『ザ・タウン』

『ザ・タウン』

原題:“The Town” / 原作:チャック・ホーガン『強盗こそ、われらが宿命』(Villagebooks・刊) / 監督:ベン・アフレック / 脚本:ベン・アフレック、ピーター・クレイグ、アーロン・ストッカード / 製作:グレアム・キング、ベイジル・イヴァニク / 製作総指揮:トーマス・タル、ジョン・ジャシュニ、ウィリアム・フェイ、デヴィッド・クロケット / 撮影監督:ロバート・エルスウィット / プロダクション・デザイナー:シャロンシーモア / 編集:ディラン・ティチェナー,A.C.E. / 衣装:スーザン・マシスン / 第二班監督:アレクサンダー・ウィット / 音楽:デヴィッド・バックリーハリー・グレッグソン=ウィリアムズ / 出演:ベン・アフレックジョン・ハムレベッカ・ホールブレイク・ライヴリージェレミー・レナー、タイタス・ウェリヴァー、ピート・ポスルスウェイトクリス・クーパー、スレイン、オーウェン・バーク、コレーナ・チェイス、ブライアン・スキャンネル / GKフィルムス/サンダー・ロード・フィルム製作 / 配給:Warner Bros.

2010年アメリカ作品 / 上映時間:2時間5分 / 日本語字幕:松浦美奈 / PG12

2011年2月5日日本公開

公式サイト : http://www.thetownmovie.jp/

ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2011/02/05)



[粗筋]

 ボストン北部にあるチャールズタウンは労働階級が多く暮らし、強盗の発生率が極めて高い地域である。この土地ではさながら強盗が職業のように、親から子へと受け継がれていく。

 この街で生まれ育ったダグ(ベン・アフレック)はまさに、そうして親から仕事を引き継いだ、強盗のプロフェッショナルである。幼馴染みのジェム(ジェレミー・レナー)ら3人の仲間と共に、警備員の経歴まで緻密に調べ上げたうえで銀行を襲撃し、流血沙汰を最小限に留めて仕事を成し遂げる。FBIが捜査しても物証を挙げられないほどに、彼らの仕事は完璧に近かった。

 だが、その日の襲撃はいつもと様子が違った。無音警報の発令にジェムが焦り、副支店長を打擲したうえ、万一のためと称して支店長であるクレア(レベッカ・ホール)を人質に取ったのだ。幸いに人質を楯にする場面には出くわすことなく、逃走が成功したのちに無傷で解放したが、彼女から奪った免許証に記されていた住所は、ダグたちの暮らすチャールズタウンの間近。

 もし勘づかれれば、告発される危険がある――既に前科2犯、あと一度逮捕されれば三振法で終身刑を受けることになるジェムは焦った。クレアを始末する、というジェムを押し留め、ダグが彼女に接触を図った。

 ダグには秘めた想いがあった。かつてアイスホッケーでドラフトを経てプロに参加したこともある彼は、未だにチャールズタウンの外で暮らすことを夢見ている。タウンのルールの外にいるクレアとの触れ合いは、そんな彼の願望を膨らませることとなった。

 しかし、ダグの想いとは裏腹に、チャールズタウンのしがらみは彼を解放しようとはしなかった――



[感想]

 日本では劇場公開されなかったものの、映像ソフトの形でリリースされ、一部の好事家を唸らせた『ゴーン・ベイビー・ゴーン』に続く、俳優ベン・アフレックの監督第2作である。

 1作目と同様にミステリを原作としているが、正統的な謎解きの仕掛けが凝らされ、往年のハードボイルドの色彩を巧みに採り入れていた前作と異なり、本篇はそういう意味では仕掛けのない、非常にストレートな犯罪ものとなっている。

 だが、如何にもプロの犯罪集団らしい緻密な計画性と、それに行く手を塞がれながらも着実に迫っていくFBIの捜査の様子は非常にリアルで、犯罪実録もののような趣さえある。リスクがあるからこそ安易に人質や関係者を傷つけない、という姿勢を押しだしているのも、昨今すっかりタガが外れてやりたい放題になっている印象のある犯罪映画と比べると真実味がある(非現実的なくらい流血沙汰のある映画も、それはそれで面白いのだが)。

 この作品の犯罪者たちが特異であるのは、父から子へ、人間関係までも引き継ぐ形で、犯罪に手を染めている点だ。単純にプロ意識の強い犯罪者であるなら、たとえば価値観の変化、或いは家族を持つことで足を洗う、という展開もあり得るし、それを妨害するのはかつての仲間や金銭的な逼迫であったりするのだが、本篇の場合は、チャールズタウンで生まれ育ち、そこでの“伝統”を受け継いでしまったが故に抜け出せない、ということになる。刑務所にいる父(クリス・クーパー)に面会に赴いたダグが、看守にバレないよう婉曲に足を洗う願望を告げると、父親から不可能だと宣告される、というくだりは、本篇のそうした異様な閉塞感を印象づけている。

 幼馴染みであり親友でもあるジェムとの絆の形もまた特殊だ。前科2犯という彼の経歴に秘められた因縁、本当にクレヴァーな犯罪者であれば切り捨ててしまいそうなほど荒い彼の気性を知りながらも、突き放すことも立ち去ることも出来ない。心情的にも人間関係の上でも激しく縺れあっていることが、本篇に絶望感、諦観を蔓延させている。

 こう書くとひたすらに重々しいだけのドラマに感じられるが、都合3度にわたる犯行の場面は極めて動きが激しく、娯楽性が高い。途中の銃撃戦の激しさや、狭い路地を駆け巡るカーチェイスは少々過剰なほどだが、成り行きは自然で、匙加減も考慮されている。派手さを主役に押し出さず、だがクライマックスが幾分抑え加減になっていることも意識させないほどのバランス感覚は秀逸だ。

 仕掛けがなければ、わりと穏当に収まってしまった結末にも、物足りなさを覚える人がいるかも知れないが、しかし結末に至る道筋をさり気なく仕込んであるあたりも巧い。モノローグで、中盤のある台詞を反復する趣向や、細かな小細工が絶妙に効いて、虚しくも快い余韻を残す。確かに主人公たちは犯罪者であり、望む望まざるとに拘わらず罪を背負っているが、その重みを投げ出すことをしなかったラストは説得力のある情感に彩られている。

 予告篇で採り上げられている“数十年に一度のクライム・ドラマの傑作”といった表現はさすがに過褒という気がするが、それほど多くお目にかかることの出来ない、娯楽性とテーマ性との調和を巧みに保った傑作であることは間違いない。俳優としては一時期低迷していたが、『ゴーン・ベイビー・ゴーン』と本篇とで、僅か2作ながら早くも貫禄を示し始めたベン・アフレックの、今後の活躍に期待したくなる、そんな仕上がりである。



関連作品:

ゴーン・ベイビー・ゴーン

ハート・ロッカー

それでも恋するバルセロナ

地球が静止する日

ミスティック・リバー

インセプション

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