『ゲット・ラウド ジ・エッジ、ジミー・ペイジ、ジャック・ホワイト×ライフ×ギター』

『ゲット・ラウド ジ・エッジ、ジミー・ペイジ、ジャック・ホワイト×ライフ×ギター』

原題:“It Might Get Loud” / 監督:デイヴィス・グッゲンハイム / 製作:トーマス・タル、デイヴィス・グッゲンハイムレスリー・チルコット、ピーター・アフターマン / 製作総指揮:バート・エリス、マイケル・メイリス / 撮影監督:ギレルモ・ナヴァロ、エリック・ローランド / プロダクション・デザイナー:ドナルド・グレアム・バート / 編集:グレッグ・フィントン / 出演:ジミー・ペイジ、ジ・エッジ、ジャック・ホワイト / 配給:Asmik Ace

2009年アメリカ作品 / 上映時間:1時間38分 / 字幕監修:小林克也

2011年9月9日日本公開

公式サイト : http://getloud.asmik-ace.co.jp/

TOHOシネマズ六本木ヒルズにて初見(2011/09/11)



[粗筋]

 ジミー・ペイジ――1970年代に活躍した“レッド・ツェッペリン”のリーダーであった。弓を用いた演奏や、伝説的名曲『天国への階段』のために12弦と6弦ふたつのネックを装備したギターを製作、その独創的なプレイスタイルは衝撃を齎した。

 ジ・エッジ――アイルランド出身のバンド“U2”に所属。エフェクターで徹底的に音を加工し、ライヴ中にいちどとして同じ調整では演奏しない、という徹底ぶりで“音の建築家”とまで言われ、そのシャープで幻想的な響きは類を見ない。

 ジャック・ホワイト――姉メグとの2ピース・バンド“ホワイトストライプス”として活動。メグのシンプルなドラムにノイジーで厚みのあるギターを乗せる、ストイックだが迫力に満ちた演奏は、聴く者に強いインパクトを齎している。

 3世代のギタリストが一堂に会し、自らのバックグラウンド、音楽観を闘わせる。出身も、音楽に関わっていった過程も異なれど、彼らの傍には常にギターがあった――



[感想]

“〜〜のための映画”という惹句をしばしば耳にし、目にするが、たいていの場合は「それほどでもないじゃないか」と感じる。面白い、面白くないとは別の部分で、薦められている人々にとってさほどツボに入らない、ということはままある。

 だが、この作品は間違いなく“ロック・ギターを愛する人々のための映画”だ。たとえば、中心となる3人のうち誰かひとりしか知らない、或いは誰か、全員に対して反感を抱いていたとしても、観終わったあとは胸を熱くしているはずだ。

 3人がそれぞれに語り合う部分を鏤めつつ、基本的には3人それぞれのプロフィールを辿るかたちで構成されている。ジャック・ホワイトがちょっと風変わりではあるが、それでも揃って「常に音楽が近くにあった」と言うほかない生い立ちで、途中に紆余曲折はあっても、ギターに心得のある者なら観ていて口許が緩んでしまう。本人に似た子供を“7歳のジャック・ホワイト”という設定で登場させ、現在のジャックと共演させることで、彼の一風変わった音楽へのアプローチを説明させているのも面白い趣向だ。

 だが何より、それぞれが影響を受けた音楽、好きな音楽を語るときの、実に嬉しそうな表情が印象的で、共感を覚える。LPが部屋の壁いっぱいに収められた部屋で、アンプの影響を利用して音に変化をつけた名曲について嬉々として説明するジミー・ペイジ、手拍子とヴォーカルだけでアルバムを製作したサン・ハウスへの敬意を語ったあと、即興で作った歌を録音するジャック・ホワイト。エフェクターと際限なく格闘するジ・エッジの姿はやや気難しげだが、過去のテスト録音を流しているときの表情や、快心の音を見つけたときの様子を自ら演じている表情はやはり輝いている。ギターを愛する――というよりもロックが好きで本篇を観に訪れた人々なら、みんな、自分と同じように、ただただ音楽が好きなのだ、ということを感じられる。一気に彼らを身近に感じることが出来るはずだ。

 だがそれでいて、3人ともやはりただ者ではない、ということもきちんと汲み取っている。『007/ゴールドフィンガー』のテーマ曲でも演奏していたというほど、スタジオ・ミュージシャンとしての長いキャリアを備えるジミー・ペイジ、アマチュア時代から同じスタイルを貫き着実に己のスキルを高めていったことを感じさせるジ・エッジ、敢えて難しい楽器や編成を選び、時代の逆をつくことで先鋭的になっていった“ひねくれ者”のジャック・ホワイト。彼らの過去や信念に触れると、やはり己の世界を築いたミュージシャンたちはひと味違う、と痛感させられる。

 しかし、来歴も、音楽に対する信念も微妙に違うのに、いざ語り合えば互いの想いをきちんと汲み取り、同時にギターを構えれば見事に調和してしまう。それぞれの音楽を聴いたことのある者や、ある程度心得がある上で本篇を鑑賞した者なら、それぞれの演奏にある個性をまったく殺していないのに、あっという間にハーモニーを完成させてしまうことに、今更ながら「音楽って凄い」と唸らされるはずだ。異なる個性がギター、ひいては音楽という共通項でもって、あっさりと結ばれてしまう。

 3人の傑出したギタリストの実像に巧みに迫ったドキュメンタリーであると同時に、音楽が本来備えている魅力、愉しさを痛快なまでに剔出したドラマとも言える。エンディングで3人が“The Weight”を演奏する姿が、何よりもそれを象徴している。きっと、少しでもギターを嗜んでいた人なら、あのラストを観たあと、ギターを引っ張り出したくなるはずだ。



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