『ブラック・サンデー』

ブラック・サンデー [DVD]

原題:“Black Sunday” / 原作:トマス・ハリス / 監督:ジョン・フランケンハイマー / 脚本:アーネスト・レーマン、ケネス・ロス、アイヴァン・モファット / 製作:ロバート・エヴァンス / 製作総指揮:ロバート・L・ローゼン / 撮影監督:ジョン・A・アロンゾ / 美術:ウォルター・H・タイラー / 編集:トム・ロルフ / キャスティング:リン・スタルマスター / 音楽:ジョン・ウィリアムズ / 出演:ロバート・ショウブルース・ダーンマルト・ケラー、フリッツ・ウィーヴァー、スティーヴン・キーツ、ベキム・フェーミュ、マイケル・V・ガッツォ、ウィリアム・ダニエルズ、クリスティ・マクニコル、ウォルター・ゴテル、クライド草津 / 映像ソフト発売元:Paramount Japan

1977年アメリカ作品 / 上映時間:2時間23分 / 日本語字幕:高瀬鎮夫

日本劇場未公開

2007年4月27日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon]

第2回午前十時の映画祭(2011/02/05〜2012/01/20開催)《Series2 青の50本》上映作品

TOHOシネマズ六本木ヒルズにて初見(2012/01/11)



[粗筋]

 1970年代、ベイルート。ここに拠点を構えるテロ組織“黒い九月”を、イスラエルの対テロ特殊部隊が急襲した。不意をつかれた格好のメンバーたちはことごとく殺害され、建物も爆破されるが、その中を辛くもふたりのメンバーが脱出に成功する。

 特殊部隊の指揮を執っていたカバロフ大佐(ロバート・ショウ)は、爆破直前に発見したテープを上層部に提出した。そこに記録されていたのは、いずれ実行されるはずだったテロの犯行声明であった。予告の文言によれば、犯行は年明け早々、極めて大規模な被害を齎すことを想定しているらしい。カバロフ大佐と同僚のモシェフスキー(スティーヴン・キーツ)は、犯行予定地と考えられるアメリカ・マイアミに飛ぶ。

 同じ頃、“黒い九月”の生き残りであり、今回のテロ計画を主導するダリア・イヤッド(マルト・ケラー)もまた、マイアミにいた。“黒い九月”はもとアメリカ軍人で、ベトナム戦争で軍功を挙げたが捕虜となったのちの扱いに憤慨し、アメリカへの復讐を企てていたマイケル・ランダー(ブルース・ダーン)のもとに身を寄せ、彼と共に計画の準備を進める。アジトは破壊されたが、既に資材の手配は済んでおり、間もなく無数の聖母像に偽装されたプラスチック爆弾が港に届く手筈になっていた。

 入港した日本国籍の船から何らかの荷物を引き取り、違法な速度で逃げていった小型船がある、という情報を得たカバロフ大佐らは、現地の捜査員と共に船長の事情聴取に赴く。だが、彼らの動向を察した“黒い九月”が、既に罠を仕掛けていた――!



[感想]

 本篇、実はこの“第二回午前十時の映画祭”での上映が、日本では初めての全国公開である。製作された直後に日本での公開が決まっていたが、脅迫があったために中止されたのだという。

 そういう経緯を聞くと、どれほど問題のあった内容なのか、何が人を刺激したのか、という点に興味が湧くのだが――どこが引っかかったのかよく解らない、というのが正直なところだった。

 ただ、いわゆるアクション映画として、当時はいささか風変わりであり、尖った作品と捉えられたのではないか、というふうには思う。

 主人公はいわゆるスパイではないが、そういう仕事に就いていたことを想像させるイスラエルの捜査員。もうひとり、ほぼ視点人物同様に活躍するのが、テロリスト側の実行犯。FBIも登場するが、補助的な役回りで決して中心人物とはならない。アメリカ産であるのに、アメリカ人が決して重要視されないアクション映画、というのは、昨今であればともかく、1970年代ではまだまだ珍しかったはずだ。

 クライマックスまでの足場固めのリアリティも、制作時期を思うとちょっと驚きだ。冒頭から繰り広げられる壮絶な戦い、数を減らしながらも、既に準備が進行していたからこそ計画を続行する、というテロリスト側の行動も、悪役だから、という強引さはない。テロリストの協力者に、ベトナム戦争を経て政府に怨みを抱いたもとアメリカ軍人、という人物を引っ張り出したあたりも巧妙だ。疑いを持たれないために更生センターに赴き、飛行機で人里離れた場所まで向かい実験を行う。その緻密さが、過程自体は決して派手ではないのに、絶えず観る側を惹きつける。実は鑑賞当日、朝早くに目醒めてしまい眠気が強かったのだが、最後まで耐えられたのは圧倒的な面白さ故だ。

 そして、クライマックスに辿り着くと、一気に目が冴えてしまう。テロリスト側にもトラブルが発生し、その困難を乗り越えるための行動がそのまま、守る側のタイムリミットとして観客に意識され、否応なく興奮を煽られる。キーヴィジュアルにも用いられた、飛行船を軸とするやり取りの緊迫感、迫力は逸品だ。

 何だかんだ言ってもまだまだ視覚効果の技術は発展途上にあり、全体に合成は甘いし、今ならばもっと迫力のある映像が作り出せそうな場面であからさまな誤魔化しを用いている傾向もある。しかし、観ていてそんなことは大して気にならない。終始パワフルな物語と描写に惹きつけられっぱなしの、傑出したサスペンス・アクションである。そのリアリティ、どこかドキュメンタリーめいた語り口は、21世紀のアクション映画の礎を築いた“ジェイソン・ボーン”シリーズの源流とさえ言えるかも知れない。



関連作品:

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