『プリキュアオールスターズ New Stage/みらいのともだち』

『プリキュアオールスターズ New Stage/みらいのともだち』

原作:東堂いづみ / 監督:志水淳児 / 脚本:成田良美 / オリジナルキャラクターデザイン:稲上晃香川久馬越嘉彦、高橋晃、川村敏江青山充 / キャラクターデザイン&作画監督青山充 / 美術監督:田中里緑 / 色彩設計:澤田豊二 / 音楽:高梨康治 / 声の出演:能登麻美子福圓美里、田野アサミ、金元寿子井上麻里奈西村ちなみ大谷育江小清水亜美折笠富美子豊口めぐみ大久保瑠美三石琴乃水樹奈々水沢史絵桑島法子久川綾川田妙子くまいもとこ、菊池こころ、沖佳苗喜多村英梨中川亜紀子小松由佳松野太紀こおろぎさとみ熊田聖亜赤江珠緒子安武人 / 配給:東映

2012年日本作品 / 上映時間:1時間12分

2012年3月17日日本公開

公式サイト : http://www.precure-allstars.com/

ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2012/03/23)



[粗筋]

 坂上あゆみ(能登麻美子)の心は沈んでいた。親の都合で急遽横浜に引っ越してきたが、根が引っ込み思案なあゆみは、友達を作る自信もない。あゆみは学校にも、横浜という街にも、お母さん(赤江珠緒)に対してさえも不満を覚えていた。

 同じ頃、星空みゆき(福圓美里)と仲間の4人は、あるものを探して横浜をさまよっていた。彼女たちが探しているのは、先日、伝説の戦士プリキュアたちが倒した魔物・フュージョンのかけら。みゆきたちをプリキュアに誘った妖精キャンディ(大谷育江)に頼まれて探しているが、見慣れない土地であったために迷い、気づけばみゆきはひとりになってしまう。やがて遭遇したフュージョンのかけらを退治したのはみゆき=キュアハッピーと、先輩のプリキュアキュアメロディ北条響(小清水亜美)たちだった。

 フュージョン探索を続けていたみゆきは、途中であゆみとも出逢っていたが、あゆみはその前に、風変わりな生き物と出逢っていた。フーちゃん(熊田聖亜)と名付けたそれは、小さな生き物で、自在に姿を変えることが出来る。引っ越したばかりで友達はなく、お母さんともギクシャクしていたあゆみは、フーちゃんに親近感を覚えて可愛がった。フーちゃんもあゆみに懐き、彼女の願いに応えようとする。

 しかし、この小さな生き物こそ、みゆきたちが追っているフュージョンのかけらだったのだ……



[感想]

 歴代のプリキュアたちが一堂に会する“お祭り”的なシリーズ『プリキュアオールスターズDX』は、2011年公開の第3作でいちおう完結ということになった――が、毎回好評を博しているだけに、恐らく何らかの形で続けるのだろう、と大きなお友達の大半は想像していたはずだが、案の定、こうして新たな作品が公開された。

 しかし、テレビシリーズが一新されるごとに新たな趣向を凝らし、“お祭り”的な『オールスターズ』でも決して手を抜くことなくドラマやカタルシスを構築していたスタッフが、単なる反復にするはずなどない。オールスター作品でありながら、明確すぎるほど旧シリーズとは異なる組み立てをしている。

 これまでは最新シリーズのプリキュアが中心となって物語を紡いでいくスタイルであったのに対し、粗筋からも解るとおり、本篇は劇場版オリジナルのキャラクター・坂上あゆみの視点を中心に綴られている。慣例に沿って、プリキュアたちのなかでは最新シリーズ『スマイルプリキュア!』の面々がクローズアップされているが、彼女たちはサポートであり、主役は間違いなくあゆみだ。

 視点人物をシリーズのプリキュアではなく他のところに設定したお陰で、『オールスターズ』のなかでは最も明確なストーリーが築かれるかたちとなっている。引っ越したばかりの女の子の寂しさと、偶然に巡り逢った正体不明の生き物との交流……という、ジュヴナイルでは王道に近い内容だが、組み立てが堅実で見応えがある。

 ただ結果として、従来の『オールスターズ』と比べ、確実に初期のプリキュアたちがわりを食うこととなった。従来も、作を追うごとに初期のプリキュアはどんどん脇に追いやられている感は否めなかったが、今回ははっきり言って台詞もない。上のキャストを見ても解るかと思うが、『プリキュア5』までの面々は収録にも招かれていない様子だ。

 しかし注意して欲しいのは、これは決して初期のメンバーを疎かにした結果ではない。むしろ、このシリーズがあくまで年少の子供をメインのターゲットとしていることに誠実であろうとした結果である、と見るべきだ。事実、最も優先されているのは現在テレビ放映中で最も親しみのあるメンバーたち、続いて2月まで放送されていた『スイートプリキュア♪』の4人、それから『ハートキャッチ〜』、『フレッシュ〜』と、放送されていた時期の近いものをなるべく大きく採りあげようとしているのが窺える。それも当然で、これ以前のシリーズになると、下手をすると生まれていない子供もあるはずで、なるべく馴染みのあるものを中心に扱う、というのは正しい選択であると思う。

 だからと言ってまったく採り上げていないわけでもなければ、昔から観ているような、本来の狙いからすれば特殊な観客も疎かにしていないのがこのシリーズの美点だ。台詞はないとは言い条、オープニングではきちんと無印からスプラッシュ・スター、プリキュア5までの面々の活躍をきちんと絵で見せているし、当然クライマックスでも非常に“らしい”登場をする――観ながら個人的には「召喚獣みたいだ」と思ったが、それもまた一興である。そして、よく見ると群衆のなかに、見覚えのあるキャラクターが無数にちりばめられている。『ハートキャッチ〜』の悪役3人衆が立ち話をしていたり、逃げる人々のなかに『フレッシュ〜』のラブのお母さんが紛れ込んでいたり、ひとによってはそっちに気を取られてしまいそうなくらいに大勢いる。こういう楽しみ方は、何作も追っているようなひとにしか出来ない。そういう意味で、『オールスターズ』としての面目は充分すぎるほど保っている。

 しかし何よりも、主人公をオリジナルのキャラクターにしていながら、主題や精神性はきちんとこれまでのシリーズで描かれたものを敷衍していることが見事だ。あゆみと、『スマイル〜』のみゆきを筆頭とするプリキュアたちとの交流だけでなく、家族や引っ越してきた街に対する想い、そして“フーちゃん”との関係性を巡る台詞ややり取りの随所に、従来のシリーズに籠められたメッセージが反復されている。そうした要素が、上の写真にあるポスターに記された惹句と繋がっていくカタルシスがある。惜しむらくは、そうして折角登場したオリジナル・キャラクターの活躍が最後の最後でいまひとつ振り切れていないことだが、これは立ち位置の都合からもやむを得ないところだろう。少なくとも、主題を透徹させる、という意味ではまったく揺るぎのない、堂々たる『プリキュア』作品になっているのは確かだ。

 気になるのは、そうしてストーリーを優先させたことで、前の『オールスターズ』作品群と比べて中盤までの盛り上がりがもうひとつに感じられることと、クライマックスのヴォリューム感が乏しくなり、果たして本来の対象年齢層が本当に心底愉しめるかどうか、だ。前作と比べてのこうした変化は明らかに試行錯誤、弛まぬ研鑽の証だが、そういう理由で評価する、なんてことをしてくれないのがこの作品本来の観客層であるところがちょっと悩ましい。

 とはいえ、とりあえず大人目線で鑑賞する限りは、シリーズの良さも主題も踏襲したうえで新しい領域へと進もうとする、意欲的な秀作であることは断言できる――あまりに上出来なので、恐らく来年も製作されるだろうが、ここからどういう道があるのかが気懸かりなところである。実は既にそうなりかかっているのだが、一歩間違えると、オリジナル・シリーズとは無縁の『オールスターズ』世界が構築されてしまって、オリジナル・シリーズと乖離してしまう危険があるのだが……いやまあ、この時点でそこまで心配するのはうがち過ぎか。



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