『センチュリオン』

センチュリオン [DVD]

原題:“Centurion” / 監督&脚本:ニール・マーシャル / 製作:クリスチャン・コルソン、ロバート・ジョーンズ / 製作総指揮:ポール・スミス、フランソワ・イヴェルネル、キャメロン・マクラッケン / 撮影監督:サム・マッカーディ,BSC / プロダクション・デザイナー:サイモン・ボウルズ / 編集:クリス・ギル / 衣装:キース・マッデン / 特殊メイク効果デザイン:ポール・ハイエット / キャスティング:デビー・マクウィリアムズ / 音楽:アイラン・エシュケリ / 出演:マイケル・ファスベンダードミニク・ウェストオルガ・キュリレンコ、ノエル・クラーク、リーアム・カニンガムデヴィッド・モリッシーリズ・アーメッド、JJ・フェイルド、ディミトリー・レオニダス、イモージェン・プーツ、ウルリク・トムセン / セラドール・フィルムズ製作 / 映像ソフト発売元:Culture Publishers

2010年イギリス、フランス合作 / 上映時間:1時間34分 / 日本語字幕:伊藤幸子

日本劇場未公開

2011年1月28日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon]

DVD Videoにて初見(2011/12/08)



[粗筋]

 2世紀、神聖ローマ帝国ブリテン東北部への侵攻でピクト人の激しい抵抗に遭い、20年近く膠着状態に陥っていた。皇帝はこの状況を打破すべく、ヨークに駐屯していたウィリルス将軍(ドミニク・ウェスト)率いる第9軍団に進撃を命じる。

 一方、最北部インチトゥテイルに設けられていた砦はピクト人の王ゴーラコン(ウルリク・トムセン)たちの奇襲により壊滅、ただひとり、ピクト人たちの言葉を解する百人隊長(センチュリオン)クイントゥス・ディアス(マイケル・ファスベンダー)だけがその利用価値を認められ、捕虜として捕えられていた。だが彼はどうにか隙を見出して脱出、進軍していた第9軍団の道案内役であった、口の利けない女のピクト人・エテイン(オルガ・キュリレンコ)に発見され、辛うじて救い出される。

 クイントゥスはそのまま第9軍団に合流し、ピクト人討伐に赴くが、しかし霧深い森に入ったところで奇襲を受けてしまう。手引きしたのは、エテイン――かつてローマ人に家族を殺され、自らも恥辱を受けたエテインは、のちにゴーラコンに引き取られ、優れたチェイサーとして育てられた上でローマ帝国に送りこまれたのだ。

 ウィリルス将軍はゴーラコンに捕らえられ、第9軍団はクイントゥス・ディアスとわずか6人だけを残して壊滅してしまう。クイントゥスは生き残りを諭し、将軍の救出に赴くが、あと少しのところで勘づかれた。将軍の「生き残った兵士たちを故郷に帰してくれ」という頼みを聞き入れたクイントゥスは、将軍に代わって兵たちの先頭に立ち、本軍との合流を目指す。

 だが、敵は地の利に長けている上、優れた追跡者エテインがいる。極寒のなか、休むことも許されない逃避行は、必然的に第9軍団の生き残りたちを消耗させた……



[感想]

  幻想ホラーをベースにしたアクション『ドッグ・ソルジャー』、地底に潜むものとの戦い『ディセント』、爆発感染・隔離の末に生まれたディストピアでの死闘を描く『ドゥームズデイ』の次がローマ帝国遠征の謎を題材にした本篇、と書くとだいぶ路線を変えたように聞こえそうだが、本篇のテイストはニール・マーシャルの旧作とほとんど変化はない。壮絶なアクション、容赦のない残酷描写、そして虚無的な終幕。

 違うのは、基本的に架空のモチーフを土台にしていた旧作に対し、本篇がローマ帝国から遠征に出たにも拘わらず忽然と姿を消した第9軍団、という歴史上実際に残っている謎を題材としていることのみ、と言っていい。だが、だからこそ本篇は少々、不幸な立ち位置にあるのだろう。

 歴史について詳しくないので、どの程度本篇が史実を踏襲しているのか判断はしづらいが、恐らく本篇の描写は歴史ドラマを愛好する人には引っかかる点が多いのではなかろうか。どちらかと言えば戦闘シーンはマーシャル監督の旧作のスタイルを踏襲しており、そのために敢えて歴史に対する考証を意識的に外しているようにも感じる――DVDに収録された制作過程の映像を見ると、そうとうに予算が限られていたようなので、それ故の制約もあったのかも知れない。歴史からその存在を抹消された理由付けは、少なくとも歴史について無知な私の目からはある程度の説得力があったが、果たして歴史をよく知る人にとってはどうなのか。

 反面、歴史をよく知らず、しかしニール・マーシャル監督の作風も知らず、エンタテインメントとして本篇に触れた場合も、恐らく微妙な印象を受けるのではなかろうか。戦闘場面での流血の激しさのわりに爽快感が乏しく、結末も虚無的でありながら、中途半端に綺麗にまとまってしまった感がある。

 結果として、歴史ドラマかB級アクションかのいずれかを期待していた人にとっては不満の残る出来だった、と言わざるを得ない。どうせジャンルを歴史ドラマにするのなら、何処かで大胆な変化を採り入れるべきだったのだろう。

 ただ、ニール・マーシャル監督の持ち味をホラーテイストでも、アクションの爽快感でもなく、その容赦のない流血描写、苦い終幕にこそある、と捉えていた人ならば、充分に満足のいく仕上がりである。戦場で繰り広げられる、血飛沫の舞う壮絶な殺し合い。ピクト人の言葉を解することで生き延びる主人公や、エテインの復讐に燃やす執念、といったモチーフの見事な噛み合わせ。あの、あまりにも理不尽な終盤も、しかしそこまでの道程を計算したうえで描写が積み重ねられているからこそその虚しさが増すのであり、最後に主人公クイントゥスが取る行動も理解が出来る。また、随所に組み込まれるクイントゥスによるモノローグも、考え抜かれていて秀逸だ。

 ヴァイオレンス映画として捉えた場合に少々残念なのは、クライマックスの戦闘がいささか迫力不足であることだが、これはこの時点で敵味方共に生き残りが少なかったことを思うとやむを得ない部分でもあり、この期に及んでまだ生きるために戦いを繰り返していることが、独特の情感を醸していることも事実だ。充分ではないにせよ、きっちりと主題は貫いている。

 それでもなお、どうせ歴史の空白を埋める物語として構想するなら歴史ドラマのファンを、ニール・マーシャル監督らしいヴァイオレンスを維持するならB級ドラマのファンを、いずれも納得させるものにして欲しかった、という嫌味は拭えない。だが少なくとも、常に異なるモチーフに挑み続ける監督の意欲、そして作家性の強さはきちんと証明している。



関連作品:

ドッグ・ソルジャー

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X-MEN:ファースト・ジェネレーション

007/慰めの報酬

300<スリー・ハンドレッド>

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