『トリハダ−劇場版−』

監督:三木康一郎 / 脚本:三木康一郎ブラジリィー・アン・山田、八代丈寛、名執健太郎 / 製作:菅井敦、藤本款 / プロデューサー:藤原努、梶野祐司、岩下裕美、原口陽平 / 撮影:榎本正使 / 照明:尾畑弘昌 / 美術:村上輝彦 / 特殊メイク:松岡象一郎 / 編集:渋谷泰貴 / 衣装:城宝昭子 / ヘアメイク:一條純子 / 録音:野口京治 / 音響効果:長澤佑樹 / 助監督:高杉孝宏 / 出演:谷村美月木南晴夏佐津川愛美石橋杏奈入来茉里宮崎美穂AKB48)、白羽ゆり野間口徹松本じゅん、小林高鹿、古川雄輝菊田大輔、笹野鈴々音 / 配給&映像ソフト発売元:KLOCKWORX

2012年日本作品 / 上映時間:1時間27分

2012年9月13日日本公開

2012年12月5日映像ソフト発売 [ローソン限定]

公式サイト : http://torihada-movie.com/

DVD Videoにて初見(2013/01/13)



[粗筋]

 テレフォンオペレーターとして働く高林ひかり(谷村美月)は最近、毎日のようにかけてくるクレーマーの対応に悩まされていた。プライヴェートでは、上司との未来の見えない不倫関係に、少しずつ苛立ちを感じ始めている。そんなときひかりは、マンションで隣に住んでいる年輩の女性が、あのクレーマーだということに気づいて、慄然とする……。

見えざるものの中にある真理 レンタルボックスに荷物を仕舞いに来た女(木南晴夏)は、向かいにあるボックスを利用している男が自分の挙動に注目していることに気づく。そのときは不気味に思っただけだったが、後日、帰りにボックスの前を通りかかると、その男が奥に向かっているのを目にして……

異常な愛情と執念の6日間 山本(古川雄輝)が不在票の呼び出しで荷物を届けた横山(笹野鈴々音)という女は、その日から彼にまとわりつくようになった。「逢いたい」と電話をしてきて、彼のアパートの近くに出没する。コインランドリーで勝手に洗濯物を取り込んでいるのに遭遇すると、とうとう山本は彼女を突き飛ばした――

好奇心から生まれる想像と漆黒 夜、仕事帰りのバスのなかで、男(野間口徹)は何気なく前に乗り込んだ女子高生の携帯電話を覗きこんでしまう。彼氏との甘いやり取りのようだったが、その内容は次第に常軌を逸していき……

 ……ほか、3話。



[感想]

 フジテレビ系列にて、深夜に不定期に放映されていた、オムニバス形式、超常現象を含まない類の厭な恐怖を描いたドラマ・シリーズの劇場進出作である。

 それぞれに直接的な繋がりはないエピソードが複数綴られ、それらのあいだ、及び冒頭とラストで、縦軸としてひとつのエピソードが語られる。各話は極めて手短に語られるので、舞台は非常に限定されており、あからさまに低予算の作りだが、それ故に観る側にとっても身近な印象を与える。テレビ版は深夜に放送されていたこともあって、音楽も最小限のこのシリーズの演出する恐怖は非常に効果的だった。

 劇場版とは言い条、作りはほとんど変えていない。一部の登場人物は名前さえ定かにせず、舞台も特定せず、観客の身近にあるような空気を醸し出す。だからこそ、描かれる悪意がひしひしと身に沁みてくる。その良さを損なっていないのは評価できる

 ――が、さすがに“劇場版”と銘打つには、いつも通りに過ぎたのではなかろうか。

 出演経験のある俳優を揃えたのはいいが、格別なゲストなども招かず(AKB48の宮崎美穂、という名前が目立っているが、位置づけとしてはカメオ程度だ)、舞台も特に凝っているわけではない。従来よりロケ場所が多岐に及んでいるようにも感じるが、他の“劇場版”を冠した作品と比較するとどうにも倹しい。

 こうした見栄えの問題は、作品の出来映えが目覚ましければ無視できるのだが、こちらも良くも悪くもいつも通りなのだ。前述したとおり、このシリーズは縦軸となるエピソードを複数の出来事のあいだに配し、それらが緩やかに絡み合う構造となっているが、あまりに緩やかすぎて関係性が見出せなかったり、本筋と主題が乖離してしまっていて、居場所を失ったものが混じってしまう。本筋が強固であれば、単発のエピソードも彩りとして有効に働くが、残念ながら本篇の縦軸は力不足と言わざるを得ない。この出来なら、テレビシリーズのほうにまだまだ秀でた仕上がりのものがあった。

 といった具合に、劇場版ならでは、という醍醐味にはかなり乏しい仕上がりだが、シリーズ本来の魅力はきちんと留めている。ひと目で解る怪人、悪党の怖さではなく、一見普通のひと、平穏な暮らしがにわかに覗かせる狂気のおぞましさを、ジリジリと、或いは予想外のひねりで提示する手管はもはや堂に入っている。なかではやはり、出番が多いだけに谷村美月の演技の巧さが作品の厚みを担っている感があるが、しかし本篇で最も印象的なのは笹野鈴々音だ。特徴的な風貌を活かした佇まいは、予告篇でも大きく採りあげられているが、作中でも珍しい“最初から最後まで怪しい”という立ち位置で見事に気を吐いている。インパクト、という意味では、最も出番の多い谷村美月を食っている、と言えるほどだ。

『トリハダ』というドラマに接したことのないひとには、異物が心に混入するかのような後味の悪さが印象に残るだろうし、テレビシリーズと同程度のものを期待しているひとにとっても満足はいくものだと思う。ただやはり、どうせ映画館でかけることを考えるなら、もう少し力を入れて欲しかった、と惜しまれてならない。力みがないのはいいことだが、まったく気負いが感じられないのには首をひねってしまうのである。



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