『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』

『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』

原題:“Transformers : Dark of the Moon” / 監督:マイケル・ベイ / ハズブロのアクション・フィギュアに基づく / 脚本:アーレン・クルーガー / 製作:ドン・マーフィ、トム・デサント、ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ、イアン・ブライス / 製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグマイケル・ベイ、ブライアン・ゴールドナー、マーク・ヴァーラディアン / 共同製作:アレグラ・クレッグ / 撮影監督:アミール・モクリ / プロダクション・デザイナー:ナイジェル・フェルプス / 視覚効果&アニメーション:インダストリアル・ライト&マジック / 編集:ロジャー・バートン、ウィリアム・ゴールデンバーグ,A.C.E.、ジョエル・ネグロン / 衣装:デボラ・L・スコット / 音楽:スティーヴ・ジャブロンスキー / 出演:シャイア・ラブーフロージー・ハンティントン=ホワイトリー、ジョシュ・デュアメル、タイリース・ギブソンジョン・タトゥーロケヴィン・ダン、ジュリー・ホワイト、ジョン・マルコヴィッチフランシス・マクドーマンドケン・チョン / 声の出演:ピーター・カレン、ヒューゴ・ウィーヴィングレナード・ニモイ / 配給:Paramount Pictures

2011年アメリカ作品 / 上映時間:2時間34分 / 日本語字幕:松崎広

2011年7月29日日本公開

公式サイト : http://www.tf3-movie.jp/

TOHOシネマズ日劇にて初見(2011/07/28) ※前夜祭



[粗筋]

 2度の窮地を乗り越え、オプティマス・プライム(ピーター・カレン)率いるオートボットたちは人間たちとの絆をより深くし、彼らの平和を保つための極秘任務に力添えをしていた。

 そんななか、チェルノブイリで不穏な動きがある、という情報を受け、米軍が組織した対ディセプティコン特殊部隊NESTの司令官レノックス(ジョシュ・デュアメル)とオプティマスたちは現地へと赴く。そこで謎のワーム型のトランスフォーマーの襲撃を受けながらも、辛うじて回収したものの正体に、オプティマスは愕然とした――

 同じ頃、最初にトランスフォーマーたちと接触した人物であり、2度の危機で重要な役割を果たし、大統領から勲章を授与された経験のある青年サム・ウィトウィッキー(シャイア・ラブーフ)は――就職活動中だった。名門大学を卒業したものの、事件の都合でFBIやCIAに追われていた過去だけが経歴に残ったせいで、なかなか雇い手に恵まれない。ようやく宇宙関連の技術開発を行うアキュレッタ・システムに職を得るが、それさえも実は恋人カーリー(ロージー・ハンティントン=ホワイトリー)の勤める会社の社長ディラン(パトリック・デンプシー)が口を利いたお陰で入社出来たことをあとで知り、思わぬ劣等感を味わわされた。

 それでも懸命に働こうとしていた矢先、同じ社内のジェリー(ケン・チョン)という男がサムに奇妙な警告をしたのち、ビルから転落して死亡する、という事件が起きる。ジェリーが託したメッセージは、複数の新聞記事――いずれも、かつての宇宙開発に関連するものだった。

 その頃、オプティマスたちは、チェルノブイリで発見されたものが、かつて月面に墜落した宇宙船から回収されたものらしいと知り、オートボットの宇宙船で月に降り立っていた。大破した宇宙船の中に彼らが見つけたのは、多くの同胞たちの死骸と――微かだが生体反応を留めた、かつてのオートボットたちのリーダー、センチネル・プライム(レナード・ニモイ)であった……



[感想]

 ストーリーに期待するのではなく、大画面で観ることを第一の愉しみにすべき作品があって然るべきだ、と前々から思っている。自宅の小さなテレビや擬似的に立体音響を再現するのが精一杯のスピーカーで鑑賞するだけでは足りない、映画館の大スクリーンと、配置をきちんと考慮した音響システムを活かした映画が作られるべきだ、と。特に、海賊版対策の一環という名目も含めた形ながら、一気に普及していった3D映画が定着するためには、余計にその魅力を活かすコンテンツが必須であろう。

 そういう意味で本篇は、極めて理想的に近い作品である。

アバター』の大ヒットを境に、3D映画の本数は急速に増えたものの、ただ“3Dにしました”程度の、あまり効果を感じられないものが多かった。流行に乗る形で、もとは2Dで撮影されたものを立体のように処理したため、“飛び出す絵本”にも似た印象のものばかりが続いてしまった。『アバター』でも使用された、立体視を前提にした撮影が可能な機材が頻繁に用いられることでこうした“もどき”が量産される悩みは減ったが、一方で、立体であることの魅力を活かした作品は決して多いとは言い難い。『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉(3D・字幕版)』はロブ・マーシャル監督の起用で気品を増した代わりに、初期3部作のアトラクション的な愉しさを犠牲にしてしまっており、折角採用した3Dの旨味が出し切れなかった嫌味があった。

 その点、本篇は旧2作で既にあった、ストーリーよりもアクションの激しさや華々しさ、観たこともないヴィジュアルの追求を、3Dに特化する形で徹底しており、シリーズ全体の備えるアトラクション的な魅力をむしろこの最新作で極めた感がある。

トランスフォーマー』シリーズは登場人物と同じ目線で綴る映像を随所に組み込むことで、巨大な金属生命体の戦いのまっただ中に身を置いている、という感覚を観客にもたらすことに心を砕いている傾向があったが、本篇でもそれは同様であり、3Dであるだけに臨場感は旧作の比ではない。専用のスーツを纏ってワシントンのビルのあいだを降下する特殊部隊が敵に襲われる姿を、前後を浮遊するカメラで追うかと思えば、銃の真横に視点を設け、敵味方双方のトランスフォーマーが暴れるなかで必死に応戦する様をほぼ戦闘員の視点そのままに描く。こうしたヴィジュアルをより生々しく体験できる、という一点だけでも、本篇を映画館で鑑賞する価値はあるだろう。

 ストーリー自体は、決して悪くない――というより、アクション一辺倒になって感情的な波が生じないと退屈になる、というのは製作者たちも重々承知しているはずで、本篇が最後まで牽引力を保っているのは、関係性や戦況の変化が何度も繰り返されるからであり、その意味ではよく出来ている。

 ただ、起きた波に観客が感情移入する、でなくとも何か感じ取るより先に話が進んでしまうので、情緒に浸る余裕がない。実際に、これだけ目まぐるしく事態が変転していれば、何も考える余裕はないだろうし、その意味では正しい描き方なのだが、キャラクターを比較的しっかり組み立てているだけに、そうした良さを殺している感があるのが勿体ない。

 オスカー女優であるフランシス・マクドーマンドを起用した情報局長官は、中盤あたりまでは行きすぎた官僚的言動で観る者の気持ちを逆撫でするが、それが終盤のドラマでいまひとつ活きておらず、最終的にぼやけた印象を残す。もうひとりの初登場キャラクター、ジョン・マルコヴィッチ演じる宇宙開発企業の社長など、最初こそ怪優らしい存在感を発揮するものの、終盤では居たのか居なかったのかさえ解らないほどだ。先だって、私は『処刑教室』で端役に近い校長をブルース・ウィリスが演じていたことに必然性がある、と論じたが、本作でのマクドーマンドとマルコヴィッチは、正直あまり必要がなかったように思われる。このふたりが演じたからどうにか存在感を発揮していた、という節はあるが、もう少しシナリオを整理して役割を集約するべきだっただろう。

 マルコヴィッチの役柄を活かすなら、個人的には、非常に申し訳ないと思いつつ、旧作からのレギュラーであるシモンズを切るか、もっと扱いを軽くしても良かったように思う。どう考えても、このふたりの位置づけは被っているのだから、全般に道化役、それも旧作の存在があるせいで自由に振る舞えず空回りしていた感のあるシモンズのほうを最小限の出番に絞り、マルコヴィッチ演じる社長に役割を集約すべきだった。

 他にも、前作までのヒロインが何故か姿を消していて、サムに新しい恋人が出来ているとか、サムの両親がトレーラーハウスでサムの住居の傍に居つく、といった配分を誤った描写が本篇には随所に認められる。大元のプロット自体は悪くないように思われるのだが、映像的な見せ場や、キャラクターを局所的に活かすことにばかり注意を払った結果、ストーリーとしては破綻してしまったようだ。

 とはいえ、こうした欠点を承知の上でも、とりあえず最後まで観てしまう力強さは間違いなくあるし、大スクリーンでこそ味わえる迫力は、劇場まで足を運ぶ甲斐を感じさせる。そういう意味では、いまいちばん求められるものをきっちりと具現化した作品と言えるだろう。3D映画の醍醐味を堪能したいと思うなら、とりあえず選んで損のない作品だと思う。



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