『96時間 リベンジ』

スペースFS汐留、。

原題:“Taken 2” / 監督:オリヴィエ・メガトン / 脚本:リュック・ベッソン、ロバート・マーク・ケイメン / 製作:リュック・ベッソン / 撮影監督:ロマン・ラクールバ / プロダクション・デザイナー:セバスティアン・イニツァン / 編集:カミーユ・デラマール、ヴァンサン・タバイヨン / 衣装:オリヴィエ・ベリオ / 音楽:ナサニエル・メカリー / 出演:リーアム・ニーソンマギー・グレイスファムケ・ヤンセンラデ・シェルベッジアリーランド・オーサージョン・グリース、D・B・スウィーニー、ルーク・グライムス / ヨーロッパ・コープ/M6フィルムズ/クライヴ・プロダクション製作 / 配給:20世紀フォックス

2012年フランス作品 / 上映時間:1時間32分 / 日本語字幕:松浦美奈

2013年1月11日日本公開

公式サイト : http://96hours.jp/

スペースFS汐留にて初見(2012/12/20) ※「96時間」シリーズ“イッキ観”試写会



[粗筋]

 人身売買組織から奪還した娘キム(マギー・グレイス)との関係は良好、かと思っていたブライアン(リーアム・ニーソン)だったが、にわかに気がかりな問題が浮上する。ボーイフレンドの登場である。キムだけでなく、元妻レノーア(ファムケ・ヤンセン)からも「身辺調査はしないで」と釘を刺されるが、大人しく従えるようなブライアンではなかった。

 時を同じくして、レノーアにも変化が起きていた。ブライアンのあとに結婚したスチュアートとの関係がこじれ、いまは別居の状況にあった。ブライアンは彼女とキムに、気分転換として、彼の出張に付き合うことを提案する。

 元CIAの特殊工作員、という経歴のあるブライアンはときおり、伝手の紹介で要人警護の仕事を請け負っていた。今回のクライアントの滞在地は、トルコのイスタンブール。エキゾチックな異国での旅は、きっと気分をリフレッシュさせてくれる、とブライアンは思ったのだ。

 だいぶ悩んだようだが、レノーアとキムは本当にイスタンブールにやって来た。キムは余計な気を利かせ、警護の仕事をつつがなく済ませたブライアンとレノーアをふたりきりで観光に向かわせる。

 さすがのブライアンも、すぐには気づかなかった。複数の人間が自分を監視し、間近に迫りつつあることに……。



[感想]

 近ごろリーアム・ニーソンには、すっかり“アクション俳優”のイメージがついてしまった感がある。『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』では荒くれ者どもを束ねるリーダーとして派手な作戦で気を吐いたかと思えば、『アンノウン』では己の素姓をなくし陰謀に巻き込まれた男として戦いに身を投じる。『THE GREY 凍える太陽』では、極寒の地に墜落した飛行機の生き残りのひとりとして、仲間たちの命を繋ぐべく奮闘する男を力強く演じていた。

 だが、こうしたリーアム・ニーソンの、“説得力のある演技が出来るアクション俳優”という顔を定着させたのは、フランスの製作会社ヨーロッパ・コープによる『96時間』だった。寡黙で渋い風貌だが愛する娘との関係に悩み、我が子の言動に一喜一憂する、ある意味愛らしい姿と、いざ娘が誘拐されたあとの、過激かつ冷酷な振る舞いのギャップを巧みに演じのギャップを巧みに演じ、アクションにおいても強烈な存在感を示した。リーアム・ニーソン自身の新たな転機になったのと同時に、作品そのものもスマッシュ・ヒットを遂げたのだから、続篇が製作されるのは当然の成り行きだろう。

 監督こそバトンタッチしたが、引き継いだオリヴィエ・メガトンは、このシリーズの脚本と製作を担当するリュック・ベッソンのプロデュースで『EXIT』を発表したのち、ヨーロッパ・コープの代表的シリーズのひとつ『トランスポーター3 アンリミテッド』を任され、『ニキータ』の路線を引き継ぐ『コロンビアーナ』を監督するなど、リュック・ベッソンのスタイルに馴染んでいる。加えて、旧作では演出に滲む精巧な生真面目さが娯楽映画としての爽快感をもたつかせている感があったが、本篇ではその生真面目さがブライアン・ミルズというキャラクター、彼の置かれる立場の切実さと冷酷に発揮される激情とにうまく噛み合い、シリーズの面白さをより引き立てている。

 脚本家が共通しているのだから当然とも言えるが、前作にあった良さを一切壊さず、同時に新たな魅力を引き出しているのも美点だ。導入で、相変わらず娘との関係にちょっとした問題を生じ懊悩する様を見せ、そして本筋に入ると誘拐、無事に助かるためのタイムリミットめいたものが仄めかされる。前作での優れた着眼点であった、誘拐される段階で携帯電話が生きていた、という部分を、少しひねった形で踏襲し、新しいドラマ、アクションの見せ場に応用しているのも見所だ。

 相変わらず、その経歴故に身につけたブライアンの特殊技能を駆使した脱出の推移、随所で繰り広げられるスピード感に溢れ迫力に富んだアクションも魅力だが、こちらも前作のトーンを引き継ぎつつも、ちょっと違った面白さを引き出している。鍵となるのが、ブライアンの娘・キムだ。前作で負った心の傷を引きずり、新たに出来た恋人を巡って微妙な空気を醸しつつも、父親との絆は強まっている。そして、粗筋では辿り着く手前で止めたが、今回、誘拐されるのがブライアンと妻レノーアであり、キムがすんでのところで難を免れたことをきっかけに、驚くほどの活躍を見せる。やはり父の特殊技能がものを言っているのは同じなのだが、自ら危険に臨み、ギリギリのところで自分の役割を果たす姿は、しばしばコミカルであるが頼もしい。前作では攫われているあいだろくに姿を見せずにヤキモキさせ、実質お姫様扱いであっただけに、その“成長”ぶりに思わずブライアンにも似た親心を感じてしまうほどだ。

 手頃な尺と本質的にはシンプルなプロット故に、単独でも娯楽映画として充分に面白さは味わえるだろうが、前作をきちんと観ておいたほうが本篇は間違いなく楽しめる。そのくらい、前作のキモをうまく掴み、魅力を巧みに引き出している。極めて理想的な“続篇”と言える。

 激しいアクションのあと、敵に向かって本音を打ち明けるくだりや、エピローグのやり取りといった、ドラマ、ユーモアの部分での味付けも快い。前作もそうだったように、これだけ好き放題やらかして無事で帰れるのか? という根本的な疑問もあるが、そういうところが気になるひとは前作の時点で離れているだろう。明快かつコクのあるアクションを求めているなら、前作を観ずに劇場に足を運ぶのも一興だが、とりあえず前作を観ておくことをお薦めする。前作がツボに入ったひとであれば、悩む必要はない。



関連作品:

96時間

EXIT

レッド・サイレン

トランスポーター3 アンリミテッド

特攻野郎Aチーム THE MOVIE

アンノウン

THE GREY 凍える太陽

ザ・バンク 堕ちた巨像

007/スカイフォール