『ふたりはプリキュア Splash Star チクタク危機一髪!』

映画ふたりはプリキュア Splash ☆ Star チクタク危機一髪 (通常版) [DVD]

原作:東堂いづみ / 監督:志水淳児 / 脚本:成田良美 / 企画:鷲尾天 / キャラクターデザイン:稲上晃、爲我井克美 / 作画監督:爲我井克美 / 美術監督:行信三 / 色彩設計:沢田豊二 / デジタル撮影監督:中得覚 / 編集:麻生芳弘 / 録音:川崎公敬 / 音響効果:石野貴久 / 音楽:佐藤直樹 / 声の出演:樹元オリエ榎本温子山口勝平松来未祐渕崎ゆり子岡村明美菊池正美TARAKO速水奨、チョー、太田真一郎竹内順子、渡辺英雄、向井亜紀うちやえゆか / 配給:東映

2006年日本作品 / 上映時間:50分

2006年12月9日日本公開

2007年4月18日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video初回限定版:amazon|DVD Video通常版:amazon]

公式サイト : http://www.precure-movie.com/

DVD Videoにて初見(201/02/06)



[粗筋]

 その日はカラオケ大会。日向咲(樹元オリエ)は商品欲しさに、親友の美翔舞(榎本温子)とともに参加を目指して猛特訓を重ねていた――はずなのに、予定の時間に目を醒まさず大遅刻。慌てて待ち合わせ場所に駆けつけるが、待ちくたびれた舞がたまたま場所を離れていたことに咲が八つ当たりし、出番を前にふたりはすっかり険悪な雰囲気になってしまう。

 そして歌う番になると、観衆を前にした緊張で揃って声が出なくなってしまう。切羽詰まったふたりは思わず、揃って「時間を止めて!」と叫んだ。

 ……本当に、止まってしまった。

 咲と舞、そしてふたりがプリキュアになるための力を与えるフラッピ(山口勝平)、チョッピ(松来未祐)、ムープ(渕崎ゆり子)、フープ(岡村明美)の妖精4人だけが動き回れる状況に、咲ははしゃぎ、舞はそんな彼女を窘める。

 そんななか、慌てて駆け回っている奇妙な生き物を発見した。追いかけていった咲たちは、その生き物たちもろとも、古道具屋の時計から奇妙な世界へと飛ばされてしまう。生き物たちはアワーズ(菊池正美)とミニッツ(TARAKO)といい、辿り着いた世界は“時計の郷”――世界の時間を司る場所であるという。

 ここにある大時計を、ダークフォールの刺客サーロイン(速水奨)によって止められたことで、世界中の時間も動かなくなってしまった。このままの状態が続けば、世界は未来を失ってしまう。咲と舞はプリキュアになって戦いを挑むが、未だ気持ちがすれ違ったままの2人は呼吸を乱し、呆気なく蹴散らされてしまう……



[感想]

 プリキュアシリーズ第3作、劇場版としても3作目だが、この時点ではまだ売り方に試行錯誤している印象が強い。前作前々作は1年のあいだに同一シリーズで2本を劇場公開したかと思うと、本篇は前作から1年空けた2006年末の公開ながら、『デジモンアドベンチャー』との併映となっている。もともとこのシリーズは通常の映画より短めの尺で製作されているが、そのために本篇は更に短く、1時間を切る尺になったわけだ。

 前作でプリキュア劇場版としてのおおよそのフォーマットを確立しており、本篇も基本的にそのラインを踏襲はしているのだが、尺が幾分短いせいで、いつも以上に駆け足、かつ少々掘り下げの甘い印象がある。わざわざ“時計の郷”という、シリーズの枠組に添った異世界を用意したわりには、その世界観がいささか雑然としていることや、既に侵略されたあととはいえこちらでの日常や、特徴的なキャラクターがひと組しか登場していないのはどうにも物足りない。

 しかしその分、メインであるプリキュアふたりの心情描写が、テレビシリーズと比べても非常に丹念だ。ドラマとして、決して成熟はしていないが、観ている者の心を揺さぶり、感動をもたらすための細やかさに優れている。

 これは少々勘繰りすぎかも知れないが、スタッフには多少なりとも、前作のリヴェンジという意識があったのではなかろうか。

 本質的に、本篇の主題は決して前作と隔たっていない。前作は敵に操られる形でプリキュアふたりが望まぬ対決を強いられているが、本篇は些細なことがきっかけで起こした仲違いがあとあとまで糸を引き、戦いに支障を来す、という、いわば異なる形での“対決”を描いていると言える。ちゃんと共に戦っているが、いつものような息の合った行動が出来ず、途中では背を向け合う場面さえあるのは、直接拳を交える前作よりも、考えようによっては更に辛い。

 だが、そうして一番辛い段階を踏まえたからこそ、終盤でふたたび手を取り合う姿が劇的だ。過程は違うが、この成り行きのもたらす興奮は前作とほぼ同一だ。前作のリヴェンジ、と表現したくなる所以である。

 実のところこの『Splash Star』のコンビは初代のふたりと比べ、あまりに簡単に仲良くなってしまった印象がある。クラスメイトだが交流がなく、最初のうちは苗字で呼び合っていたのが、すれ違いと諍いを経て本当に親友になっていく……という最初のコンビが序盤で見せたドラマは非常に丁寧だったが、『Splash Star』のふたりは友達や家族のエピソード、悪役との絡みをもっと描きたいという意図があったのか、小さい頃にいちど出逢っていたふたりが再会してすぐに仲良くなる、とかなりトントン拍子で進んでおり、物足りなさが禁じ得なかった――もっとも、この『Splash Star』以降、人数が増えたせいもあって、この“親しくなっていく過程”はどんどん省略されていったのだが。或いはスタッフも感じていたかも知れない物足りなさを、ここで補った、とも捉えられる。

 そういう意味では本篇は、先行2作品以上に、シリーズ全体の枠組や主題に縛られた作りになっている、と言える。基本的にこういう映画は、オリジナル・シリーズに親しんでいないと理解しづらいものだが、特にその性質が強い。

 ただ、その分だけ、シリーズに馴染んでいる人に対するサービスは欠かしていない。メインふたりを中心に描写しているので、短い尺ながら変身シーンのバンクは2度挿入し、更にシリーズ全体を通しても飛び抜けて異色のシチュエーションで変身するくだりも描いている。また、カラオケ大会でふたりが披露した曲、という体裁で、この『Splash Star』から『Yes!プリキュア5 GoGo!』まで続けて用いられることになった『ガンバランスdeダンス』を初めて作中のキャラクターに歌わせているのも、心憎い。絵のクオリティの高さについても言うことはなく、テレビシリーズから鑑賞している人ならば、不満を覚えることはまずないだろう。

 この次からはふたたび単独で劇場公開されるようになっており、プリキュアの中では不遇のシリーズ、という印象を受ける『Splash Star』だが、クオリティ自体は最初のシリーズ2作に劣らない。キャストや世界観の変更、従来と異なる位置づけのキャラクターの導入など、テレビシリーズ自体が試行錯誤を繰り返していた中で、よく築きあげられた良作であると思う。



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