『孫文の義士団 −ボディガード&アサシンズ−』

孫文の義士団 -ボディガード&アサシンズ- スペシャル・エディション [DVD]

原題:“十月圍城 Bodyguards & Assassins” / 監督:テディ・チャン / 原案:チャン・トンマン / 脚本:グオ・ジュンリー、チー・ティエンナン、ジョイス・チャン / 脚本補:ジェームズ・ユエン、ウー・ビン / 製作:ピーター・チャン、ファン・ジャンジン、ジョジョ・ホイ / アクション監督:トン・ワイ、リー・タッチュー / 撮影監督:アーサー・ウォン(HKSC) / 美術: ケネス・マク / 美術指導:ラム・チーキウ / 編集:デレク・ホイ、ウォン・ハイ / 衣装:ドラ・ン / 視覚効果:ファットフェイス・プロダクション・リミテッド / スタント・コーディネーター:谷垣健治 / 音楽:チャン・クォンウィン、ピーター・カム / 出演:ドニー・イェンレオン・ライニコラス・ツェーファン・ビンビン、ワン・シュエチー、レオン・カーフェイ、フー・ジュンエリック・ツァン、クリス・リー、サイモン・ヤム、チョウ・ユン、ワン・ポーチエ、メンケ・バータル、カン・リー、チャン・ハンユー、シン・ユー、ジャッキー・チュン / ウィー・ピクチャーズ製作 / 配給&映像ソフト発売元:GAGA

2009中国、香港合作 / 上映時間:2時間18分 / 日本語字幕:?

2011年4月16日日本公開

2011年11月2日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon]

公式サイト : http://sonbun.gaga.ne.jp/

DVD Videoにて初見(2012/05/15)



[粗筋]

 1901年のヤン・チューユン(ジャッキー・チュン)暗殺以降、香港を拠点とした革命運動に暗雲が立ちこめていた。1906年10月、日本で革命軍を組織した孫文(チャン・ハンユー)は、一斉蜂起の計画を整えるべく、この混沌とした香港に一時帰還することを決意する。

 その情報を聞きつけた清朝廷は、香港で孫文を仕留めるべく、ヤン・シャオグオ(フー・ジュン)を筆頭とする暗殺団を組織、現地へと送りこむ。

 中国同盟会・香港支部長のチェン・シャオバイ(レオン・カーフェイ)は、孫文来訪を間近に控え、かねてから金銭面で彼らを支援していたリー・ユータン(ワン・シュエチー)から資金を調達する一方で、香港に劇団のふりをして潜伏していたファン元将軍(サイモン・ヤム)に、孫文滞在中の警護を依頼する。その事実を、スパイとして利用しているシェン・チョンヤン(ドニー・イェン)の尾行により把握したシャオグオは、劇場に刺客を送りこみ、ファン元将軍とその部下たちを襲う。暗殺団の存在を知らせるために劇場を訪れていたシャオバイは、シャオグオによって捕らえられてしまった。

 劇場の惨状を目の当たりにし、更に翌日、英国統治下にある香港警察の友人シー署長(エリック・ツァン)によって、自らが経営する中国日報社を荒らされたことで、もともと金銭面のみ援助するつもりでいたリー・ユータンは立場を翻し、手ずから孫文警護の準備を整え始める。名家に育ちながら、間違った人を愛したために落ちぶれ路上生活を続けているリウ(レオン・ライ)に、長年使えている車夫のアスー(ニコラス・ツェー)が見つけてきた怪力自慢の臭豆腐売り(メンケ・バータル)らに呼びかけ、警護を頼んだ。

 リー・ユータンの若き妻ユエル(ファン・ビンビン)は、望んで危険な道を歩みはじめた夫を誇りながら、不安を覚える。そこで彼女は、夫の身を守らせるために、かつての夫を訪ねる。その人物とは、他でもない、同盟会の動向を探らされていたシェン・チョンヤンであった。

 様々な思惑とドラマとが入り乱れながら、彼らはついにその日を迎える――孫文が、香港に到着した。



[感想]

 タイミングを逃し、劇場で鑑賞することが出来なかったのが惜しまれる。まさに、大スクリーンで観る価値のある、壮大なアクション・ドラマである。

 香港映画を頻繁に観るようになってあまり経っていない私だが、それでも解るほど本篇のキャストは贅沢だ。現代香港アクションの看板俳優であるドニー・イェンに、若きスターのニコラス・ツェー、ドラマ部分を一手に担うレオン・カーフェイに、アンディ・ラウらと並び称されるレオン・ライ、そして友情出演という位置づけで、想像以上に早く退場してしまう役柄に、サイモン・ヤムを配するという豪華さである。プロローグ部分にはレオン・ライらとともに高い人気を誇るジャッキー・チュンがいきなり暗殺する役柄で顔を見せていたり、ドニー・イェンの『導火線 FLASH POINT』や『新少林寺/SHAOLIN』で存在感を発揮する本物の少林寺出身者シン・ユーが暗殺団のひとりとして登場したり、と脇にも目につく俳優がいる。もっと詳しい人なら更に発見があるのではなかろうか。

 キャストの豪華さに合わせたかのように、舞台も非常に豪華で緻密だ。どうやらこのために、約100年前の香港の街並をセットで再現したとのことで、遠景ではCGの助けを借りているにしても、見事なまでの生命感に満ちている。前半、この空間で暮らす人々の姿を丁寧に織りこんだあと、同じ場所が死闘の舞台となる。降り注ぐボウガンの矢から逃げ惑う孫文たち一行の姿や、裏切りを悟られたチョンヤンと暗殺団のナンバー2との一騎打ちなど、立体的に繰り広げられるアクションは、歴史ドラマの重厚感を湛えつつも、ジャッキー・チェン最盛期の創意工夫に匹敵するパワーさえ宿している。

 アクションにおいて最大の見せ場を作っているのは、現代の香港流アクション映画第一人者ドニー・イェンであることは間違いないが、これほど多くのスター級キャストを揃えながら、すべてに存在感と活躍の場を与えている配分の妙も素晴らしい。

 かつての香港映画と異なり、きちんと脚本、構成が練られているので、アクションが決して単なる見せ場に終わらず、ドラマを膨らませる役割を果たしていることも出色だ。多くの血を流しながらも、孫文が同胞たちと共に蜂起の段取りを組むための1時間を手に入れるために我が身を犠牲にする人々。父であるファン将軍の使命を引き継ぎながら、発見した仇に果敢に挑むホン(クリス・リー)や、車夫アスーの恋物語と、“臭豆腐”と戦いを通じて結ばれる友情。孫文を守る者だけでなく、朝廷側に与する者も絡む人間関係が齎す情感が豊かだ。

 決して予定調和通りでない筋書きには理不尽さも滲むが、それこそこの頃、中国各地で繰り広げられた“革命”の偽らざる姿なのだろう。“正義は勝つ”式の曇りのないハッピーエンドとは程遠いし、苦い想いもこみあげるが、それでもラストシーンに力強さがあるのは、登場人物たちだけでなく、作り手も意志を貫きとおしたからに他ならない。

 現代の香港映画の真価を詰めこんだ、まさに豊饒なエンタテインメント。日本は無論、ハリウッドでも達し得ない、香港−中国映画ならではの高みを体現した傑作である。



関連作品:

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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱

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かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート

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