『E.T. 20周年アニバーサリー特別版』

TOHOシネマズ錦糸町 オリナス、劇場前の通路に掲示された案内ポスター。(※『午前十時の映画祭10-FINAL』当時) E.T. スペシャル・エディション 【-プレミアム・ベスト・コレクション-リミテッド・エディション】 [DVD]

原題:“E.T. The Extra-Terrestrial : The 20th Anniversary” / 監督:スティーヴン・スピルバーグ / 脚本:メリッサ・マシスン / 製作:スティーヴン・スピルバーグキャスリーン・ケネディ / 撮影監督:アレン・ダヴィオー / プロダクション・デザイナー:ジェームズ・D・ビッセル / 編集:キャロル・リトルトン / キャスティング:ジェーン・フェインバーグ、マイク・フェントン、マーシ・リーロフ / 音楽:ジョン・ウィリアムズ / 出演:ディー・ウォーレスヘンリー・トーマスピーター・コヨーテロバート・マクノートンドリュー・バリモア、K・C・マーチル、ショーン・フライ、トム・ハウエル、エリカ・エレニアック / 配給:UIP Japan / 映像ソフト発売元:GENEON UNIVERSAL ENTERTAINMENT

1982年(2002年)アメリカ作品 / 上映時間:2時間 / 日本語字幕:?

1982年12月4日日本公開

2002年4月27日“20周年アニバーサリー版”日本公開

2009年10月23日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon]

第2回午前十時の映画祭(2011/02/05〜2012/01/20開催)《Series2 青の50本》上映作品

TOHOシネマズ六本木ヒルズにて初見(2011/10/18)



[粗筋]

 最近、両親が別居状態となり、母親のメアリー(ディー・ウォーレス)、兄マイケル(ロバート・マクノートン)、妹のガーティ(ドリュー・バリモア)の4人で暮らすようになったエリオット(ヘンリー・トーマス)は、ある晩、庭で奇妙な物音を聞いた。最初は見つからず、遊びに来ていたマイケルの友人たちに散々からかわれたが、夜更けにふたたび物音が鳴り響き、ふたたび探りに行くと、物置の中にいたのは、奇妙な生き物だった。

 エリオット同様に驚いたその生き物は、悲鳴を挙げて慌てて逃げてしまった。翌る朝、話をしても信じてくれない家族に苛立ちつつ、エリオットはその生き物が逃げこんだ丘の上にキャンディを撒いて、もういちど庭に呼び寄せようと試みる。

 果たせるかな、それはエリオットの想いを汲んだかのように、ふたたび庭に現れた。会話は出来ないが、どうやら高い知能を持っているらしいその生き物を、エリオットは自分の部屋に匿う。

 兄と妹の協力も仰ぎ、どうやら宇宙から来たらしいその生き物を、エリオットは守ろうと考えた――その生き物を必死に捜し求め、じわじわとエリオットたちの家に迫り来る人々がいることも気づかずに。



[感想]

 本篇のオリジナル版が劇場公開された当時、まさにこの物語が観客に想定していたであろう年齢だった私なので、さすがに観ていないはずがない。しかし、年に100本前後は普通に鑑賞しているいま言っても信じないかも知れないが、昔は映画にさして思い入れもなかったが故に、本篇についても、オモチャで遊んだ覚えこそあれ、映画そのものについての記憶は皆無に等しかった。アニバーサリー版としてある程度手が入れられていることを抜きにしても、気分はほとんど初見同然だった。

 だが、そうして至極冷静な大人の眼で鑑賞しても、この作品に隙は見いだせなかった。理想的なジュヴナイル、という他ない。

 きちんと特徴を明確にし、その随所にSFらしいモチーフを組み込んだE.T.の造形が見事であること、ストーリーが単純ながらも力強く、ストレートな感動を齎すものであること、など美点を挙げるときりがないが、実はこの作品の何よりも優れたポイントは、登場人物がみな善良であり、物語にほとんど悪意を感じさせないことだ。

 E.T.が友好的な生命体であることを知っていると、最初に気配を感じた子供たちがキッチンの刃物を手にして物置へと赴くくだりには少々ヒヤッとさせられるが、剣呑さを感じさせるのはそのぐらいしかない。思春期の少年らしく口の悪い長男マイケルさえも、E.T.のことを知ると「彼のことを守る」というエリオットをサポートして、どちらかと言えば怠惰なこの年頃としては涙ぐましい努力をする。

 基本的には血が流れそうな要素のないストーリー展開にも拘わらず、随所で緊張が漲り、冒険の要素を組み込んでいるのがまた絶妙だ。如何にして母親やほかの大人達に知らさずE.T.を匿うか、に知恵を絞り、片言ながら意志の疎通が出来るようになると、望郷の想いを強めているE.T.のために、彼を外へと連れ出す策を練る。監督であるスティーヴン・スピルバーグの製作会社アンブリンのロゴにも採用されている、自転車が空を飛ぶシーンがそうした冒険のハイライトであるのは間違いないが、そうしたワクワク感を途切れることなく観客に齎す、設定と展開の妙が素晴らしい。

 そして、そうした子供たちに対する大人にも、悪意を以て行動している者や、子供に対する気遣いのない者が皆無に近いことが、その魅力をいっそう澄み切ったものにしている。クライマックス手前の出来事は、いわゆるオカルトのなかで語られる人類の行動とは正反対だが、道義的には正しいものだし、場面としては痛切だが決して残酷さは感じさせない。特に母親メアリーの行動は、人の親としてとても自然だ。E.T.の存在を知らないあいだはしばしば間の抜けた振る舞いを見せるが、E.T.を初めて目の当たりにしたシーンでは、まず子供の安全を最優先で気遣い、そのあとで子供たちの心境を慮って行動する。

 今回私が鑑賞した20周年アニバーサリー版では、初公開当初にはなかった映像が組み込まれ、E.T.の描写をCG技術でいっそう洗練させているそうだが、一方でオリジナルから排除された描写もあるらしい。そんななかで、クライマックスにE.T.を連れて逃げまわる子供たちの前に立ち塞がった警察隊がショットガンを構えるくだりがあったそうだ。そのためにエリオットはきつく眼を閉じ、あの爽快な場面に繋がっているので、あの描写をカットするのは不自然ではないか――という意見を目にした。本当に昔の記憶がほとんど残っていない私はその描写自体記憶していないのだが、上記のような観点からすると、カットしたのは当然と思えてならない。そもそも、それ以前のストーリー展開からすれば、子供たちを追うために出動した警官が無理に銃を構える必要はなく、むしろ作品の主題にとってその描写のほうが邪魔だろう。状況を思うと、エリオットの眼の閉じ方が必死すぎる印象になってしまったことは否めないが、まるっきり不自然というわけでもない。

 初公開時のヴァージョンを何度も鑑賞し、思い出をたくさん抱いている人にとっては、E.T.の動作が妙に滑らかすぎるのも気になるところのようだが、しかし、私のように思い入れのほとんどなかった眼には、この20周年アニバーサリー版にほとんど隙は窺えない。上に書いたような情報も併せて考えると、オリジナルにあった欠点をほぼ完璧に補い、これから作品に触れる人に、製作者たちが意図した通りの内容を届けられるものに仕上がっている。

 私が本篇を鑑賞した2011年は、スピルバーグ自身が製作に携わった『SUPER8/スーパーエイト』や、実に憎い立ち位置で出演までしてしまっている『宇宙人ポール』が公開されている。20周年版の発表から更に10年近く経た今も、こうしたフォロワーを生み出していることは驚愕に値する――そしてたぶん今後も、宇宙人を題材にしたジュヴナイルの最高傑作として、長く愛され続けるだろう。それを疑わせない、優しい魅力に満ちあふれた逸品である。





関連作品:

宇宙戦争

激突!

SUPER8/スーパーエイト

トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン

宇宙人ポール