『ストリート・オブ・ファイヤー』

『ストリート・オブ・ファイヤー』 ストリート・オブ・ファイヤー [DVD]

原題:“Streets of Fire” / 監督:ウォルター・ヒル / 脚本:ウォルター・ヒル、ラリー・グロス / 製作:ローレンス・ゴードンジョエル・シルヴァー / 製作総指揮:ジーン・レヴィ / 撮影監督:アンドリュー・ラズロ / 美術:ジョン・ヴァロン / 編集:フリーマン・デイヴィス、マイケル・リップス / 衣裳デザイン:マリリン・ヴァンス / 振付:ジェフリー・ホーナディ / 音楽:ライ・クーダー / 出演:マイケル・パレダイアン・レインウィレム・デフォー、リック・モラニス、エイミー・マディガン、リック・ロソヴィッチ、ビル・パクストン、デボラ・ヴァン・フォルケンバーグ、リチャード・ローソン、リー・ヴィング、ミケルティ・ウィリアムソン、グランド・L・ブッシュ、ロバート・タウンゼント、ストーニー・ジャクソン、エリザベス・デイリー / 配給:パラマウント×CIC / 映像ソフト発売元:GENEON UNIVERSAL ENTERTAINMENT

1984アメリカ作品 / 上映時間:1時間34分 / 日本語字幕:戸田奈津子

1984年8月11日日本公開

2011年9月22日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon]

第2回午前十時の映画祭(2011/02/05〜2012/01/20開催)《Series1 赤の50本》上映作品

TOHOシネマズみゆき座にて初見(2011/09/29)



[粗筋]

 高架線が延び、無数の路地裏で構成される労働階級の街リッチモンドに、エレン・エイム(ダイアン・レイン)が帰ってきた。ロック・シンガーとして大成した彼女は、故郷に錦を飾るべく、チャリティ・コンサートを開催したのである。

 だが、そこに現れたオートバイの一団――ボンバーズが、一帯の商店を荒らし回った挙句に、エレンを拉致してしまった。その場に居合わせたリーヴァ(デボラ・ヴァン・フォルケンバーグ)は、弟のトム・コーディ(マイケル・パレ)に助けを求める手紙を出す。

 トムはかつて、エレンの恋人だった。しかし、彼女が成功するのを境に疎遠になり、いまエレンはマネージャーのビリー・フィッシュ(リック・モラニス)と同棲している。トムは姉の呼びかけに応えて帰郷したが、別れた恋人のために無償で働くことはしない、とビリーに報酬を要求する。ビリーはトムの態度に反感を覚えながらも、その要求を呑んだ。

 友人の働くバーで偶然に知り合った、軍隊上がりの女・マッコイ(エイミー・マディガン)を相棒に、トムはボンバーズが根城とするクラブに乗り込んでいく……



[感想]

 労働者階級が集まり、若者たちで結成されたギャングが幅を利かせる街。舞台の雰囲気といい、登場人物たちの設定といい、心なしか『ウエスト・サイド物語』を彷彿とさせる作品だが、しかし全体の印象はかなり異なる。

ウエスト・サイド物語』は『ロミオとジュリエット』を1950年代頃のアメリカを舞台に、ミュージカルとして翻案したという性質が強く、そのトーンはロマンスが貴重となっている。だが本篇は、確かにロマンスとしての側面もあるが、むしろ西部劇のような、アウトローの英雄を中心としたエンタテインメントの色調が濃い。

 実際、テーマ性や奥行きのあるエピソード、といったものは本篇にはあまり見受けられない。ボンバーズのリーダーであるレイヴン(ウィレム・デフォー)がエレンを攫ったのはごく単純な欲望のためでしかないし、トムの行動原理にもこれといった深いものはない。人によってはこの話を、ごく無軌道で思慮の乏しい作品と受け取るだろう。――まあ、あながち間違ってはいないのだが。

 この作品の魅力は、描写の深みよりも、“カッコいい青春群像”というムードを徹底して構築したことにある。見るからにうらぶれた街に戻ってきたスターが攫われ、そんな彼女とかつて愛を交わした男が、金にしか関心がない、という態度を装いながら救出に赴く。男に手を貸すのは、帰郷したときに偶然出逢った、男勝りの女軍人、それにスターの現在の恋人であるマネージャーを加えた面々で、敵の巣窟であるクラブへと乗り込んでいく。この、一種神話を戯画化したような構図に、敢えてリアリティなどを過剰に施すことなく、スタイルを重視して描き出す。過酷な状況に果敢に立ち向かっていく姿を描き出すような、骨のあるものではないが、最高に洗練された上澄みを巧みにすくった、格好良さのエッセンスが本篇には満ちている。

 こういう枠組の中にあって、完成されたキャラクターを配しているのも巧みだ。ひたすらクールに振る舞うことで滾る情熱を感じさせる主人公に、ショウビズの世界で成功しながらも一種の純真さを留めたヒロイン。終始身も蓋もないことを言って憎まれ役になりながらも、いい意味での笑いを提供し最後には小気味良く締めくくってくれるマネージャーや、敵役のオーソドックスぶりもいい――こと後者は、現在に至っても名バイプレイヤーとして存在感を発揮するウィレム・デフォーの、非常に脂っ気の多い姿を目の当たりに出来るのが貴重だ。通常なら男が担うべき役割に敢えて据えられたマッコイの存在感も、いいスパイスになっている。

 何より、“全篇がPV”とさえ言われるほどの、音楽と見事に調和した映像のスタイリッシュさが絶品だ。ある意味形に嵌ったストーリーが、余計なことを考えさせることなく、その洗練された空間に観客を導いていく。ライヴ感も漂わせた音響の完成度も高く、整った設備で鑑賞すれば、そのムードにどっぷりと浸れるはずだ。

 重厚感に満ちたドラマ、青春映画特有の切なさを存分に味わいたいなら、本篇は決して満足のいく代物ではない。しかし、理屈抜きの爽快感を求めているなら、これは稀に見る逸品だ。ファッションも音楽も、2010年代のいまに鑑賞するとさすがに古びた印象はあるが、フィルムに焼き付けられた興奮、爽快感は決して色褪せていない。

 たぶん、自宅にて小さなモニター、限られた音響設備で鑑賞するより、映画館で観た方がこの魅力は実感できる。機会があるなら、劇場で体感することをお薦めしたい。



関連作品:

ウエスト・サイド物語

エイリアンVS.プレデター

AVP2 エイリアンズVS.プレデター

デイブレイカー

運命の女

フィールド・オブ・ドリームス