『カンフー・パンダ2(3D・吹替)』

『カンフー・パンダ2(3D・吹替)』

原題:“Kung-Fu Panda 2” / 監督:ジェニファー・ユー・ネルソン / 脚本&共同製作:ジョナサン・エイベル、グレン・バーガー / 製作:メリッサ・コブ / プロダクション・デザイナー:レイモンド・ズィバック / 美術監督:ダン・K・ヘン / 主任アニメーター&武闘コレオグラファー:ロドルフ・グーノデン / 音楽:ハンス・ジマージョン・パウエル / 声の出演:ジャック・ブラックダスティン・ホフマンアンジェリーナ・ジョリージャッキー・チェンセス・ローゲンルーシー・リュー、デヴィッド・クロス、ジェームズ・ホンゲイリー・オールドマンミシェル・ヨージャン=クロード・ヴァン・ダム、ヴィクター・ガーバー、デニス・ヘイスバート、ダニー・マクブライド / 声の出演(日本語吹替版):山口達也笹野高史木村佳乃MEGUMI藤原啓治 / 配給:Paramount Japan

2011年アメリカ作品 / 上映時間:1時間30分 / 日本語字幕&吹替版翻訳:小寺陽子

2011年8月19日日本公開

公式サイト : http://www.k-panda2.jp/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2011/09/16)



[粗筋]

 突然に“龍の戦士”に選ばれ、紆余曲折はあったが無事にその大役を果たしたラーメン屋の息子ポー(ジャック・ブラック山口達也)は、今では達人たちであるマスター・ファイブにも認められ、彼らの仲間として日々、平和の谷を守るべく多忙に過ごしている。

 その日も、いつものように山賊の襲撃から守る単純な任務のはずだった。鉄器を盗んでいく狼たちは、ポーとマスター・ファイブにとってさほど手強い連中ではなかったが、狼たちの鎧に刻印された印を見たとき、ポーは身動きが出来なくなる。一瞬、彼の脳裏を、忌まわしい記憶がよぎったのだ。

 翡翠城に戻るとポーはすぐさま我が家を訪れ、父であるミスター・ピン(ジェームズ・ホン)を問い詰める。ミスター・ピンはポーが養子であることを認めた。ポーは仕入れで届けられた野菜に紛れていて、情が移ったミスター・ピンが引き取ることにしたのだという。ただ、それ以前にポーがどこから来たのか、詳しいことは解らなかった――それでもお前は私の子だ、それでいいだろう? と訴えるミスター・ピンに、ポーは素直に頷けない。

 そして大事件が起きた。かつて花火師の一族であったクジャク王によって統治されていたゴンメン市に、火薬の魅力に取り憑かれ破壊者に成り果てた一族の生き残りシェン大老(ゲイリー・オールドマン藤原啓治)が舞い戻り、カンフー評議会のマスター・サイによって守られていた孔雀城を占領してしまったのだ。シェン大老はカンフーを凌駕する兵器――大砲を開発して、周辺の住人を威嚇している。

 大砲に対する具体的な方策もないままに、シェン大老を押さえるべく派遣されたポーだったが、使命を果たそうとする彼を待ち受けていたのは、彼の“過去”そのものだった……



[感想]

 3DCGアニメーションでありながら、カンフー映画に対するリスペクトに満ちあふれた予想外の傑作に仕上がっていた『カンフー・パンダ』の続篇である。

 監督は代わったが、実は前作でも特に印象的だった冒頭部分、2Dの切り絵風の映像を軸としたパートを手懸けており、むしろこの作品の狙い、その面白さを熟知している人物である。故に本篇も前作同様、カンフー映画に対する造詣と理解が窺える内容となっている。

 ただ、若干惜しまれるのは、最初からポーが強すぎるために、このシリーズが最も強く意識していると思われるジャッキー・チェンの初期作品にあったような、経験の乏しかった者が自分に向いた技を習得し、組み立てて独自の強さを確立していく過程が失われてしまっている。こうした流れは、カンフーというものが備える精神性をいちばんシンプルに伝えてくるので、それを外したことでやや味わいが薄れてしまった感がある。

 だが、それでもカンフー映画が持つ独特の精神、雰囲気をきちんと描いていることは変わりない。序盤でシーフー老師(ダスティン・ホフマン笹野高史)が語る奥義“心の平和”が何より象徴的であろう。既に基本的な技はマスターしてしまったポーに彼が教えられることは少なく、前作と比べて出番はかなり減ってしまったが、この技の存在がポーの心にシーフー老師がいることを感じさせ、師弟の絆を観る者に伝えやすくしている。

 もっと言えば、本篇の主題である“出生の秘密”は、ジャッキー初期の出演作にあった“師弟の絆”という良心を掘り下げたものだ。見え見えの秘密は終始、笑いを演出することに用いられているが、だがシェン大老の過去との対比、そして終始繰り返される主張には、血の繋がりだけでは説明のつかない絆の優しさ、快さが表現されている。表面的なユーモアに誘導されていると、結末で見せるひと幕に意表をつかれ、目頭が熱くなってしまう人もあるはずだ。

 また本篇は前作以上に、ジャッキー作品やカンフー映画を愛好する者にとって既視感を覚える美術を築いているのも嬉しいところだ。中盤以降の舞台となるゴンメン市の街の様子など、そのまま若き日のジャッキーがうろうろしていそうで、観ているだけで愉しくなる。隠密行動の方策として、やはり往年のカンフー映画にはお馴染みのハリボテが用いられているのも心憎いところだ。

 至極ストレートに伏線を用意しているので、物語の流れは非常に読みやすいが、悪い意味での裏切りがない快さがある。だがその一方で、前述したような、ストレートに題材を扱っていると見せかけたひねりもあり、有り体の要素を堅実に描いているからこそ見応えがあり、活き活きとした仕上がりになっているのだ。

 たとえば、あのふにゃふにゃのパンダが“龍の戦士”になった経緯であるとか、ミスター・ピンのお店の現状の面白さなど、前作を観ておいた方が愉しめるのは間違いないが、本篇単独でも充分に愉しめ、意外な感動も味わえるはずの、優秀な娯楽作品である。前作のときも似たようなことを記したが、もしアニメーションだから、と高をくくっているなら、きっと損をしている。



関連作品:

カンフー・パンダ

カンニング・モンキー/天中拳

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ヤング・マスター/師弟出馬

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地争覇