『エクスペンダブルズ』

『エクスペンダブルズ』

原題:“The Expendables” / 監督&脚本:シルヴェスター・スタローン / 原案&脚本:デヴィッド・キャラハム / 製作:アヴィ・ラーナー、ジョン・トンプソン、ケヴィン・キング・テンプルトン / 製作総指揮:ダニー・ディムボート、ボアズ・デヴィッドソン、トレヴァー・ショート、レス・ウェルドン、ジョン・フェルトハイマー、ジェイソン・コンスタンティン、イーダ・コーワン、ベイジル・イヴァニク、ガイモン・キャサディ / 撮影監督:ジェフリー・キンボール,ASC / プロダクション・デザイナー:フランコ=ジャコモ・カルボーネ / 編集:ケン・ブラックウェル、ポール・ハーブ / 衣装:リズ・ウォルフ / キャスティング:デボラ・アキラ,C.S.A.、トリシア・ウッド,C.S.A. / 音楽:ブライアン・タイラー / 出演:シルヴェスター・スタローンジェイソン・ステイサムジェット・リーミッキー・ロークドルフ・ラングレンエリック・ロバーツランディ・クートゥア、スティーヴ・オースティン、デヴィッド・ザヤス、ジゼル・イティエ、カリスマ・カーペンター、ゲイリー・ダニエルズテリー・クルーズブルース・ウィリスアーノルド・シュワルツェネッガー / ニュー・イメージ製作 / 配給:松竹

2010年アメリカ作品 / 上映時間:1時間48分 / 日本語字幕:林完治 / R-15+

2010年10月16日日本公開

公式サイト : http://www.expendables.jp/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2010/10/16)



[粗筋]

 金さえ払えばどんな場所にでも乗り込み、過酷な任務を遂行する傭兵部隊“消耗品軍団(エクスペンダブルズ)”。その名の通り、荒くれ揃いの彼らは、限界が来た隊員は容赦なく切り離す。現隊長バーニー・ロス(シルヴェスター・スタローン)でさえ、自らの潮時が近づいているのをはっきりと認識していた。

 そんな彼らのもとに、大きな依頼が舞い込んできた。会合した場所に因んでチャーチと名乗った男(ブルース・ウィリス)が提示したのは、南米の島国ヴィレーナに君臨するガルザ将軍(デヴィッド・ザヤス)の暗殺。バーニーの元傭兵仲間で、現在は軍事産業に従事するトレンチ(アーノルド・シュワルツェネッガー)が辞退したため、成り行きでバーニーはこの任務を引き受けるが、軍事政権によって支配された島国への潜入は困難が予想された。

 バーニーはメンバーの中で若く、右腕として信用を置くリー・クリスマス(ジェイソン・ステイサム)と共に、ヴィレーナに偵察に赴いた。だが、予め手配していた案内役は現れず、代わりにやって来たのは、特殊技能の持ち合わせもなさそうなごく普通の娘、サンドラ(ジゼル・イティエ)であった。疑念を残しつつ、彼女の運転で宮殿の付近まで向かうと、思いがけず軍隊の苛烈な反応に遭い、交戦状態に陥る。どうにか追っ手を叩き、脱出には成功するが、サンドラを置き去りにせざるを得なかった。

 その後、チャーチがヴィレーナを狙う本当の目的が、ガルザ将軍の黒幕であるジェームズ・モンロー(エリック・ロバーツ)が実は元CIAの人間であり、いわば尻ぬぐいの可能性が高いことを察知したバーニーは、リーとイン・ヤン(ジェット・リー)を交えた協議の結果、この一件から手を引くことに決める。

 だが、バーニーの胸には、置き去りにしてきたサンドラの存在が棘のように残り、鈍い後悔の念を齎していた。元エクスペンダブルズ所属で、いまは刺青店を経営しながらバーニー達に仕事を仲介しているツール(ミッキー・ローク)の後押しもあり、バーニーは単独でヴィレーナに乗り込む意を固める。

 無理矢理同乗したイン・ヤンとともに空港に向かう途上、そんなバーニーを、意外な人間が襲撃した――



[感想]

 シルヴェスター・スタローンジェイソン・ステイサムジェット・リードルフ・ラングレン――彼らが共に戦い、或いは拳を交える映画、と聞いただけで燃えるような人は、こんな感想読まなくていいので、とっとと観ることをお薦めする。そういう人なら、出来の善し悪しを越えて楽しめることは間違いない。

 だが、そうでない人、若干でも懐疑的になるような人には、積極的にお薦めしかねる。やはりこれは、多かれ少なかれ、アクション映画に対していくぶん盲目的な“愛”を持っている人に向けた、スライからの感謝状だからだろう。

 率直に言えば、ドラマとしてはしごく浅い作りなのだ。架空の国を設定するのはいいとしても、そこが軍事独裁政権になった経緯、ある種の企みがここで行われていた理由などは一切描かれず、ただ「悪者が支配しようとして、実現しちゃった国」程度に示されているので、正義感や義憤を滾らせる部分がない。過剰にやり過ぎると思想的に傾きが生じてしまうとはいえ、まったくと言っていいほど掘り下げがないので、どうも主人公であるエクスペンダブルズの動機付けが曖昧だ。

 一方で、リー・クリスマスの恋愛絡みの悩みを織りこんだり、バーニーが危険を承知でヴィレーナ再訪を決意する理由に女性の存在を仄めかしたりと、従来のアクション映画とは微妙に趣の違う動機付けを試みているが、それらを束ねたり、共鳴させるような工夫がないので、ドラマとしては深みに乏しい。あくまで付け足しのように感じられてしまう。

 アクションの見せ方にも幾分不満がある。焦点が明白な、最初のヴィレーナ島での戦闘はまだしも、肝心のクライマックス、あまりの混戦ぶりに誰がどこで何をしているのか把握しづらく、どこに注目していいのか解らない。エクスペンダブルズ側がたびたびピンチに直面しているはずなのにそれが正確に捉えられず、何が何だか解らないうちに終わっている印象を与えるのはあまりに勿体ない。

 しかし、本篇には間違いなくアクション映画への愛と、出演者達が娯楽アクション映画の第一人者であるシルヴェスター・スタローンに対する敬意が感じられる。それが、幾つもの不出来な部分や、ツッコミの入れやすい部分をも一種の愛嬌にしてしまっているのだ。

 象徴的なのはジェット・リーである。アクション以外のジャンルにも跨って活躍するステイサムや、監督としての顔も持ち合わせるスタローンと異なり、唯一アクション俳優としての道を邁進してきた感のある彼は、このふたりに次ぐ位置づけで出演しており、その他の隊員や周囲のキャラクターよりも出番は多いのだが、明らかに扱いは軽い。ここまで作中で頻繁に“チビ”呼ばわりされているのも、自ら卑下する場面があるのも、ジェット・リー出演作では初めてのことだろう。肝心のアクションでも、カーアクションの際にわざわざ荷台に廻って銃撃戦に備えたのに振り回されるだけで終わっているし、肉弾戦の場面でも、ピンチを仲間に救われたり、状況がそうさせたとはいえ二人がかりでようやく倒すようなくだりがある。

 普通に考えればあり得ない扱いなのだが、それが観ていても納得できるのは、見分けがつきにくいとはいえアクション・シーンが充実しており、スタローン監督から振られた役割を活き活きと演じているからだ。混乱状態だからこそさり気なく盛り込まれたリーとステイサムの共闘ぶりには、二人の共演をすべて追ってきた者には感慨深いものがある。

 たとえ全体を通しての位置づけは低くとも、リーを含め主要登場人物はそれぞれに個性が与えられ、その特徴に沿った見せ場が与えられているので、アクションならではの緊張感を存分に滲ませつつも、いい意味で皆楽しそうだ。アクション映画を愛する者ほど、この仕上がりには共感を抱くに違いない。西部劇めいたスタローンの早撃ちの技術に、他の仲間たちのユニークな特技や見せ場も、直後では小振りに思えても、あとから記憶を辿りやすいのは、それらかくっきりと描き出されていることの証左だろう。

 ストーリーの完成度は決して高くなく、戦場において示す作戦もこれといって工夫はなく「撃て、壊せ」に終始していて身も蓋もない。だから、そういう部分にこそ魅力を求める人には間違いなく観る価値の低い作品であろうが、ある意味潔いまでに正統派、肉体派のアクションに拘るような人であれば、最終的にどう評価するかを抜きにして、楽しめることは請け合いだ。

 冒頭で、若干でも懐疑的になった人にはお薦めしない、と記したが、少しだけ訂正する。この感想をここまで辛抱して読んだ人にも、恐らく男臭いアクション映画を愛する想いが、無自覚でも少なからずあるはずだ。そういう方にも、とりあえずなにも考えずに観ろ、と申し上げる。そして、全篇に漲る、アクション映画に対する愚直な愛情に浸っていただきたい。



関連作品:

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