『ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?』

『ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?』

原作:東堂いづみ / 監督:松本理恵 / 脚本:栗山緑 / キャラクターデザイン:馬越嘉彦、上野ケン / 作画監督:上野ケン / 美術監督:本間禎章 / 特殊効果:星野健 / 色彩設計:澤田豊二 / 音楽:高梨康治 / 声の出演:水樹奈々水沢史絵桑島法子久川綾川田妙子くまいもとこ、菊池こころ、大谷育江藤原啓治 / 配給:東映

2010年日本作品 / 上映時間:1時間22分

2010年10月30日日本公開

公式サイト : http://www.precure-movie.com/

ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2010/11/02)



[粗筋]

 来海えりか(水沢史絵)の母・さくらが、パリでショーを行うことになった。モデルとして起用されたのは、えりかに現役高校生モデルであるえりかの姉・ももか、えりかの同級生花咲つぼみ(水樹奈々)に明堂院いつき(桑島法子)、そしてももかの友人・月影ゆり(久川綾)。ようやく4人のチームになったプリキュアの、ちょっとしたヴァケーションになった。

 ファッションの聖地に足を踏み入れたことで激しく舞いあがるえりかだが、つぼみは妙に不服そうな面持ちをしている。聞けば、「花の都なのにお花がほとんど咲いてない!」意地でも花を見つけ出そうとするあまり、つぼみは一緒に出かけていたえりかといつきとはぐれてしまう。

 つぼみが路地で途方に暮れていると、頭上から1人の少年(大谷育江)が降ってきた。傷だらけの彼を放っておけず、意地でも手当てしようと追っていると、その背後から迫ってきたのは、大量の魔物。いつまでもつきまとうつぼみに業を煮やした少年は、あろうことかつぼみを抱きかかえ、屋根の上を駆け回って逃走した。

 だが、不意に魔物たちが一点に集まったかと思うと、そこに奇妙な男が待ち受けていた。サラマンダー男爵(藤原啓治)と名乗る男は、少年を捕らえると“心の花”を分離し、デザトリアンを作りだす。それは、プリキュアたちが戦い続けている“砂漠の使徒”のお家芸だった。

 少年の心が苦しんでいることを知ったつぼみは異国の地でキュアブロッサムに変身、浄化を試みるが、何故かうまくいかない。少年の心の花には、魔物が同居していたのだ――



[感想]

 プリキュアの劇場版では、架空の娯楽施設や異世界が舞台になることが多い。そもそも本篇の舞台が概ね架空の土地であり、戦いを華やかに彩るためにはそのほうが都合がいい、という事情もあるのだろう。

 それ故に、まずはっきりと現実の土地であるパリを舞台にしている、という時点でちょっと驚かされるが、しかしこれが思いの外しっくり来る。考えてみれば当然で、数多くの映画の舞台として用いられ、多くの芸術家や美意識の高い市民によって築かれた街並は、それ自体が統一性の高いテーマパークのようだ。これまで登場した架空の土地と同じく、一種非現実の世界のような手触りが、このシリーズの方向性と親和性が高かったのかも知れない。

 そういう冒険性も本篇の美点だが、もっと高く評価すべきはストーリーそのものである。このシリーズは1時間半程度の尺に見合うように、という判断故か、たいてい2回の変身シーンを盛り込み、そのうえで各キャラクターの見せ場を埋め込もうとして、どうも物語がおろそかになっている感があった。こうした制約は本篇でも同様なのだが、構成が絶妙で不自然さがほとんどない。

 ものを言っているのは、劇場版のゲストキャラの人物造型と、彼らが抱えるドラマだ。TVシリーズに登場する者とは異なる来歴を持つ砂漠の使徒に、彼との因縁深い少年の過去と煩悶。決して際立って特徴的ではないが、きっちりツボを押さえており、物語に充分な膨らみを持たせている。

 このうまく組み立てられたキャラクターが、TVシリーズで育ってきたプリキュア4人それぞれの背景とぴったり重なって、相乗効果を上げているのだ。友人・つぼみとの絆を大切にしている(と言うには少々行きすぎの感もあるが)えりかに、ずっと誰に言われるでもなく自分を偽っていたいつき、ひとりでプリキュアを務め、パートナーの妖精を失って以来孤独を貫いていたゆり。そして、物語の始まりから自分を変えることを願っているつぼみ、そうした人物像が、彼女たちと関わり合う少年の懊悩と呼応して、印象的に魅力的に描かれている。TVシリーズを観ていれば無論のこと、仮に観ていなかったとしても、本篇だけできちんとドラマを感じられるほど優秀な仕上がりだ。

 そのうえで、映像の完成度も高い。キャラクター描画の質が高いのは当然としても、パリの街並を存分に見せつける舞台選びや構図、カメラワークに至るまで、映画ならではの味わいにも優れている。映画好きとしてはオープニングの、パリの街並にスタッフロールを埋め込んだ趣向だけでもゾクゾクしたが、クライマックスまで映像は素晴らしかった。

 惜しむらくは、劇場版プリキュアの恒例となっていた、入場者プレゼントを用いた観客参加イベントにかなり無理があったことと、タイトルにもあるファッションショーがエンドロールのついでに、しかももし物語中であると想定したら、絶対にあり得ない内容で描かれていた点だ。プリキュアらしい見せ方をオマケとしてするのもいいが、本来こういう形であっただろう、というファッションショーの模様を盛り込んだ上でやるべきだったと思う。

 とはいえ、難点はこのくらいしかない。当然TVシリーズを観ていたほうが楽しめるのは間違いないが、仮に突然本篇から触れたとしても、感性が一致すればあっという間にのめり込めるのでは、と思えるほどに、映画として完成されている。

 個人的にはこれまでに鑑賞したプリキュア・シリーズ劇場版のなかでも一、二を争う傑作だと断じたい。何せ、未だにこのシリーズのために劇場まで足を運ぶことに気恥ずかしさを禁じ得ない私が、これに限ってはもういちど映画館で鑑賞したい、と思っているほどなのだから。



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