『タイタニック(字幕・3D)』

『タイタニック 3D(字幕)』

原題:“Titanic 3D” / 監督&脚本:ジェームズ・キャメロン / 製作:ジェームズ・キャメロン、ジョン・ランドー / 製作総指揮:レイ・サンキーニ / 撮影監督:ラッセル・カーペンター / プロダクション・デザイナー:ピーター・ラモント / 編集:ジェームズ・キャメロンコンラッド・バフ、リチャード・A・ハリス / 衣装:デボラ・L・スコット / VFXスーパーヴァイザー:ロブ・レガト / 音楽:ジェームズ・ホーナー / 主題歌:セリーヌ・ディオン / 出演:レオナルド・ディカプリオケイト・ウィンスレットビリー・ゼインキャシー・ベイツフランシス・フィッシャービル・パクストン、バーナード・ヒルジョナサン・ハイド、ヴィクター・ガーバー、デヴィッド・ワーナーグロリア・スチュアート、スージー・エイミス / ライトストーム・エンタテインメント製作 / 配給:20世紀フォックス

2012年アメリカ作品(オリジナル版・1997年) / 上映時間:3時間14分 / 日本語字幕:戸田奈津子

1997年12月20日オリジナル版日本公開

2012年4月7日3D版日本公開

午前十時の映画祭9(2018/04/13〜2019/03/28開催)上映作品 ※2D版

公式サイト : http://titanicmovie.jp/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2012/04/04) ※3D版先行上映



[粗筋]

 アメリカの東、ニューファウンドランド沖で、海底に眠るタイタニック号の潜水調査が行われていた。ブロック・ラベット(ビル・パクストン)が指揮する捜索チームは小型無人作業艇を船内に潜入させることに成功、小型金庫を回収する。事故の際に紛失したと見られる宝石“碧洋のハート”を遂に発見した、と沸き立つクルーたちだったが、収納されていたのは少額の紙幣と、ひとりの女性を描いた絵だけだった。

 しかし、この絵がブロックらのもとに、思わぬ収穫をもたらす。テレビの報道でそれを目にした老婦人が、ブロックに接触してきたのだ。彼女の名はローズ・カルバート(グロリア・スチュアート)――何と、タイタニック号沈没事故の生き残りだという。

 孫娘リジー(スージー・エイミス)とともにヘリコプターで船に現れたローズは、問題の絵に描かれた女性が若き日の自分である、と言った。そして彼女は、あの船で経験した出来事を、ブロックたちに語りはじめる。

 1912年4月10日、タイタニック号はイギリス・サウザンプトン港から船出した。このとき17歳の若きローズ(ケイト・ウィンスレット)は、豪華客船の旅にも心は沈んでいる。既に財産を失い、名誉しか残らなかった彼女の家は、ローズを資産家キャル・ホックリー(ビリー・ゼイン)に嫁がせて、どうにか生き延びようとしていた。社交界の、十年一日の如きやり取りに倦んでいたローズにとって、それは長い長い地獄への旅路でしかなかった。

 その晩、衝動的に晩餐の席を飛び出すと、船尾から身投げしようとしたローズは、ジャック・ドーソン(レオナルド・ディカプリオ)という青年に救われる。アメリカ出身だったが、故郷で家族を失い天涯孤独の身となった彼は、パリでしばらく絵画修行をしていたが実らず、賭けで手に入れたチケットで、タイタニック号の三等船室に乗り込んだのだという。ジャックの野卑な振る舞いに戸惑ったのは最初のうちだけで、ローズは彼が覗かせる別世界の香りに、少しずつ心惹かれていった。

 母ルース(フランシス・フィッシャー)をはじめ、身の回りの人間が誰ひとり歓迎しない恋にローズが揺れるなか、だが運命の瞬間は、刻一刻と迫りつつあった……



[感想]

 もともとは映画にさほど関心がなかったうえに、頻繁に観るようになってもなお、世間が大騒ぎしている大作にはあまり興味を惹かれない、という天の邪鬼な性格ゆえに、未だに観ていない有名な大作が、私には数多くある。そんななかで、特に気懸かりだったのが本篇だ。『ターミネーター』は1作目も2作目も好きだし、『トゥルー・ライズ』だって大好きなくらいで、ジェームズ・キャメロン監督はむしろあの頃としてはファンであった、とさえ言えるほどだが、宣伝の時点でロマンスであることを強調しており、しかも3時間を超える長尺、ということもあって、積極的に映画を観るつもりのなかった当時の私にとっては敷居が高かった。それ故に、近年の3D映画の普及に伴って本篇が3D映画としてリニューアル、劇場公開される、という展開は、私には絶好の機会だった。

 未だに破られていないアカデミー史上最多受賞、という大記録に、ジェームズ・キャメロン監督が『アバター』で自ら更新するまで続いていた歴代最高興収を樹立していた、という点からも、本篇のストーリー、映像技術の素晴らしさなどについては既に充分すぎるほど証明されている――と言えそうだが、しかし私があちこちで見聞きする本篇の評価は、どちらかと言えばネガティヴなものが多かったように思う。特に、本篇の内容が、タイタニックの沈没そのものよりもロマンスに重点を置いていたこと、またレオナルド・ディカプリオ演じるジャックが惹かれる女性ローズの容姿について揶揄する声を聞くことが多かった。

 だが、やはりこういうのは、実物に触れてみないと解らないものである――どちらもいささか過剰にあげつらっていただけで、いずれも欠点とは言い難い。

 資料に沿って、実際の事故の様子を克明に再現したドラマ、という意識で観ようとすれば、確かに本篇のロマンスは邪魔だし、虚構性が強すぎる。しかし本篇はどう考えても、資料をそのまま再現することに重点を置いていない。出来る限り資料にあたり、あの悲劇を隅々まで描き出すことには執心しているが、その細部を史実に添わせることでリアリティを構築するのではなく、物語のなかで違和感なく、船内の様子を織りこむように仕向けていることが、よく観ていると解る。

 群像劇のように思えるし、終盤では細かに脇役の姿も描かれているが、本篇は基本的にローズの目線を中心に綴られている。しかし、そうして彼女が語るとおりに話を追っていくと、それだけでタイタニック号に乗り合わせた上流階級の様子も、貧しい人々の姿も活写され、更にタイタニックが沈没するに至った経緯も把握出来る。更には終盤、訳あって船室に閉じ込められたジャックを助けに行くその過程で、タイタニック崩壊の様子も克明に辿ることに成功している。史実にこだわり、別々の人物の物語を並行して描いて見せる手法では、ここまでシンプルに詰めこむことは出来なかっただろう。そういう明瞭な意図の上で、ロマンスとしても表現に無駄がないから、本篇は牽引力を最後まで保っているのだ。およそロマンスにしか関心がない、という人であっても、本篇を観たあとなら、タイタニック号がどのように海底へと消え、乗員乗客がどのように犠牲になっていったのか、きちんと理解しているはずだ。

 もう1点、ローズの容姿であるが――これはまあ、個人個人によって感じ方は異なるだろうが、よく聞かれたのが、彼女がいささか太りすぎだ、という意見、というかネタをよく目にした。私が鑑賞したTOHOシネマズのマナームービーでも揶揄されていたが……率直に言って、あれを「太っている」と言ったら世間は肥満だらけである。

 というのは主観に過ぎないから脇に置くとしても、恐らく20世紀初頭は、現代ほどやたらとスリムであることを持てはやす傾向にはなかったはずだ。腰は細く、お尻は大きく、というのがもてる条件と考えられていたはずであり、コルセットによって腰は矯正出来ても、お尻の大きさは極端に変えられないぶん、昨今よりもふくよかな女性が多かったし、異性の目を惹きつけていたのではないかと考えられる。

 そして、彼女がふくよかだったせいで、ラストがああいう展開になった、というジョークもときどき目にするが、これも言いがかりである。あの状況では、彼女が痩せていようと結果は同じだ。あれにふたりは乗れないし、選択肢ははじめからなかった。

 ……というわけで、本篇を観なかったがゆえに判断に苦しんでいた部分についてはこれで得心がいった。ジェームズ・キャメロン監督がどんな作品を志し、何故爆発的に指示されたのかも充分に理解が出来た。そして、どれほど話題になっていても、安易にテレビや映像ソフトで観て済ませなかったのは、正しい選択だった、といまは確信している。もとが2Dで撮影されたものであり、立体的に見せたときの効果を計算していない絵作りをしているので、思ったほど3Dの醍醐味は感じられなかったとは言い条、3D方式の開発・普及に誰よりも努めてきたキャメロン監督が手懸けただけあって、他の後付け3D映画などとは比較にならないほどの完成度を示している。3Dにしたことに違和感を抱かない、というぐらいに留まっているのが残念だが、それが非常に難しいことだ、というのは3D作品をだいぶ観てきた今なら断言出来る。

 何より、この壮大な構築美は、劇場の大スクリーンで観るだけの価値が充分にある。私同様に機会を逸していたひとも、まだ家庭でしか本篇を観たことがないというひとも、折角の好機に劇場で堪能していただきたい――好き嫌いは別として、そのほうが凄さを実感出来るはずだ。



関連作品:

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