跡からデス自身が容疑者になっている事実を知る。

 何故こんな目に遭わされるのか。デスは自らの悪行をノートにしたため、時として自殺を図ることもあったが、最終的に、脱出と復讐のためにすべての精力を費やすことに決めた。壁に穴を掘り続けると同時に、頭の中でシミュレーションを行い、いざというときのために身体を鍛える。その情熱がデスを、ギリギリのところで正気に留めた。

 やがて、15年もの時が過ぎた。遂に最後の壁を破り、あとひと月で脱出する、と意を固めたデスだったが、いつものように撒かれた催眠ガスで導かれた眠りから目醒めると、トランクに詰められた格好で、ビルの屋上に放り出されていた。そこはかつて、彼が攫われたのと同じ場所。

 何故いまさら自分を解放したのか? いったい何故、自分からすべてを奪い、15年もの長きに亘って監禁し続けたのか? 滾る復讐心に駆り立てられ、デスは真相を追い始める――



[感想]

 カンヌ映画祭にて審査員特別賞を受賞できたのは、このときの審査員長がヴァイオレンス物に理解のあるクエンティン・タランティーノだったから、と言われているらしい。

 確かに、暴力描写に苦手意識があるひとは、主人公デスが解放されたあとの壮絶なアクションや、何箇所か登場する拷問シーンに眉をひそめ、目を背けるだろう。だが本篇は、そこを耐え忍んで鑑賞するだけの強烈なドラマが、きちんと結末に待ち受けている。

 暴力描写を抜きにしても、これほど魅力的なプロローグはそうそうあるまい。理由も解らないままに閉じ込められ、15年後に突如として解放される。監禁されている合間に主人公が見せる葛藤、変遷も鮮烈だが、解放後の目まぐるしい展開もまた魅力的だ。随所で繰り出されるツイストに、ひたすら惹きつけられてしまう。

 特筆しておきたいのは、演出にテンポの良さと同時に、品性が備わっていることだ。謎を提出したり、解き明かしたり、というリズム感も絶妙だが、暴力描写が鮮烈でありながらも、意外とマイルドなのである。痛みを感じさせる部分も少なくないのに、しかし実際に攻撃を加える場面ではあえて距離を置いて映したり、ユーモアやそれ以上の感情的な衝撃を与えることで、暴力の痛ましさを巧みに和らげ、或いは意味合いを変えて観客に投げつけてくる。この節度が、本篇をヴァイオレンスに支配される手前で留めているのだ。

 これほど過程が魅力的だと、肝心の真相が陳腐だったり、いい加減な代物だと却って印象を悪くするが、しかし本篇は、過程の重量に見合う――否、それを背負うに相応しい衝撃を備えている。動機と手段が見事に噛み合っていることもそうだが、一連の出来事を踏まえたショック描写、そして感情を揺さぶるドラマも出色のものがある。

 出来事は極端ながら、しかし背景の最も核となる部分に、一瞬不自然に思えるが、しかし誰にもありそうな状況を埋め込んでいる点にまた唸らされる。その僅かな“当たり前”が、これほどの歪な状況を作りだし、デスや周囲の人々を翻弄したことが、余計に物語の重みを増す。

 本篇は本邦の漫画を原作としている。私はそちらを読んだことはないが、調べてみると、どうやらこの手段と見事に重なり合う動機は映画オリジナルのものらしい。もしそうなら、原作よりもこちらのほうが優れているのではなかろうか。原作は原作なりに、納得のいく背景を構築しているのかも知れないが、いずれにせよ、本篇の脚色が優れているのは疑うべくもない。

 独創的な発端に牽引力のある展開、そしてそれらに見合うだけの衝撃をもたらす結末。タランティーノは「この作品にパルム・ドールを与えたかった」とまで言ったそうだが、それも納得がいく。私がこれまでに鑑賞した韓国映画の中でも、ベスト級の傑作である。



関連作品:

リベラ・メ [Libera ME]

SAW



マーターズ

灼熱の魂

華氏911

誰も知らない Nobody Knows