『怪談新耳袋殴り込み!劇場版<北海道編>』

シアターN渋谷、劇場奥にて唯一の女性隊員・はちがお出迎え。

監督&構成:青木勝紀 / プロデューサー:丹羽多聞アンドリウ 山口幸彦、後藤剛 / 撮影:今宮健太 / 音楽:スキャット後藤 / 出演:ギンティ小林田野辺尚人、市川力夫、青木勝紀、後藤剛、山口幸彦、はち、わらびん、木原浩勝、中山市朗、平山夢明 / 協力:映画秘宝 / 制作プロダクション:シャイカー / 製作:KING RECORDS、BS-TBS / 配給:KING RECORDS×Astaire

2012年日本作品 / 上映時間:1時間47分

2012年8月4日日本公開

2012年8月11日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon]

シアターN渋谷にて初見(2012/08/04) ※初日舞台挨拶つき上映



[粗筋]

 北海道ロケ出発の2日前、新耳Gメンのうち2名、ギンティ小林と市川力夫は、何故か青木ヶ原樹海にいた。その理由は更に遡ること数日前、北海道行きに先駆けて、人気作家にして実はただの頭の変な人・平山夢明から受けた助言にあった。そしてギンティと力夫は、新隊員と運命の出逢いを果たす。

 かくして、新耳Gメンたちは北海道への初上陸を果たす。新隊員との距離感を測りかねながらも、さっそく心霊スポットへの突撃に赴く一同であったが、この北海道ロケで彼らの前に立ちはだかるのは恐怖だけではなかった。

 時は2月下旬、記録的な豪雪によって街は雪に埋もれている。まして放逐された廃墟であることがほとんどの心霊スポットに、Gメンたち以外の足跡など刻まれているはずもない。最初のスポットである某滝付近のトイレではいきなり雪によって行く手を阻まれ、やむなく滝に直接向かうことになった。滝は滝で見事に凍りつき、滝のヴィジュアルを為していない。

 こんな時期、こんなところに来るんじゃなかった――いつも以上にネガティヴなオーラを発散しながらも、Gメンたちは北海道の奥深くへと足を進める……



[感想]

 このシリーズについての基礎知識は他の感想でも述べたので省略する。よく解らずにご覧になっている方は、下の関連作品リンクから旧作の感想に飛んでご確認いただきたい。

 ガチンコで赴いているだけに、怪奇映像がちゃんと収穫出来るか否かはほとんど時の運なので、基本的にミッションの無茶苦茶さと、パニックに陥るおじさん達の醜態を愉しむ、というのがこのシリーズの正しい見方である。だが今回、それだけでは済まない空気が序盤からひしひしと漲っている。

 最近こそホラー系の優れた作家として名を広めた平山夢明氏だが、実話怪談を精読しているような人たちは、彼が基本的に頭がおかしいことはよく承知している。そこに助言を求めに行く時点で人としては大きな間違いだが、異界のモノを挑発して映像に収めることを目的とする新耳Gメンとしては極めて正しい。ぶっちゃけこのくだりを本当にしてしまった時点で、彼らの覚悟は窺い知れる。

 しかしやはり、今回は心霊スポット各所のオカルト的な危険さ以上に、物理的な危険が終始つきまとっているのがポイントだ。夏場に劇場で公開することを考えれば当然と言い条、わざわざ2月という最も寒い時期、しかもよりによって大雪が積もっている中に赴くという最悪のスケジュールで撮影せざるを得なかったのは、観る者や作品の公開にのみ携わる人間にとっては僥倖だが、Gメンたちにとっては悪夢と言うほかない。

 そして、こうして観ると――至極当然のことであるが、怪奇現象は暑かろうが寒かろうが関係ない、ということがよく解る。映像的にはあまり収穫はないとは言い条、東海道編と同様に、音声では多くの異常が記録されている。特に円形校舎の廃墟での異変は、他の現象と比べても異様さが明白で慄然とするものがある。また、映像に記録されていなくとも、Gメンたちが各所で奇妙な音を聴いたり、不気味な影を目撃したことを証言するのは、寒さでそういう感覚が摩耗することはない、ということを窺わせる。観ている側としては終始笑いっぱなしだが、それでも怖さはひしひしと感じる――物理的に危ないことをしている、という怖さも含んではいるが、そんなことと、常識ではあり得ない何かが待っている、根源的な恐怖というのはどうやら克服は出来ないようだし、そこに寒さが加わると、考えられない行動をするものらしい、というのも本篇を観ていると解る。初日舞台挨拶でいみじくも田野辺キャップが漏らしていた通り、まさに人間モルモットの様相である。

 基本、こうした怪奇ドキュメンタリーの類は夏場のリリースを目指して、ギリギリの時期に突貫で撮影されることが多いようで、あまり雪の降りしきる時期や場所を扱うことはない。そういう意味でも本篇はけっこう特殊だが、単純に面白さ、怖さという面から考えても、実は注目すべき1本と言えそうだ。ここに至っても未だ、ビデオオリジナルで製作していた頃の映像に勝るものが撮れていないのが残念だが、しかし怪奇ドキュメンタリーの面白さは成果の有無のみに因っているのではなく、姿勢と覚悟にあることがよく解る。

 ……でもまあ、無責任な観客側としては、誰かが三途の川を越えてしまう前に、瞠目するような映像を収穫してきて欲しい、と思ってしまうのだけど。



関連作品:

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