『Black & White/ブラック & ホワイト』

『Black & White/ブラック & ホワイト』

原題:“This Means War” / 監督:マックG / 原案:ティモシー・ダウリング、マーカス・ガウテセン / 脚本:ティモシー・ダウリング、サイモン・キンバーグ / 製作:ロバート・シモンズ、ジェームズ・ラシター、ウィル・スミス、サイモン・キンバーグ / 製作総指揮:マイケル・グリーン、ジェフリー・エヴァン・クワティネッツ、ブレント・オコナー / 撮影監督:ラッセル・カーペンター,ASC / プロダクション・デザイナー:マーティン・ラング / 編集:ニコラス・デ・トス / 衣装:ソフィー・デ・ラコフ / 音楽:クリストフ・ベック / 出演:リース・ウィザースプーンクリス・パイントム・ハーディティル・シュヴァイガーチェルシー・ハンドラー、アンジェラ・バセットローズマリー・ハリスアビゲイル・リー・スペンサー、ジョン・ポール・ルタン、ジェニー・スレイト / オーバーブルック・エンタテインメント/ロバート・シモンズ製作 / 配給:20世紀フォックス

2012年アメリカ作品 / 上映時間:1時間38分 / 日本語字幕:松浦美奈

2012年4月20日日本公開

公式サイト : http://www.foxmovies.jp/blackwhite/

TOHOシネマズ日劇にて初見(2012/04/20)



[粗筋]

 CIAエージェントのFDR(クリス・パイン)とタック(トム・ハーディ)はいずれも凄腕にして、名コンビだ。

 しかし、香港での極秘任務で、敵方に6人の死者を出したうえに、確保するべきテロリスト、ハインリッヒ(ティル・シュヴァイガー)を取り逃す、という失態を演じてしまい、上官のコリンズ(アンジェラ・バセット)からしばらくのあいだ内勤を命じられてしまう。

 予想外に出来た休暇を、タックは別れた妻ケイティ(アビゲイル・リー・スペンサー)と息子ジョーと、久しぶりに家族として過ごすために費やそうと考えたが、ジョーは不在の多い父に関心がなく、ケイティも新しい人生を始めようとしていた。

 寂しさを埋めるために、タックは出会い系サイトに登録、さっそくひとりの女性と約束を取り付ける。FDRは友人の軽挙を笑いながらも、待ち合わせ場所の近くに待機して、必要とあれば女性の品定めに赴く、と言い張った。

 当日、待ち合わせ場所近くのレンタルショップで控えていたFDRは、タックから“心配無用”というメッセージを受けると、眼鏡に適った女性をその場で誘いにかかる。だが、その女性はTDRの軽薄な振る舞いをたしなめ、すげなくあしらって立ち去った。意地になったFDRは、スパイとしての調査能力を悪用し、女性の職場に乗り込んで約束を取り付ける。

 TDRもタックも、結果としてデートは成功、彼女に対して本気でアタックする意を固めた。あるとき、職場で互いの相手の写真を見せあったとき――ふたりは硬直した。

 ふたりが口説こうとしていたのは、まったく同じ女性だったのだ。

 図らずも、CIAの凄腕エージェントふたりに想いを寄せられることとなったその女性、ローレン・スコット(リース・ウィザースプーン)。ごく平凡な女性だったはずの彼女は、知らずのうちに異様な恋の鞘当てに巻き込まれていたのだった……



[感想]

 映画の題材はとうに枯渇している、と言われて久しいが、まだその気になればひねり出すことは可能のようだ。当初、出演者やスタッフからさほど興味が湧かず、ろくに情報も仕入れていなかった本篇に、私がにわかに関心を抱いたのは、予告篇で初めて、三角関係のロマンティック・コメディという図式をスパイ物に組み込む、というアイディアで作られたものだ、と知ったときである。

 恋の鞘当てを描くとき、ライヴァルがどんなふうに意中の相手にアプローチするか、という点を気にかけるのはごく自然なことだ。普通の恋愛物でも、このあたりに過剰なシチュエーションを取り込んで笑いを生み出す、というのは常道だが、この鞘当てを現役の凄腕スパイ同士が行っているのだから、過剰どころの話ではない。のっけから個人情報をハッキングして職場に乗り込む、という荒技を繰り出し、親友が恋敵だと気づくと、あらゆる諜報能力を駆使して相手を妨害したり、どうにか先手を打とうとする。

 非常に魅力的な設定だが、あまり常識に囚われすぎては駄目だし、かといって易々と人死にを出すような真似をしては興が冷める。本篇はそのあたりの匙加減をいい具合に調整し、“行き過ぎたラヴコメ”感を存分に表現している。

 恋の駆け引きを行う3人の人物設定もなかなかに憎い。たとえば、このふたりが奪い合う女性が、何の罪悪感もなく二股をかけるような人物なら、観ていてヤキモキするどころか不快感を覚えるだろうが、本篇のローレンは、どちらかと言えば恋に臆病で、しかも誠実な人物として描かれている。かつて恋人を追ってロサンゼルスに出て来た、という経緯があり、その男との恋に破れたことで孤独を託っており、友人の勧めもあってようやく新しい恋に乗りだそうとしたところで、タック、FDRと相次いで出逢い、図らずも両者を天秤にかける成り行きになってしまった。相次いで出逢うまでの経緯が自然である一方、ローレンの側でもふたりの間で迷う条件をうまく整えているので、変な苛立ちを覚えることなく、その滑稽なシチュエーションに浸ることができる。

 FDRとタックが、スパイとしての手腕は優れているが人生観や生活背景が正反対である、というのもお約束とはいえ巧妙なのだが、いちばん巧いのはローレンの親友トリッシュ(チェルシー・ハンドラー)の存在だ。もし一人きりなら、ふたりの間で迷ったあげくにどっちつかずに終わってしまいそうなローレンを、自由な価値観といい加減な言動でいい具合に翻弄する。近くにいたら非常に迷惑そうだが、しかしどこか憎めないチャーミングさで、ある意味ではメインの3人以上に作品を魅力的なものにしている、と言っていい。かなりテキトーな人物かと思いきや、終盤では意外な一面を見せて、ドラマに暖かさをもたらしている点でも、無視出来ないキャラクターなのだ。

 アクションについては、もう少し派手でも良かったのではないか、と思えるし、クライマックスでの波乱、それ以降の展開が少々単純すぎる、という嫌味がある。ただ、これらを強調しすぎると、スパイ同士が恋の鞘当てを繰り広げる、という面白さが削がれる可能性もあった。きちんと共存させていれば文句なし、とも言えるが、しかしそのバランス感覚は評価して然るべきだろう。

 ギリギリまで笑いと興奮をもたらし、ヤキモキさせた挙句の締め括りにもきちんと伏線が張られていて快い。賞賛の意味で、デート・ムービーに最適な1本である――無論ひとりで観ても大丈夫ですが正直ちょっと度胸は要るかも知れない!



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