『プロジェクトA2/史上最大の標的』

『プロジェクトA2/史上最大の標的』 プロジェクトA2/史上最大の標的 [Blu-ray]

原題:“A計劃:續集” / 英題:“Project A II” / 監督、原案、武術指導&主演:ジャッキー・チェン / 脚本&製作:エドワード・タン / 製作総指揮:レイモンド・チョウ、レナード・ホー / 撮影監督:チャン・ユイジョウ / 美術:エディ・マー / 編集:ピーター・チャン / 衣装:リサ・ン / 音楽:マイケル・ライ / 出演:マギー・チャン、ロザムンド・クワン、リッキー・ホイ、チャーリー・チャン、デヴィッド・ラム、カリーナ・ラウ、トン・ピョウ、マース、ラム・ウェイ / 配給:東宝東和 / 映像ソフト発売元:Twin

1987年香港作品 / 上映時間:1時間45分 / 日本語字幕:?

1987年7月25日日本公開

2011年11月11日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray DiscamazonBlu-ray Box Set:amazon]

大成龍祭2011上映作品

TOHOシネマズ六本木ヒルズにて初見(2011/09/18)



[粗筋]

 英国の統治下に置かれてしばらく経った香港。

 海上警察の“プロジェクトA”の成功で海賊たちはほぼ一掃された。だが、僅かな残党たちは、プロジェクトを成功に導いたドラゴン(ジャッキー・チェン)に対して復讐を誓う。船を捨て、彼らは香港へと潜入を試みた。

 その頃香港では、ひとつの醜聞が新聞の紙面を湧かせていた。有能で知られ、3つの地区の警察署を束ねていたチン署長(デヴィッド・ラム)が功名心に焦るあまり、事件をでっち上げたと報じられたのである。

 警察官による汚職に頭を悩ませていた香港総督は、チン署長の権限剥奪をすべきと判断するが、一時にすべてを奪うと現場が混乱する。そこで、チン署長の管轄の1つであるサイワンを、ひとまず他の者の手に委ねることにした。推薦されたのは、“プロジェクトA”での多大な貢献が認められた、ドラゴンである。

 さっそく、3人の同僚を伴って赴任したドラゴンだったが、サイワンの治安は最悪の状態だった。賄賂が横行し、本来取り締まるべき犯罪もことごとく見過ごされている。汚職まみれの警察に、治安を維持できるはずもなかった。

 ドラゴンは一帯を束ねる大物タイガーを摘発することで、チン署長以下の軛から署員たちを解き放つことを計画するが、悪事に染まりきった警察官たちには職務を果たす意欲もなく、やむなくドラゴンは、署員で唯一汚職に荷担していなかったホーを含めた僅か5人でタイガーを急襲する――



[感想]

 ジャッキー・チェンの人気を不動のものにしたヒット作『プロジェクトA』の続篇である。

 一般的に、人気作の続篇というのはあまり評判が良くない。前作の人気を当てこみ、大量の資金を投じスケールを拡大して制作するが、散漫になったり1作目の覇気を失って精彩を欠いたものになりがちだ。本篇も、世評は概ね“前作を超えていない”という形で固まっている。

 だが私個人としては、それほど不出来な作品ではないと感じる。見方を変えれば、ジャッキー・チェンの成長を窺い知ることの出来る、格好の1篇と言えるのではないか。

 確かに、アクションのインパクトは前作に及ばない。狭い道を自転車で疾駆しながらの駆け引き、そしてその挙句に時計台から落ちる、あの壮絶なスタント以上の刺激は得られないだろう。

 ただ、アクションの趣向の豊富さ、見せ方の巧さ、という点では前作を上回っている。市場や工場といった行動範囲の限られた空間でのアクションは予想外の展開で溢れているし、突出したインパクトはなくともトータルでの迫力は決して前作に劣らない。そしてそんな中に、階下から銃撃されたり、建物のあいだに渡された梯子を幾度も渡ったり、という立体的なアクションが盛り込まれ、ジャッキーらしいユニークな戦い方も組み込まれている。全般にシビアな展開を繰り返す作品だが、あのクライマックスに至って、市場に積み上げられた唐辛子を頬張り、その絞り汁をまぶした掌を相手の顔に擦りつけて目つぶしをする、などという、有効だがギャグとしか思えない技を繰り出すのは、まさにジャッキーならではだ。

 内容的にも前作より深刻な印象ながら、その振る舞いからユーモアが失われていないのも、この数作のあいだにジャッキー・チェンが映画人として成熟したことが窺える。ロー・ウェイ監督下での雌伏の時期を過ぎ、コメディ・タッチのアクション、という新境地を拓いたあとも、シリアスな骨格を大幅に省略することでしか折り合いがつけられなかった感があったが、本篇は汚職にまみれた警察組織のなかでの活動、前作で一掃された海賊につけ狙われ、他方では中国での革命を志す人々も暗躍する、など様々な思惑が入り組んでいる。もう少し整理しても良かったのでは、という印象も受けるが、しかしこれだけ事情が輻輳するなかで、カタルシスに至るポイントが最後にきっちりと設定されているのが見事だ。組織内での対抗意識を描く部分と海賊退治とで分断されているうえ、細部の強引さが目立っていた前作に比べると、語り口は格段に洗練されている。

 恐らくジャッキー自身、前作ほど強烈なインパクトを与えられるアクションを作りだすのは難しい、と承知していただろう。だが、前作が世界的にヒットしているだけに、ファンの期待が高いことも充分に理解していた。だからこそ、前作の世界観をきちんと踏襲することと、質と量のバランスを保ったアクションで満足させることを狙ったのではないか。それでもなお前作以上を求める観客を納得させるまでには至っていなかったわけだが、しかし純粋にアクションや物語のクオリティについて検証すれば、決して前作に劣っていないどころか、確実に成長が窺える。

 前作まではまだ、アクション俳優が自分の目指す娯楽作品を形にすることに腐心している趣があった。しかし本篇には、自らのスタイルを確立した“映画監督”としての意識、自信が見える。単純に1本の作品として鑑賞しても、その安定感に唸らされるが、ジャッキー・チェン“監督”の作品として、彼のフィルモグラフィーを辿る上で決して無視できない作品と言えよう。



 香港映画、中国映画に詳しい方ならご存知だろうが、1990年代に入るか入らないか、という頃まで、この界隈で制作された映画は、声は基本的に声優が担当している。最近の作品でしかジャッキー・チェンを知らない状態で初期作品を鑑賞すると、容姿はともかく声が違う、しかも作品ごとに別人なので、一瞬戸惑うはずだ。本人の声が使われるのは『ポリス・ストーリー3』以降というから、実に1992年まで待たねばならなかったのである。

 ただ、そういう知識を持って鑑賞すると、本篇はエンドロールで妙な気分に陥る。すっかりお馴染みとなったNGシーンの脇で、主題歌を歌うジャッキーの姿が映っているのだ――明らかに本篇の彼とは違う声で。

 前述の通り、声が別人によって吹き替えられていたのは、香港映画全体の事情で、決してジャッキー特有の問題ではない。そうと解っていても、作中では他人の声だったのに、エンドロールの主題歌でだけ本人の声が聴ける――というのは、なかなかに奇妙な光景だと思う。何も知らないけど耳はいい、という人が観たら、「どうしてこの人はわざわざエンドロールで口パクで歌っているふりをしてるんだろう」とか思うんだろうか。



関連作品:

プロジェクトA

クレージーモンキー/笑拳

ヤング・マスター/師弟出馬

ドラゴンロード

ポリス・ストーリー/香港国際警察