『ゴースト・オブ・チャイルド』

ゴースト・オブ・チャイルド [DVD]

原題:“No-Do” / 監督&脚本:エリオ・キロガ / 製作:マーガレット・ニコル、ステファン・ニコル、エリオ・キロガ / 撮影監督:フアン・カルロス・ゴメス / 編集:ルイス・サンチェス・ギジョン / 衣装:ホスネ・ラサ / 特殊効果:アントニオ・モリーナ / 音楽:アルフォンス・コンデ / 出演:アナ・トレント、フランシス・ボイラ、ヘクター・コロム、アルフォンサ・ロッサ、ルシオ・ムニョス、ミリアム・セパ / 映像ソフト発売元:エクリプス/INTER FILM/角川書店

2009年スペイン作品 / 上映時間:1時間34分 / 日本語字幕:?

2011年7月2日映像ソフト日本盤レンタル開始

2011年8月26日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon]

DVD Videoにて初見(2011/07/12)



[粗筋]

 小児科医のフランチェスカ(アナ・トレント)は、長男が生まれたのを契機に、病院を辞めて育児に専念することにした。そんな彼女のために夫のペドロ(フランシス・ボイラ)は郊外にある家を借りる。

 そこは、もともとは学校として用いられ、1年前までは神父が毎年1ヶ月だけ滞在していたという屋敷だった。修繕中で立ち入りを禁じられた箇所もあったが、一目で心惹かれたフランチェスカは、そこを新居とすることに同意する。

 異変は、転居した初日から起きた。どこからともなく、何かがけたたましく崩れるような音が響き、繰り返し目醒めたフランチェスカは、生まれたばかりの息子を見守るソファで一夜を明かす。かつての出来事ゆえに、育児ノイローゼ気味になっている妻のこの振る舞いに、ペドロは苦々しい表情を見せた。

 ペドロが仕事に出かけて留守にしている昼間、フランチェスカが娘のローサ(ミリアム・セパ)と穏やかな時間を過ごしていると、突如玄関を激しくノックする音が響き渡る。引っ越し以来、自宅の周囲を謎の老婆が徘徊しており、その人物のせいかと早合点したフランチェスカだったが、ドアを開けてみると誰もいない。そして、ドアを閉じるとすぐにふたたびドアを乱暴に叩く音が響く――

 この家は、何かがおかしい。夫や友人が単なるノイローゼと決めつけるなか、フランチェスカにヒントをもたらしたのは意外にも、周囲を徘徊する老婆ブランカ(アルフォンサ・ロッサ)であった……



[感想]

 非常にオーソドックスな作りの、幽霊屋敷ホラーである。引っ越してきた一家、発生する怪異、その不可解さだけでなく、周囲の無理解が体験者を苦しめ、恐怖と狂気とを募らせていく……ほぼ定石通りと言っていい。

 本篇はそこに、長年にわたって眠り続けていた女と、原題にもなっている、かつて映画館で上映されていたニュース番組“No-Do”というモチーフを組み込むなどして、独自性を示そうとしている。

 しかし、正直なところ、こうして組み込まれた特殊なモチーフが、有効に機能しているとはとうてい言い難い。ある謎については、“何故そうなったのか”という部分がまるっきり放置されているために、折角の特殊性が恐怖にもドラマにも繋がっていないし、他のものもその特殊性が活きているようには感じられない。

 また、並行されて用いられている別のモチーフは、本来巧みに隠さねばならないところだが、あまりに安易に扱われているため、多少こういう作品に慣れている人であればあっさり感知することが出来、意外性にも驚きにも繋がっていない。ホラー映画をよく研究し、効果的なモチーフを理解している作り手であることは察せられるが、練度が低いので活用できていないようだ。

 ただ、場面ごとの怪奇現象の表現、映像のトーンは決して悪くない。錆びたような映像に漂う、じっとりと湿った雰囲気は、なかなかの完成度に達している――どうも屋敷の外観をはじめ、かなり多くの部分をCGで制作しているようで、基本的にその美術的な仕上がりはいいのだが、本来梢が揺れていたり、と微かに動きがあるべきところを止めたままにしている場面があったり、と手抜かりが散見されるのは惜しまれるが、全体としては健闘している。

 決して心配りが行き届いているとは言えないこの作品だが、ヒロインを演じたアナ・トレントの存在が芯を通して、完成度を高めているように思う。役柄、心理描写はホラー映画としては定石ながら、抑制の利いた感情表現がそこに説得力を添えている。『ミツバチのささやき』で注目されて以来ずっとスペインの映画界で活躍しているキャリアが、大いにものを言っているようだ。

 もう少し製作者に繊細さがあれば傑作と呼べるものになっていた、と思えるだけに惜しまれる仕上がりだが、幽霊屋敷ホラーとして比較的まとまっている。いちばん惜しいのは、ツボを弁えてはいるものの、そこを逸脱していないせいで、あまり怖くないことなのだが――様式美を達成しているだけに、憎めないのである。



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