『スイートプリキュア♪ とりもどせ!心がつなぐ奇跡のメロディ♪』

『スイートプリキュア♪ とりもどせ!心がつなぐ奇跡のメロディ♪』

原作:東堂いづみ / 監督:池田洋子 / 脚本:大野敏哉 / キャラクター・デザイン&作画監督:高橋晃 / 美術監督:渡辺佳人 / 美術設定:増田竜太郎 / 音楽:高梨康治 / オープニング曲:工藤真由『ラ♪ラ♪ラ♪スイートプリキュア♪〜∞UNLIMITED ver.∞〜』 / エンディング曲:池田彩『♯キボウレインボウ♯』 / 出演:小清水亜美折笠富美子豊口めぐみ大久保瑠美三石琴乃工藤真由日高のり子小林由美子堀内賢雄園部啓一南央美玄田哲章真殿光昭遠近孝一金丸淳一 / 配給:東映

2011年日本作品 / 上映時間:1時間12分

2011年10月29日日本公開

公式サイト : http://www.precure-movie.com/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2011/11/08)



[粗筋]

 4人目のプリキュアキュアミューズの正体は、メイジャーランドのお姫様という身分を隠して人間界にいた少女・調辺アコ(大久保瑠美)だった。最大の目的であった、父メフィスト(堀内賢雄)を目醒めさせることに成功した彼女は、間もなく故郷メイジャーランドへ帰るという。キュアメロディこと北条響(小清水亜美)、キュアリズムこと南野奏(折笠富美子)、もとマイナーランドの歌姫セイレーン、いまはキュアビートこと黒川エレン(豊口めぐみ)は無論、奏の弟で、ひとりぼっちだったアコをずっと気遣っていた奏太(小林由美子)も寂しさは隠せない。

 だがそんな矢先、突如として世界から音楽が消えた。どうやらメイジャーランドで何らかの異変が起き、その影響を受けているらしい。響たちはアコとメフィストの親子と共に、音楽を取り戻すためにメイジャーランドへと赴く。

 アコたちの故郷は、人間界よりも酷いことになっていた。すべての人々がその場に縫い止められたような状態になり、音の出ない楽器を無感動に奏で続けている。

 無事に動けたのは、アコの友達・すず(南央美)ただひとりだった。だが、再会を喜ぶアコに対し、すずは怒りを顕わにする。彼女が言うには、メイジャーランドの人々をこんな状態にしたのは、アコの母親であり、メイジャーランドの女王であるアフロディテ(日障氓フり子)の仕業だ、というのだ。

 メフィストがノイズに取り憑かれているあいだもメイジャーランドを守り、人々に愛されていたアフロディテが、何故そんなことを……? 真相を確かめるために、アコとメフィストは城へ赴き、響たちはすずを追った――



[感想]

 ほぼリアルタイムでテレビシリーズを追いかけ、そのうえで鑑賞したからこそ余計に感じたが、今回の劇場版は、は実に計算され尽くしたタイミングでの登場だった。4人目のプリキュアであるキュアミューズが、当初の目的であったメフィストの解放を果たしたのが2011年10月23日放送の第36話、そしてその翌週に本篇が劇場公開となっている。30日放送の第37話では既にメフィストはメイジャーランドに戻っているので、若干会話に矛盾は生じるものの、本篇は実質的に第36.5話という位置づけとして捉えることが出来るだろう。公開初日に鑑賞した人は最高の臨場感で味わえる、見事な構成である。

 ただ、その絶妙な構成の代償として、本篇にはどうしても“テレビシリーズの1話”に過ぎない、という軽いイメージが付きまとってしまった。

 テレビシリーズから大きく逸脱しない、というのはこれまでの劇場版プリキュアでもずっと守り通してきた点だが、他方で本筋を壊さない、妨害しない程度に違った世界や別の悪役を提示して、劇場版ならではの贅沢さ、カタルシスを演出している。前作『ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?』はこの様式を極めた感があった。

 だが本篇は、独自の大きな敵が登場していたり、終盤に劇場版のお約束である特別な変身も用意されているが、そこを除くと、そのままテレビシリーズで放映してしまってもおかしくない内容となっている。構成としては絶妙ながら、しかしこれで決着ではないことが解っているだけに、どうも取って付けた感が否めない。敵の強さも被害の大きさも、過程のひとつにしか思えないので、カタルシスに乏しくなっているのだ。

 その一方で、劇場版単独の要素の組み立てがいまひとつ弱いのも気にかかる。物語の焦点には、アコと両親との絆や、今回のプリキュアの出発点である響と奏の友情が絡んでくるが、前者はその絆を感じさせる重要なモチーフがぼんやりと提示されてしまったために、終盤の見せ場が弱くなってしまっている。クライマックスの新たな変身の鍵となる響と奏のドラマも、テレビシリーズでは散々見せられたが、映画の中ではさらっとしか触れていないので、「ああ、そんなこともあったね」という雰囲気になってしまっている。それぞれは緩やかに共鳴しあい、より感動を高めることも可能な題材なのに、映画のなかにおいて巧く構成できていないので、充分な効果を発揮できずに終わっているのだ。

 結局は、テレビシリーズのなかに填め込む構成がうまくいってしまった分だけ、劇場版ならではの要素とバランスを取れなくなってしまったのだろう。劇場版プリキュアお馴染みのサービスはひととおり盛り込んでいるが、それを活かし切れていない。

 とはいえ、テレビシリーズを素直に楽しみ、それよりもハイクオリティなものを、と無理に求めなければ、充分に楽しめる出来映えだ。ドラマ作りの点でもっと工夫は出来たはず、という嫌味はあれど、テレビシリーズでキャラクターや世界観に親しんできた者には嬉しい描写が細かく詰めこまれている。人間界の習慣に馴染みがないので、世話になっている音吉さんの本を頼りにするため、しばしばとんちんかんな振る舞いをするエレンの可愛さ、超天然っぷりで結果的にトラブルメーカーにもなりムードメーカーにもなるハミィの面白さをきっちりと押さえる一方、プリキュアたちが戦うときのお約束を踏まえたくすぐりまで仕込んである。キュアメロディキュアリズムが戦うときに用いるベルティエを呼び出すとき特有の仕草を逆手に取った趣向など、笑いつつも唸らされてしまった。

 前述したとおり、劇場版としてはどうもこぢんまりとしてしまった感があるが、それは決して志が低かったから陥った結果ではなく、むしろ劇場版ならではのお約束を保持しつつ、如何に違った見せ方をするか、というチャレンジ精神の顕れと考えられる。結局は劇場版独自の要素に振り回されて、劇場版単独での構成自体が乱れてしまったのは残念だが、シリーズを長年継続し、決してその年限りの子供を相手に捉えた安易な作りをしていないのは評価できるし、この気持ちを維持できるなら、今後もこのシリーズは大人目線で愉しめる質を保つことが期待出来る。

『劇場版ハートキャッチプリキュア!』は下手をすると、テレビシリーズをさらっと眺めただけでも愉しめるぐらいハイクオリティだっただけに、比較して見劣りしてしまうのは残念だが、テレビシリーズを観てきた人なら愉しめるレベルは充分すぎるほど達成している。テレビシリーズ含め長く楽しんでいる人は、今回も安心して劇場まで足を運んでいただきたい。



 ……ただ、下手をすると本篇よりも、物語が始まる前、及びエンディング前の注意のほうが面白い、というのは何とかならんもんか。



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