『メリダとおそろしの森(3D・字幕)』

TOHOシネマズ日劇、有楽町マリオン壁面の看板。

原題:“Brave” / 監督:マーク・アンドリュース、ブレンダ・チャップマン / 共同監督:スティーヴ・パーセル / 原案:ブレンダ・チャップマン / 脚本:マーク・アンドリュース、ブレンダ・チャップマン、スティーヴ・パーセル、アイリーン・メッキ / ストーリー・スーパーヴァイザー:ブライアン・ラーセン / 製作:キャサリン・サラフィアン / 製作総指揮:ジョン・ラセターアンドリュー・スタントン、ピート・ドクター / 共同製作:メアリー・アリス・ドラム / プロダクション・デザイナー:スティーヴ・ピルチャー / シミュレーション・スーパーヴァイザー:クローディア・チャン / 音楽:パトリック・ドイル / 声の出演:ケリー・マクドナルドビリー・コノリーエマ・トンプソンジュリー・ウォルターズロビー・コルトレーン、ケヴィン・マクキッド、クレイグ・ファガーソン / 日本語吹替版声の出演:大島優子山路和弘塩田朋子木村有里内田直哉天田益男郷田ほづみ / ピクサー製作 / 配給:Walt Disney Studios Japan

2012年アメリカ作品 / 上映時間:1時間34分 / 日本語字幕:松浦美奈

2012年7月21日日本公開

2012年11月21日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon|DVD ; Blu-ray セット:amazonBlu-ray Disc 3枚組:amazonBlu-ray Disc 3Dスーパーセット:amazon]

公式サイト : http://disney.jp/merida/

TOHOシネマズ日劇にて初見(2012/07/27)



[粗筋]

 スコットランドの山深い場所にある国の国王ファーガス(ビリー・コノリー山路和弘)と王妃エリノア(エマ・トンプソン塩田朋子)とのあいだに、メリダは生まれた。

 快活なメリダに、ファーガス王は誕生日、出かけた先の野山で、子供用の弓矢を与えた。初めて手にした弓矢を巧みに操れるはずもなく、戯れに射た矢は森に吸い込まれる。矢を探して森に僅かに足を踏み入れたメリダは、不気味に灯る小さな炎を目撃する。興奮して舞い戻ったメリダの報告に、エリノアはそれが“鬼火”と呼ばれるものだ、と説明した。“鬼火”は人を運命へと導くものなのだという。

 そのとき、森から忽然と現れた熊が、国王一家を襲撃した。ファーガス王は果敢に応戦し、片足を失う重傷を負いながらもどうにか熊を退け、家族を守り抜く。このときの出来事を、王は自らの武勇伝として繰り返し語るようになった。

 時は過ぎ、成長したメリダ(ケリー・マクドナルド大島優子)は若い頃よりもいっそう快活になり、弓矢の名手となっていた。父はそんな娘を頼もしく思うが、母は将来を盛んに案じる。そして、メリダに断りもなく、結婚の話を進めてしまった。

 伝統により、王女と結婚する相手は、付近の豪族の息子たちが何らかの競技で争い、勝った者が選ばれることになっている。メリダが提示した競技は、弓術。

 メリダは競技の当日、自らも弓矢を携えて現れると、豪族たちの息子を押しのけ、すべての的の中心を射貫いて、催しをめちゃくちゃにする。

 当然のようにエリノアは激昂した。口論の末、メリダは母が大切にしている、国王一家をモチーフにしたタペストリーを破いてしまう。感情的になった母は、メリダの弓矢を暖炉にくべてしまった。

 愛馬に乗って城を飛びだしたメリダはいつしか、幼い頃に訪れた森に辿り着いてしまう。そこでメリダは、再び“鬼火”を目撃し、誘われるように森の奥へと入っていった……



[感想]

 この作品、ピクサー・スタジオとしては相当な難産だったようだ。監督が連名となっているが、もともと携わっていたブレンダ・チャップマンは途中で行き詰まり、それをマーク・アンドリュースが受け継ぐ形でどうにか完成に漕ぎつけたらしい。

 そういう意識で考えてしまうから、かも知れないが、本篇は途中で若干、トーンが変化したように感じられる部分がある。ただ、それは決して悪い変化ではない。

 本篇は、従来のピクサー作品と比較すると、かなりダークな雰囲気が漂っている。国同士のややドロドロとした駆け引きに、気丈ながらも翻弄されてしまうヒロイン。背後に横たわる黒々とした森の姿や、登場する魔女の意匠にしても、従来の愛らしく親しみやすい造形とは趣が異なっている。

 日本人としては、そうしたモチーフの数々に、スタジオジブリの影響らしきものが窺える点にどうしても注目してしまう。実際にどの程度まで意識しているのかは不明だし、或いはもっと根本的な発想の出処が近いのかも知れないが、まったく影響を受けなかった、とは言いにくいほどイメージが重なっている。

 しかし、その上で描かれるストーリーは、かなり趣が異なる。特に中盤での事件以降の展開は実にユニークで、これは間違いなくジブリの影響を受けていない。すべての作品でオリジナル・ストーリーにこだわるピクサーらしく、どこかで聞いたようなモチーフながら、なかなか類例が思い浮かばない展開へと至る。

 序盤のイメージとあまりに異なるので、人によってはその点から辛い点数をつける可能性も大きい本篇だが、しかし主題の掘り下げ、という意味では見事なものがある。粗筋のあとの出来事ゆえ、詳述はしないが、序盤の布石をこういう形で活かす、というのは、予測も可能ながらかなり意外だし、一連の出来事を収拾する流れとしては非常に理想的だ。ファンタジー的な要素と、現実的な通過儀礼の要素がうまく馴染んでいる。

 一方で、作を追うごとに、3Dでの表現力が増しているのもピクサーの特徴として掲げられるが、その点でも唸らされる仕上がりだ。自然の表現が以前と比べても進歩しているのもさることながら、驚くべきはメリダの髪である。まるで実写をそのまま取り込んだかのような質感があり、映像のリアリティが更に増している。一方で、ずっと3DCGの難しさであった、人間のキャラクターの描き方もかなり洗練されてきた。『カールじいさんの空飛ぶ家』まではまだ物語自体が優しく、コミカルであったから、かなりデフォルメされた人物像でも成立していたが、本篇のようにコメディめいた展開はあっても、大筋がシリアスな話では浮きかねない。そのバランスが取れるようになっているのも、評価されるべき点だろう。

 ほとんど人間が中心で、森や宵闇の中で繰り広げられる場面も多く、物語としても従来のピクサー作品と比べて重い。それ故に“異色作”と冠したくなるが、しかしピクサーがこれまで辿ってきた歴史を思うと、当然の到達点だろう。やや暗いトーンが災いしたのか、いまひとつ成績は振るわなかったようだが、ピクサー、ひいては3DCGを用いたアニメーションの里程標になりうる秀作であると思う。



関連作品:

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