『シロメ』

シロメ [DVD]

監督&脚本:白石晃士 / プロデューサー:加藤伸崇 / 撮影監督:三村和弘 / 美術:高木理己 / 編集:白石晃士、高塚絵里加 / 録音:日高成幸 / 助監督:高橋雄弥 / 主題歌:ももいろクローバー / 出演:ももいろクローバー百田夏菜子早見あかり玉井詩織佐々木彩夏有安杏果高城れに)、吉田悠軌、今仁英輔、神島剣二郎、宗優子、白石晃士 / 配給:S・D・P

2010年日本作品 / 上映時間:1時間23分

2010年8月13日日本公開

2010年9月24日映像ソフト発売 [DVD Video:amazon]

公式サイト : http://www.shirome.jp/

ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2012/09/21) ※ドリパス



[粗筋]

 メンバーの大半が学生であるために週末限定で活動を続けてきたことから“週末ヒロイン”を標榜するアイドルグループ、ももいろクローバー。そんな彼女たちに、BS放送ながら初となる冠番組の企画が持ち上がった。

 監督である白石晃士が彼女たちに提示した内容は――都市伝説の検証。とある廃校の一室に、“シロメ”という謎の化物が出没する、という。からかい半分でその場所を訪れた者は、“シロメ”によって地獄へと導かれるといい、事実、そこではこの4年ほどのあいだに、多くの行方不明者や、謎の事故が相次いでいる。

 だがその一方で、“シロメ”は真摯に願い事をすれば叶えてくれる、という噂もある。そこで、ももクロの面々に課せられたミッションは、噂の廃校を訪れ、彼女たちにとっての目標である、“紅白出場”の願掛けをすること。

“シロメ”の説明のために現れた怪談師・吉田悠軌が6人の目の前で倒れ、出発前夜にレッスン場で泊まり込みをした彼女たちを捉えた定点カメラが奇妙なものを映しだすなど、異常な出来事が相次いだが、ももクロの面々は番組のため、自分たちの夢を叶えるため、決死の覚悟で現場へと赴いた――



[感想]

 ……はっきり言ってしまえば、そういう設定でのドッキリ企画なのである。ももいろクローバーの面々には実際に、“シロメ”という都市伝説が存在する体で説明し、怪談師の異変をはじめとする不可解な出来事を目の当たりにさせたうえで、彼女たちの素の反応を捉えていく、という手法で撮られた、ドキュメンタリー的なドッキリ映画なのだ。

 しかしこの方法、なかなか巧妙である。アイドルがホラー映画で初主演する、というのはよくある話だが、大抵の場合、演技の拙さが目について、好印象をもたらすことは決して多くない――私などはそれでも評価できるものなら認めるが、一般的にはマイナスに働きがちだ。それでもアイドルの初主演作にしばしばホラーが選ばれるのは、たぶんファンが喜ばない“恋愛”という要素を排除でき、準備もほかのジャンルに比べれば容易だからだろう――というのは脱線であるが。

 しかし本篇の場合、ももいろクローバーの面々の反応は、ほとんど演技ではない。観ていると、作中では明かされないが、どうやらメンバーのなかに何人か、真実を知ったうえで協力しているらしい振る舞いをしている者がいるが、それでもときおり脅かすような仕掛けが繰り出されると反応してしまっている、その辺りは素の反応と考えていいだろう。

 考えてやっているのではない、本気の表情だから、芝居のわざとらしさは当然、微塵もない。そこから生じる不自然さを払拭しているので、少なくとも彼女たちに観客が悪印象を抱く可能性は低くなる――そうした、言ってはなんだが“姑息”な意図だけでこの手法を選択した、とまでは思わないが、少なくともそういう形で成功していることは間違いない。

 だが、手法が絶妙だからと言っても、仕掛ける側が悪手では話にならない。その点、本篇が見事に効果を上げているのは、撮っている作品のほとんどがホラーであり、その複数が擬似ドキュメンタリー・スタイルであるという白石晃士監督が就いていたことは非常に大きい。

 単純に、ももクロの面々を脅かし、怖がらせるだけの内容であれば、テレビでしばしば企画されるドッキリ番組と同じ代物になってしまう。そうなっていないのは、本篇について予備知識なしで鑑賞したとき、ある程度までももクロの面々と同じ恐怖を共有できるくらいにシチュエーションに生々しさが備わっているが故だ。最初に説明に現れた怪談師が突然異変に見舞われるくだりや、現場で霊能力者たちが危険な挑戦であることを説く場面など、本人たちは充分に気持ち悪いだろうが、観ている側も妙なリアリティを感じてしまう。異様な空気を伝える編集の巧みさなどにも、ドキュメンタリー手法のホラー映画でその腕を磨いてきた白石監督ならではの冴えが窺える。

 そして最後には、これだけ怯えさせられているにも拘わらず、きちんと仕事を果たそうとする彼女たちを応援したくなる。本篇の何よりも巧い、と唸らされる点は、実はそこだ――前述した通り、メンバーのなかに真実を知っている人間がいた可能性があり、その娘が何とか使命を遂行するように誘導していたのかも知れないが、それでも一丸となってミッションに挑み、その先に叶えられるかも知れない紅白出場の夢を賭けようとする健気さには、ちょっと感動を覚えるほどだ。

 ラストの趣向はいささか足しすぎ、というきらいがなきにしもあらずだが、アイドル映画としての魅力と、ホラー映画としての味わい、両方を兼ね備えながら、決して従来のどんな作品とも似ていない、非常に特異な出来映えとなっている。そうは言っても、やっぱりただのドッキリじゃないか、とか、仕掛けにしても期間が短すぎて面白みがない、とか否定的な見解を抱く人も少なくないだろうが、いずれにせよ、本篇がももいろクローバーというアイドル・グループの魅力の一側面をうまく採り入れた作品であることは認めるはずだ――そして、彼女たちの夢が叶うことを、願ってしまうに違いない。



 だから、明晩、彼女たちがその夢の舞台に立つことも、何ら不思議はないのである。



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