『Virginia/ヴァージニア』

ヒューマントラストシネマ有楽町、チケットカウンター傍のポスター。

原題:“Twixt” / 監督、脚本&製作:フランシス・フォード・コッポラ / 製作総指揮:アナヒド・ナザリアン、フレッド・ルース / 共同製作:マサ・ツユキ、ジョシュ・グリフィス / 撮影監督:ミハイ・マライメアJr. / 美術監督:ジミー・ディ・マルセレス / 編集:ロバート・シェイファー、グレン・スキャントルベリー、ケヴィン・N・ベイリー / 衣装:マージョリー・バウアーズ / 音響:リチャード・ベッグス / 音楽:オスヴァルド・ゴリホフ、ダン・ディーコン / 出演:ヴァル・キルマーブルース・ダーンエル・ファニングベン・チャップリンジョアンヌ・ウォーリー、デヴィッド・ペイマー、アンソニー・フスコ、オールデン・エアエンライク、ブルース・A・ミログリオ、ドン・ノヴェロ、リサ・ビアレス、トム・ウェイツ / アメリカン・ゾエトロープ製作 / 配給:Culture Publishers

2011年アメリカ作品 / 上映時間:1時間29分 / 日本語字幕:戸田奈津子 / PG12

2012年8月11日日本公開

2013年1月25日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon]

公式サイト : http://virginia-movie.jp/

ヒューマントラストシネマ有楽町にて初見(2012/08/11)



[粗筋]

 オカルト作家ホール・ボルティモア(ヴァル・キルマー)は、営業のために各地の書店を巡り、寂れた街に辿り着く。互いに関与されたくない人物が集まるこの街では、もともと書店じたいが存在せず、売り上げは散々だった。

 ただひとり、ボルティモアに声をかけたのが、街の保安官である。自身で密かに小説を書いているというほどのオカルト愛好家でもある保安官は、街で発生した殺人事件を題材に、自分と共作しないか、と持ちかけてくる。ボルティモアは保安官事務所に保管された屍体まで見せられたが、あまり乗り気ではなかった。

 しかし、付近にかつてエドガー・アラン・ポーが宿泊したことがあり、のちに凄惨な事件が発生したというホテルがあることを知ったボルティモアは、作家的な好奇心も手伝って、未だに街外れに残っているその建物に赴いた。

 そしてボルティモアは、V.(エル・ファニング)と名乗る不思議な少女と出逢い、彼女に導かれるようにして、現実と幻想の入り乱れる世界へと足を踏み入れる……



[感想]

 とうとうと語れるほど、フランシス・フォード・コッポラという映画監督についてよく知っているわけではない。比較的最近にようやく『ゴッドファーザー』を2まで鑑賞したばかりだし、大スクリーンで観られる機会を待ってしまっているせいで未だに『地獄の黙示録』さえ体験していない。

 だがそれでも、本篇が巨匠なればこその作品である、ということぐらいは断言させてもらっていいように思う。こんな風変わりな作品、恐らく映画製作を始めて間もない者ならたぶん撮らないだろうし、ヴェテランでも商業主義に徹しているなら決して選ばないような内容である(商業主義が悪い、と言っているわけではない。スタンスの問題に過ぎないので)。

 出だしのシチュエーションは特異なものではない。寂れた街で起きた悲劇と、そこにまつわる謎。猟奇的な事件に、視点人物が興味を持ち、何らかの形で巻き込まれる――どこにでもあるようなプロットだ。だが、主人公の関わり方も掘り下げ方も、いささか変わっている。当初は乗り気ではなく、保安官から持ちかけられた内容ではなく、違ったところから事件に関心を持つようになる。昼間の、殺伐としているようでいて妙に暢気なムードの描写とは対照的に、掴み所のない不気味さが充満する夜の世界で目撃する物事が、主人公を惹きつけているようだ。

 この主人公の行動原理は、小説や物語世界、それも幻想怪奇に耽溺したひとなら共感しやすいのではなかろうか。安易に巻き込まれたりしたくはないから、目撃者でいようと遠巻きに接する。それでも好奇心のほうが勝って、しばしば危険な領域に踏み込んでしまう。そういうところも含め、本篇の主人公ボルティモアの振る舞いには、“売れない作家”の生態が真に迫った筆致で織りこまれている。作家が自ら著書の在庫を携え、ドサ回りよろしく地方都市の書店でサイン会を実施したり、企画を代理人に売り込んで当座の生活費を工面しようとしたり、といったあたりはアメリカ特有の出版事情によるものだが、その言動の生々しさに同情したくなる――形が違うだけで、売れない作家の悩み、苦しみというのはどこも似たようなものなのだ――というのは閑話休題

 そんな主人公像の確かさがあるから、掴み所のない展開にも関わらず、最後まで本篇には奇妙な魅力がある。ホラー的なガジェットを弄ぶかのようなクライマックスから、あの人を食ったような結末まで、終始風変わりながら、妙な芯が通っているのだ。

 作風をひどく乱暴に括れば、ミニシアターで上映される文芸作品、とも言えるのだが、しかし重厚なドラマ、表現や演出に特化した作品とも本篇は趣が異なる。それこそ、主人公ボルティモアが執筆しているであろうオカルト作品、幻想・怪奇の匂いの濃密な作品に多く接しているような人こそ、本篇を堪能出来るのではなかろうか――たぶん、実作者や、創作に携わる人であるならば尚更に。そして、こんな奇妙なスタンスにある作品は、新人はもちろん、職人的な監督にだって撮れないだろう、と改めて思うのである。



関連作品:

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ゴッドファーザー PART II

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