『WHO AM I ? フー・アム・アイ?』

WHO AM I? フー・アム・アイ? [DVD]

原題:“我是誰 Who am I ?” / 監督:ジャッキー・チェン、ベニー・チャン / 脚本:ジャッキー・チェン、スーザン・チャン、リー・レイノルズ / 製作:レナード・ホー / 製作総指揮:バービー・タン / 撮影監督:プーン・ハンサン / 美術:オリヴァー・ウォン / 編集:チョン・イウチョン、ヤウ・チーワイ / 音楽:ネイサン・ワン / スタント・コーディネーター&主題歌:ジャッキー・チェン / 出演:ジャッキー・チェン山本未來ミシェール・フェレ、ロン・スマーチャック、エド・ネルソン、ケイン・コスギ / 配給:松竹 / 映像ソフト発売元:Warner Home Video(鑑賞したものはPioneer LDCよりリリース)

1999年香港作品 / 上映時間:2時間 / 日本語字幕:岡田壯平

1999年10月22日日本公開

2011年5月2日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon]

DVD Videoにて初見(2012/03/06)



[粗筋]

 南アフリカで、驚くべき隕石が発見された。僅かな刺激で膨大なエネルギーを放出するのである。

 1996年、この隕石の研究をしていた科学者3人が何者かに拉致され、現地に派遣されていた特殊工作員も姿を消す。どうやら隕石搬送時の情報が外部に漏れていたと見られるが、首謀者は定かではなかった。

 国際政治の舞台で動揺が拡がるなか、アフリカのとある部族のテントで、ひとりの男(ジャッキー・チェン)が目を醒ます。ジャングルの樹の下で倒れていたところを、現地人たちに救出された男は、だが一切の記憶を失っていた。

 思わず口走った言葉“Who am I ?”が名前だと勘違いされ、その名で呼ばれるようになった男は、元気を取り戻したあと、己の素性を確かめるべく、彼が発見された場所へと赴く。そこには墜落したヘリコプターや、宙吊りで放置された屍体が転がっていた。断片的な記憶が蘇り、どうやら自分が何かの特殊工作に携わっていたことだけは漠然と思い出すが、依然として完全ではない。

 折しもその近くでラリーが繰り広げられており、ヘビに噛まれて立ち往生していた日本人兄妹と遭遇した男は、彼らを救出し、ともに文明の地へと舞い戻った。的確な応急処置と優れた運転技術で、男は一躍ヒーローとなるが、新聞の一面を飾った男の顔は、ある人物たちを激しく動揺させた……



[感想]

 長年に亘って第一戦で活躍している、とは言い条、簡単にそれが実践できないのは、当のジャッキー・チェン自身が誰よりも痛感していたはずだ。ジャッキー・チェンらしさを維持しながら、新しい興奮を作りだすことに終始腐心していることは、作品を順に手繰っていけばよく解る。

 1995年、3度目となるハリウッド挑戦を『レッド・ブロンクス』で遂に成功させたジャッキーだが、同じところに留まっていては成功を取り逃がすことはよく承知していたのだろう。それから3年を経て製作、1999年に発表された本篇は、全体像を見ればジャッキーらしさが横溢しているが、しかし細かなところに新しい工夫が見受けられる。

 警官や武術の達人には頻繁に扮していても、意外と見当たらないのが特殊工作員、いわゆるスパイに扮した作品だった。この作品で初めてその未知の領域に踏み込んでいるが、しかし単純にジェームズ・ボンドを模倣するのではなく、謀略に巻き込まれた結果、記憶を失った男、という仕掛けを凝らしたことで、スパイ物であってスパイ物とは異なる、そしてジャッキーらしい味付けの可能な素材に変えてしまった。

 プロローグこそ壮絶な謀略戦を予想させる話運びだが、記憶を失ったあとの展開はまさにジャッキーの真骨頂と呼ぶべきものだろう。肉体を駆使したユーモアに、建物や地形を活かしたアクション。間もなく21世紀になろうとしている時期の作品であるが、いい意味で最盛期の魅力を取り込んでおり、活き活きとしながらも枯れた味わいがある。特にクライマックス、オランダのビルを舞台に立体的に繰り広げられる駆け引きは圧巻だ。

 そして、往年の香港映画によくあったような、映像のインパクトを重視し勢いに任せて撮影するあまり、ストーリー自体が破綻する、という事態に本篇は陥っていない。果たしてどの程度、予め用意したシナリオに沿って撮っていたのかは解らないが、本篇は記憶を失った工作員と、彼に消えて欲しい首謀者、そして無関係、或いは関係する別の勢力が入り乱れ、先読み困難で緊迫感を伴ったストーリー展開は魅力的だ。

 観ていて素直に楽しめ、終始快いのは、初期ならではの味わいを丁寧なプロットに乗せているお陰もあるが、それ以上に、こういう非情な計略を題材としているにも拘わらず、ジャッキーが終始“不殺”を貫いていることにあるように思う。人物設定や背景を変えながらも、自身の魅力の源と、それを支える信念は決して狂わせない。その精神が完成度に結びついたからこそ、本篇はファンのあいだで高く評価されているのだろう。



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