『メン・イン・ブラック3(3D・字幕)』

TOHOシネマズ西新井、建物外の壁面ポスター。

原題:“Men in Black III” / 原案:ローウェル・カニンガム / 監督:バリー・ソネンフェルド / 脚本:イータン・コーエン / 製作:ウォルター・F・パークス、ローリー・マクドナルド / 製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、G・マック・ブラウン / 撮影監督:ビル・ポープ,ASC / プロダクション・デザイナー:ボー・ウェルチ / 編集:ドン・ジマーマン,A.C.E. / 衣装:メアリー・ヴォクト / 視覚効果スーパーヴァイザー:ケン・ラルストン、ジェイ・レッド / エイリアン・メイクアップ・エフェクト:リック・ベイカー / 音楽:ダニー・エルフマン / 出演:ウィル・スミス、トミー・リー・ジョーンズジョシュ・ブローリンエマ・トンプソン、ジェマイン・クレメント、マイケル・スタールバーグ、ニコール・シャージンガー、マイケル・チャーナス、アリス・イヴビル・ヘイダー / アンブリン・エンタテインメント製作 / 配給:東宝東和

2012年アメリカ作品 / 上映時間:1時間48分 / 日本語字幕:戸田奈津子

2012年5月25日日本公開

公式サイト : http://mib-3.com/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2012/05/25)



[粗筋]

 人知れず地球を訪れ、人間の姿を借りて移り住み、或いは悪事を企てる異星人たちを密かに管理し、平和を保つことに従事する秘密組織。彼らは、黒ずくめの制服にちなんで“メン・イン・ブラック”と呼ばれている。

 創設時からの古参のエージェントであるK(トミー・リー・ジョーンズ)と、彼によって見出され、警官から移籍したJ(ウィル・スミス)はかなり長い間組んでいるが、Kの背後には未だ謎が多い。その日、異星人が経営している中華料理店でトラブルがあったとの通報により急行したJは、提供されているのが宇宙エビだったと知ったときのKの態度に不審を覚える。

 果たして、大捕物の末に辿り着いた敵の親玉・ボリス(ジェマイン・クレメント)に、Kは面識があるようだった。Jは事情を訊ねるが、プライヴェートについてほとんど口にしないKは今回もだんまりを決めこむ。Jはボリスについて調べるが、1969年に他ならぬKが逮捕して月面の刑務所に収容された宇宙人であることよりも詳細な情報はJの権限では得られず、先日急逝したZに代わり着任した、Kと縁の深いO(エマ・トンプソン)も多くを語ろうとはしなかった。

 明くる日、出勤したJは、身も知らぬ新人エージェントに親しげに話しかけられ、違和感を覚える。彼の本来のパートナーKは職場にいなかった――否、存在自体を抹消されていた。彼は40年も前の事件で命を落としたことになっていたのだ。

 つい前夜、珍しくKから電話がかかってきたというのに、それからいったい何が起きたのか? Oは半信半疑だったが、JがKの癖について詳しいことで、J自身が事件解決のための鍵であることを悟る。そしてそんな折り、大事件が勃発した。ボリスの生地であるボグロダイト星の部隊が地球に侵攻してきたのだ。どうやら、刑務所を脱走したボリスが過去に干渉し、Kを返り討ちにしたことで、滅亡したはずのボグロダイト星が今になって攻め入ってくるきっかけを作りだしたらしい。OはJに、ボリスと同じ手段で過去に渡り、Kを救うように指示する。

 舞台は1969年7月、ヒッピー文化華やかなりしころ。果たしてJは、若きK(ジョシュ・ブローリン)を救い、現代の地球に訪れた危機を防ぐことが出来るのか……?



[感想]

 これは、偉大なるマンネリズムである。

 一般に“マンネリ”という言葉は否定的な意味合いに捉えられる。毎回同じような展開、似たような行動を繰り返している、つまりは進歩する意志がないことを示しているのだから当然と言えようが、しかし翻って、マンネリズムと面白さとを共存させることが如何に難しいか、ということを、この共通認識は示している。マンネリズムを意識して追い求める、シリーズとして立脚することを志しても、なかなかうまくいかないのが現実だ。

 この作品はまだ僅か3作、しかも前作から10年もの月日が流れており、シリーズとしては流れが緩やかだが、それでも恐らくは強くマンネリを意識している。だがそこで、無理に違いを際立たせず、しかし新しい面白さを打ち出そうとしているあたりに、本篇は志さえ感じさせる。

 主人公のふたりは見事に不動だ。第1作から随分の時を経て、いっぱしのキャリアを築いたエージェントJだが、K相手では未だにボウヤ扱いを受けている。上司が急逝して入れ替わってしまったが、相変わらずKの過去と繋がりがあるので、Jの立ち位置は変わっていない。むしろ、新しい関係が出来たことで、シリーズお馴染みのやり取りの面白さに新しい光を当てている。こういう描き方に、本篇がシリーズとしてのマンネリズムに真摯であろうとする姿勢が窺えるのだ。

 本筋に入ると、“タイムジャンプ”という大きな趣向も盛り込まれるが、これなどは目新しい趣向であると同時に、上司を変更したことよりも更にシリーズの魅力、面白さを再認識させることに役だっている。MIB創設から関わっているが故に組織の背景、内実を知り尽くしたKと、実務能力に優れるがKには軽んじられているJ、という現在の関係性が、過去に渡り、若き日のKと出逢うことでねじれる感覚が愉しい。意趣返しのように、JがKを若造扱いする場面もあれば、未だ青年のはずのKが現代と同じ調子でJを翻弄するくだりもある。ここで登場する若き日のKに、ジョシュ・ブローリンをあてがったのも絶妙だ。トミー・リー・ジョーンズの雰囲気を完璧にコピーしたこともそうだが、設定年齢より実年齢も見た目も上回っていることを逆手に取って、若くして既に老成した人物に仕立てているのが、トミー・リーの構築したKの人物像にも合致している。

 それでいて、独自のアイディア、魅せるための工夫がちゃんと別途組み込まれているのも好感が持てる。正直なところ、もう少し緻密な伏線を施すか、更に印象的に描く方法はあったと思うが、クライマックスで示される意外な事実の驚き、その情感は、仮にシリーズ初体験でも、全作をきっちり追ってきたひとでも、存分に心に沁みてくるはずだ。

 シリーズでは初めての3D作品だが、ちゃんと3Dならではの醍醐味を
理解して、マッチした見せ場を用意しているのもいい。近年の3Dは奥行きを重視しているが、本篇は“アトラクション”的な愉しみに注目したのか、飛びだす効果を意識しているのが窺える。一輪バイクの疾走シーンもそうだが、特にこの点を実感させるのが“タイムジャンプ”の場面だ。時間を飛び越えるために、高い場所から飛び降りる――というサディスティックな発想は、しかしJの視点で描写することで著しいスリルを味わわせてくれるし、特殊効果を用いて描き出したJの姿は3Dだからこそ余計に笑える。全篇に亘って3Dの旨味が感じられるわけではないが、ツボは押さえているあたりに、職人的な巧さが滲んでいる。

 率直に言えば、突出したインパクト、美点はないと思う。やはり第1作の“バグ”の強烈な存在感を凌駕するところまでは行っていない。だが、第1作から築かれた個性、面白さを正しく引き継ぎ、経た時間と新たに得た技術に見合う魅力を加えた本篇には、やはり優れたマンネリズムを感じる。主演ふたりが、第1作の頃とは比較にならないほど大スターとなり、それ故に第3作まで10年もの月日を要してしまったことを思うと、決して容易ではないのだろうが、それでもなお、彼らの新たな活躍に期待したくなる、快作である。



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