『スタンド・バイ・ミー』

『スタンド・バイ・ミー』 スタンド・バイ・ミー  製作25周年記念 HDデジタル・リマスター版  ブルーレイ・コレクターズ・エディション  【初回生産限定】 [Blu-ray]

原題:“Stand by Me” / 原作:スティーヴン・キング / 監督:ロブ・ライナー / 脚本:レイノルド・ギデオン、ブルース・A・エヴァンス / 製作:アンドリュー・シェインマン、レイノルド・ギデオン、ブルース・A・エヴァンス / 撮影監督:トーマス・デル・ルース / プロダクション・デザイナー:デニス・ワシントン / 編集:ロバート・レイトン / キャスティング:ジャネット・ハーシェンソン、ジェーン・ジェンキンス / 音楽:ジャック・ニッチェ / 出演:ウィル・ウィートン、リヴァー・フェニックスコリー・フェルドマンジェリー・オコンネルキーファー・サザーランドジョン・キューザックリチャード・ドレイファスフランシス・リー・マッケイン / 配給:コロンビア / 映像ソフト発売元:Sony Pictures Entertainment

1986年アメリカ作品 / 上映時間:1時間29分 / 日本語字幕:菊池浩司 / PG12

1987年4月18日日本公開

2011年6月22日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon]

第1回午前十時の映画祭(2010/02/06〜2011/01/21開催)上映作品

第2回午前十時の映画祭(2011/02/05〜2012/01/20開催)《Series1 赤の50本》上映作品

初見時期不明

TOHOシネマズみゆき座にて再鑑賞(2011/05/25)



[粗筋]

 ゴードン(リチャード・ドレイファス)は新聞に載った、ある殺人事件の報に愕然としていた。レストランで刺殺されたというその弁護士は、ゴードンにとって忘れがたい記憶と結びつく人物だった。

 1959年、幼いゴードン――通称ゴーディ(ウィル・ウィートン)はクリス(リヴァー・フェニックス)、テディ(コリー・フェルドマン)、バーン(ジェリー・オコンネル)とともに、樹上の秘密基地に入り浸っていた。両親は、兄デニー(ジョン・キューザック)の死以来、打ちひしがれたままで、ゴーディにろくに関心を示さなくなっていた。

 ある日、秘密基地に大慌てで転がり込んできたバーンが、ゴーディたちに“屍体”の話を始める。数日前から行方不明になっている子供の屍体を、バーンの兄たちが発見した、というのだ。バーンの兄やクリスの兄たちはエース(キーファー・サザーランド)という男を中心につるんで年がら年中悪さを働いており、車を盗んだことが発覚するのを怖れるあまり、口をつぐもうとしている。

 もし、屍体を見つけ出し、通報すれば、街の英雄になれる――この思いつきに、クリスやテディは熱狂した。バーンの兄たちが屍体を発見した、と行っている場所までは40km近く、線路や川伝いに移動しても1日はかかる。

 口裏を合わせ、アリバイを用意した一同は、子供の屍体を探しに“冒険”に赴く。だが、本当はゴーディは決して乗り気ではなかったのだ……



[感想]

 誰しも子供の頃に、自分なりの冒険を経験しているものだ。家族との諍いが原因でほんの半日程度家出を経験したり、ひたすら道をまっすぐに進んで何処まで行けるか確かめてみたり……たとえ捜索に来た家族に発見されたり、大人に見咎められてすぐに連れ戻されても、その客観的には大したことのない冒険が一生ものの思い出になったり、のちの人生の指標になってしまうこともある。恐らく、ほとんどの人がそんな冒険の記憶を持っているはずだ。

 本篇はそんな、客観的には他愛のない、しかし当事者にとっては壮大で、緊張と苦悩と興奮に満ちた冒険を、見事そのままに切り出している。

 目的が、事故で死んだ子供の屍体を見つける、というのはいささか風変わりだが、しかし非常に幼稚な理由で、常識的な観点からすればあまり意味のないことのために冒険に及ぶ、というふうに根っこの部分を掬い上げると、ごく普遍的な経験になる。そして、そこで経験する出来事も、当人たちは必死であっても、客観的にはさほど珍しくない、危険も乏しいものばかりだ。まあ、線路で迫り来る列車にタイマンを挑んだり、手すりもない鉄橋で列車に追われたり、コヨーテが鳴き騒ぐ森の中で野宿をしたり、というのは一歩間違えば大怪我必至であるが、回避不可能な困難というわけではない。

 ただ本篇は、それらの出来事を、子供心で味わうのと同じくらい鮮烈に観客にも実感させている。それを実現しているのは、完成され、そして絶妙な役割分担をもって配された人物像だ。

 作家志望でごく冷静な眼差しで物事を見つめている視点人物のゴーディを中心に、奇矯な言動を繰り返し周囲を振り回すテディ、好奇心は旺盛だが臆病で常識的なものの考え方をするバーン、そして欠点だらけの友人ふたりや才能を親から軽視されているゴーディに理解を示す大人びた眼差しを持ちながら苦悩するクリス、と、それぞれにアクはあるがリアリティを感じさせる子供たちが、無自覚のうちに役割を分け合って物語を牽引していく。彼らの人物像が濃密に感じられる振る舞いや会話が、有り体のトラブルを、記憶に刻まれる事件に変容させる。

 ポイントは、特徴的なようでいて、何処にでもいそうな子供たちの人物造型にある、と言っていいだろう。取っつきにくそうでもあり、しかし親近感を与える彼らの姿が、自然と観る者を同じ世界に引きずり込む。まるで本当に想い出を共有するかのような、そういう世界観の構築が、本篇を稀有の傑作に仕立てたのだ。

 それ故に、90分足らずの短めの尺ながら名場面が目白押しと言っていい作品なのだが、個人的に出色と感じたのは、野宿した夜、森の中で焚き火を囲んだとき、ゴーディが促されて物語を語る場面だ。再現映像も交えたゴーディの架空の復讐譚それ自体が強烈な内容で、実のところ私など本筋よりも鮮烈に記憶していたほどだが、しかし今の目で観ると、子供たちの反応の描き方に感心させられる。映画をひととおり観終わってからこのシーンを思い返すと、子供たちの人物像が他のどのシーンよりも象徴的に描き出されていることに気づく。エピローグで語られる、彼らのその後の人生を重ね合わせて考えると、唸らされるはずだ。

 とにかく、美点を挙げるときりのない、間違いなく映画史にその名を残す傑作である。無理矢理欠点を挙げるとするなら、女っ気がほぼ皆無に等しい、ということぐらいだが――実のところ、この世代の子供たちが本当に異性に興味を持っているか、ということを考慮すると、このくらい異性の気配がないほうが普通なのだ。意識したか無意識のうちかは定かではないが、そういうところまで含め、この作品は観る者の古い記憶を的確に刺激する作りになっている。



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