『ラビット・ホラー』

ラビット・ホラー3D [Blu-ray]

監督:清水崇 / 脚本:林壮太郎保坂大輔清水崇 / プロデューサー:小椋悟、谷島正之 / エグゼクティヴプロデューサー:マイケル・J・ワーナー、内野エスター / アソシエイトプロデューサー:ミッシェル熊谷、谷澤伸幸 / 撮影監督:クリストファー・ドイル / 美術:池谷仙克 / 照明:市川徳充 / 編集:堀善介 / 特殊造形監修:西村喜廣 / VFXスーパーヴァイザー:鹿角剛司 / 3Dスーパーヴァイザー:宇井忠幸 / キャスティング:おおずさわこ / 音響監督:岩波美和 / 音楽:川井憲次 / 主題歌:SCANDAL『BURN』 / 出演:満島ひかり香川照之大森南朋緒川たまき澁谷武尊田辺桃子 / 企画&製作:小椋事務所 / 配給:PHANTOM FILM / 映像ソフト発売元:Vap

2011年日本作品 / 上映時間:1時間23分 / PG12

2011年9月17日日本公開

2012年2月22日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon]

公式サイト : http://rabbit-3d.com/

Blu-ray Discにて初見(2012/08/11)



[粗筋]

 小学校の図書室で司書として働くキリコ(満島ひかり)は、精神的なショックを受けて以来、口が利けなくなっている。2人目の母の死後、仕事である絵本作りに没頭するようになった父・公平(香川照之)は我が子にあまり関心を示さなくなり、腹違いの弟・大悟(澁谷武尊)の面倒はほとんどキリコが見ていた。

 ある日大悟は、瀕死になっていたウサギを石で叩き、安楽死させた。しかしその大悟の優しさは級友達には通じなかったようで、以来大悟は他の子供たちから無視されるようになる。

 キリコによって映画館に連れていかれ、3Dのホラー映画を観ていた大悟は、スクリーンから飛んできたウサギのぬいぐるみに何気なく手を伸ばし――本当に掴んでしまった。その晩から、大悟は奇妙な世界に導かれていく……



[感想]

呪怨』劇場版一作目から清水崇作品を鑑賞しているが、正直、だんだんインパクトが薄れてしまっている、という印象が否定できずにいる。『輪廻』はまだしも、初の3D作品であった『戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH』は、場面ごとの衝撃にこだわるあまり、脈絡を失い、怖さを感じられなくなってしまった。
志はあるのだが、それが質の向上には繋がっていない、と感じられるのである。

 だが本篇は、その意味ではやや精彩を取り戻したように思う。いわくありげな導入に非現実的な事象、少しずつキリコたちの日常が侵食されていく感覚。海外の名撮影監督クリストファー・ドイルによる映像の、クリアだが陰鬱なトーンともあいまって、ムードは秀逸だ。

 話が佳境にさしかかり、にわかに提示される変化、そしてそこから醸成されるサスペンスは、日本的な情緒を称えつつもひねりがあって力強い。核となる趣向自体はさほど珍しくないが、見せ方が巧妙で、よほどフィクション慣れしているひとでも、油断をしていると足許をすくわれるはずだ。

 秀逸なのは、その先である。真相が解っても――というより、だからこそ奇妙にねじれながら物語は続く。不穏さが持続し、どこへ行き着くのか解らない不安、恐怖が終始漂い続ける。

 本篇の趣向として面白いのは、清水監督初の3D作品である『戦慄迷宮』の映像やモチーフを踏襲していることだろう。キリコと大悟が一緒に観に行った映画館でかかっていたのが『戦慄迷宮』で、画面から飛びだしてくるのが、同作でも印象的に用いられていたウサギのぬいぐるみである。異変への幻想的な導入のあと、同じウサギでありながら生々しく薄気味の悪い造形の着ぐるみらしきものが、恐怖の使者として現れる。状況の奇怪さと造形の不気味さを随所で調整するモチーフとして有効に活用している。“タイトル・ロール”とした所以を充分に果たしているのだ――考えようによっては、失敗作に終わった前作を、本篇の土台とすることで再生しようとした、とも取れそうだが、それはさすがにうがち過ぎだろう。

 結末については、人によって好みが分かれるところだが、これを“否”とするひとは、たぶん日本産ホラーのほとんどが肌に合わないだろうし、そもそもホラー映画に求めているものが恐怖というよりカタルシスである、という人のはずだ。こういう着地は日本産のホラーでは珍しくないし、清水監督がこれまでの作品で選んできたスタイルから外れていないし、むしろきっちり嵌まっている、という意味では監督の作品群でも高水準だろう。

呪怨』以降、“呪い”に縛られない怪異、恐怖を描くことにこだわるあまり、いささか迷走している感のあった清水監督だが、本篇はそうした紆余曲折がもたらした資産をうまく活かした快作と言えよう。……3D効果についても計算されていたようなので、やはり意地でも劇場で鑑賞するべきだった、と悔やまれる。



関連作品:

呪怨

呪怨2

THE JUON―呪怨―

呪怨 パンデミック

輪廻

戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH

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鍵泥棒のメソッド

ALWAYS 三丁目の夕日'64

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