『ワイルド・スピード MEGA MAX』

『ワイルド・スピード MEGA MAX』

原題:“Fast Five” / 監督:ジャスティン・リン / 脚本:クリス・モーガン / キャラクター設定:ゲイリー・スコット・トンプソン / 製作:ニール・H・モリッツ、ヴィン・ディーゼル、マイケル・フォトレル / 製作総指揮:アマンダ・ルイス、サマンサ・ヴィンセント、ジャスティン・リン / 列車強盗シーン第二班監督:アレクサンダー・ウィット / 撮影監督:スティーヴン・F・ウィンドン,ACS / プロダクション・デザイナー:ピーター・ウェナム / 編集:クリスチャン・ワグナー、ケリー・マツモト、フレッド・ラスキン / 衣装:サーニャ・ミルコヴィッチ・ヘイズ / キャスティング:デブラ・ゼイン,CSA / 音楽:ブライアン・タイラー / 出演:ヴィン・ディーゼルポール・ウォーカージョーダナ・ブリュースタードウェイン・ジョンソン、タイリース・ギブソンエルサ・パタキー、クリス・“リュダクリス”・ブリッジス、マット・シュルツ、サン・カン、ガル・ギャドット、テゴ・カルデロン、ドン・オマール、ホアキン・デ・アルメイダ / オリジナル・フィルム/ワン・レース・フィルムズ製作 / 配給:東宝東和

2011年アメリカ作品 / 上映時間:2時間11分 / 日本語字幕:岡田壯平

2011年10月1日日本公開

公式サイト : http://mega-max.jp/

TOHOシネマズ有楽座にて初見(2011/09/23) ※先行上映



[粗筋]

 有罪判決を受け、刑務所へ護送される最中のドミニク・トレット(ヴィン・ディーゼル)を救ったために、FBI捜査官であったブライアン・オコナー(ポール・ウォーカー)は一転、追われる身となってしまう。

 ドミニクの妹で、自らの恋人であるミア(ジョーダナ・ブリュースター)を伴い、ブライアンはブラジル、リオ・デ・ジャネイロに居を構えたドミニクの幼馴染みヴィンス(マット・シュルツ)のもとに潜伏した。かつて覆面捜査官だったブライアンによって郷里を追われた過去のあるヴィンスだったが、事情を理解し、金を必要としているブライアンのために、ある仕事を斡旋する。

 簡単な車両強奪、という触れ込みだったが、この仕事にはとんでもない裏があった。ブライアンたちが狙うように指示された列車に載せられた3台の車はもともと、リオを拠点とする麻薬王レイエス(ホアキン・デ・アルメイダ)の部下が所有していたもので、麻薬捜査官が証拠品として押収、搬送している最中のものだったのだ。途中から合流したドミニクの応援もあって、ブライアンとミアはどうにか窮地を脱するが、彼らに仕事を斡旋した一団は交戦の末に麻薬捜査官3名を射殺、それがブライアンたちの犯行と目されたために、彼らの立場はいっそう危ういものとなってしまう。

 彼らが強奪した車はどうやら、現金の取引を重んじるレイエスが、収益を集めるために使わせていたものだったらしい。搭載されたカーナビには、金を集めていた場所の地図がデータとして残っており、レイエスはこの記録を刻んだチップを捜査当局に渡すまいと、今回の計画を実行させたと見られた。

 ドミニクはこの窮地を逆手に取った、起死回生の策を提案した。奇しくもドミニクたちの手許に残されたカーナビには、レイエスの裏金に関する情報が詰まっている。1億ドルを下らないと思われるその金を奪い、新しい身分を手に入れて、自由を取り戻そう――

 だがその頃、ブライアンたちを逮捕するべく、アメリカから最強の捜査官がブラジルに送りこまれていた。麻薬王と捜査官、ふたつの勢力を相手取ったこの計画は、果たして成功するのだろうか……?



[感想]

 この『ワイルド・スピード』のシリーズは、カー・アクション映画の人気シリーズとして定着しているが、しかし3作目までは正直なところ迷走していた感があった。2作目は捜査官であるポール・ウォーカーだけが登場、3作目に至っては第1作のキャストがひとりも残っていない、という奇妙な体裁で、いちおう同じ世界観のなかで語られてはいるが、あまり統一感というものがなかった。

 だが、前作『ワイルド・スピードMAX』でヴィン・ディーゼルポール・ウォーカー、そしてジョーダナ・ブリュースターが復帰したことで、風向きが変わった。第1作のキャストを再結集したことで、第1作に近い面白さを取り戻したのである。それが幸いして、第1作以上のヒットを成し遂げたことを踏まえ、ふたたびオリジナルのストーリーを引き継いで製作されたのが本篇、というわけである。

 ただ、せっかくここまで作られたシリーズを、バラバラのままにしておくのは惜しまれたのだろう。どうやら本篇では、いちばん最近の話、という位置づけにある第3作に結びつけるべく、第3作に登場するハン(サン・カン)を絡めて、改めて整理し直そうと試みたようだ。

 恐らく、第1作の立役者であるヴィン・ディーゼルがプロデューサーも兼任して復帰したことが、そうしたシリーズ再構成の機運に繋がったと思われる。

 しかしその結果として本篇は、単独で鑑賞しようとすると、役割の不明確なキャラクターが多く立ち現れる、少々まとまりの悪い仕上がりになってしまったようだ。

 ちょうど粗筋で記したくだりの直後ぐらいから、現金強奪計画が本格的に始動する。ドミニクの提案のもと仲間が集められ、その中に第2作、第3作で登場したキャラクターが加わってシリーズを繋いでいく趣向だが、本篇単体で考えると、それぞれの立ち位置が明確でなくなってしまう。いちおうドミニクの話では皆、性格や得意分野を考慮して集められたように説明されているのだが、実際に計画が動き出すと、計画のどのあたりに必要と考えられていたのか解らない。いちおうはほとんどのキャラクターに活躍の場を与えているのは巧みながら、そのキャラクターである必要はあったのか、もっと人数を絞っても良かったのではないか、と思わせてしまうのが勿体ない。なまじほとんどが旧作でも顔を見せて、人物像は仕上がっているはずなだけに、それを活かし切れていないのは不手際だろう。

 そして、作中の犯行計画も、全般にちょっと強引に過ぎる。最初の乗用車強奪の計画自体も“簡単”というには無茶苦茶すぎるのだが、クライマックスでのブライアンたちの計画など、あまりに不確定要素が多すぎて、ああも綺麗に嵌るのは非現実的すぎる。そのあたりで醒めてしまうような人だと、恐らく本篇は愉しめないだろう。

 しかし、前述したようなシリーズの再構築という趣向がツボに嵌るほどこのシリーズに親しんでいる人、或いは度胆を抜くようなカー・アクションという持ち味を本篇に求めて劇場に足を運んだ人ならば、存分に楽しめるはずである。

 もう少しプロットに工夫があれば、という嫌味はあれど、どちらかと言えば失敗作のように捉えられている第2作、第3作も疎かにしないという姿勢でキャラクターを組み込んでいるのは好感が持てるし、個性が犯行計画に役だっているとは言い切れないまでも、それぞれの駆け引きでユーモアをちりばめたり、存在感を発揮させるくだりがあるのもいい。何より、メインであるブライアンとドミニク、そしてミアを中心とする関係性のなかで、きちんとドラマを醸成しているのもポイントだ。

 何より、カー・アクションの迫力という意味では、満足度の高い仕上がりを示している。計画自体は無茶苦茶だが、無茶苦茶だからこそ決して現実では拝めないシーンが無数に組み込まれている。最初の列車強盗のくだりも、およそ非現実的な趣向を用いているが、何より出色なのはやはりクライマックスだろう。予告篇にも採用された場面なので書いてしまうが、2台の車にワイヤーを繋いで巨大金庫を引っ張り、リオ・デ・ジャネイロの街を疾走するシークエンスは、ここ数年のカー・アクション映画のなかでも屈指のインパクトである。普通に考えて、思惑通りに走るはずがない、仮に走ることが出来てもまともなカー・チェイスも成り立たないほど金庫に振り回されるだろう、と思うのだが、あり得ないような趣向だからこそ痛快なのである。

 初参加となったドウェイン・ジョンソンの役回りも、物語にとっていいスパイスになっている。作中の振る舞いの意外さもさることながら、エンドロール直前に仕掛けられた伏線によって、彼の存在が今後のシリーズ展開に面白い影響を齎しそうな気配も感じさせる。

 そう、実はこの作品、たぶん間違いなく、まだ続く。その引っ張り方については、本当に大丈夫か、あとのことをよく考えてんのか、とツッコミを入れたくなる部分もなきにしもあらず、だが、その点まで含めて、シリーズをずっと継続して鑑賞してきたファンにとっては嬉しい作りとなっているのは確かだ。そして、単体で鑑賞しても、かなり行きすぎではあるが、だからこそ爽快感の著しいカー・アクション映画に仕上がっている。映画館の大スクリーンと優れた音響で鑑賞して、いちばん愉しいタイプの作品である――そうあることを念じて、きっちりと成し遂げているのだから、賞賛に値する。



関連作品:

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