『ホースメン』

ホースメン [DVD]

原題:“Horsemen” / 監督:ジョナス・アカーランド / 脚本:デヴィッド・キャラハム / 製作:マイケル・ベイ、ブラッド・フラー、アンドリュー・フォーム / 製作総指揮:テッド・フィールド、ジョー・ドレイク、ネイサン・カヘイン、ジョー・ローゼンバーグ / 撮影監督:エリック・プロムス / プロダクション・デザイナー:サンディ・コクラン / 編集:ジム・メイ、トッド・E・ミラー / 衣装:B. / 特殊メイクアップ:グレッグ・ニコテロ、ハワード・バーガー / 音楽:ヤン・A・P・カチュマレク / 出演:デニス・クエイドチャン・ツィイー、ルー・テイラー・プッチ、クリフトン・コリンズJr.、パトリック・フュジットピーター・ストーメア、バリー・シャバカ・ヘンリー、エリック・バルフォー、ポール・ドゥーリィ、チェルシー・ロス、トーマス・ミッチェル、リアム・ジェームズ、マンフレッド・マレツキ、アルヌ・マクファーソン / プラチナ・デューンズ&レーダー・ピクチャーズ製作 / 配給:CULTURE PUBLISHERS

2008年カナダ、アメリカ合作 / 上映時間:1時間30分 / 日本語字幕:? / R-15+

2009年10月24日日本公開

2010年2月5日DVD日本盤発売 [amazon]

公式サイト : http://www.horsemen.jp/

DVDにて初見(2010/10/03)



[粗筋]

 デトロイト郊外で、奇妙な事件が発生する。凍った沼の中央に置かれた食器に乗せられたのは、ペンチで抜かれた人間の歯。沼の四方の立ち木には、赤いペンキで“Come and See”の文字が大書されていた。

 被害者を特定するために、歯科法医学を専攻するエイダン・ブレスリン刑事(デニス・クエイド)が駆り出されたが、間もなく同一犯による別の被害者が発見される。現場は先の一件よりも遥かに悽愴な有様だった――専用に作られたと思しい枠組から垂れた大きな釣り針を肌に突き刺され吊され、腹を裂かれて絶命した主婦。部屋の四方の壁にはやはり、“Come and See”の真っ赤な文字。

 どう考えても、1人で可能な犯行ではない。そればかりか、どうやら犯人たちは被害者が絶命するまでの一部始終を撮影している痕跡もあった。いったい何が狙いなのか、何らかの儀式なのか?

 やがて、ほぼ同一の手口で殺害された被害者が発見されると、ブレスリン刑事はそこに残されたモチーフから、犯人たちが聖書の黙示録に登場する4人の騎士を暗示しようとしていることを察知する。つまり、犠牲者はあと2人用意されているということ――慄然とする捜査陣であったが、間もなく彼らの前に、“犯人”のひとりが予想外の形で姿を現した。

 何とそれは、最初に吊された状態で発見された被害者の養女、クリスティン(チャン・ツィイー)であった……



[感想]

 個人的に、本篇で用いられる背景や、それが判明する際の趣向は非常に優れている、と思う。だが生憎、そうしたアイディアをうまく活かせていない。

 未見の方の興趣を削がないように説明するのは難しいのだが、ざっくりと纏めると、本篇のは伏線の鏤め方や見せ方に失敗しているのだ。確かに序盤から、背景を想像させる情報は各所に埋め込まれているのだが、悪い意味で埋没していて、真相が判明したときに「ここで仄めかしていたのか!」という衝撃に結びつかない。本篇はクライマックス手前で、真相を知らしめる事実が極めて如実に示されるのだが、これも前提となる事実をもっと観る側に印象づけていれば、更に効果を上げただろうと惜しまれてならない。

 だが、まるっきり描いていない訳ではない。観終えたあと、どうも納得できないという方も、もし機会があるなら最初から観直してみていただきたい。けっこう細かくヒントは鏤められている。あまりにさり気なさ過ぎるのが、折角のインパクトを削いでいるほどなのだ。

 もうひとつ、微妙だと感じたのは、チャン・ツィイーの配役である。最初に明白な“被害者”として登場する女性の養女であり、事件の核心にいる人物を演じているのだが、どう見ても、作中の設定年齢が、実際の彼女の年齢よりひとまわり近く若い。欧米の人々の目からするとアジア人は概ね若く見える傾向にある、ということを念頭に置いても、どうも不自然に感じられて仕方ないのだ。この配役自体に真相を覆い隠す煙幕のような意図があった、とも勘ぐれるのだが、仮にそうだとしても行きすぎだろう。

 しかし、繰り返すが、発想そのものは悪くない。非現実的な猟奇犯罪を採り上げているように見せて、現実にある社会的問題を想定した作りはなかなか意欲的だ。満足な効果は上げられていない、と評しはしたが、捜査官達の探り出した情報をきっちりと理解している、或いはその上で真相を漠然と察していた人ならば、あのひと幕には戦慄を覚えるはずである。

 背景や衝撃的な犯行の筋書きからするといささか情に振れた結末にも不満を覚える向きはあるだろうが、決して主題に対して不誠実なものではない。冷徹に事実を受け止めたことを仄めかした上で描かれるエピローグが、哀しくもほんのひと匙の救いを留めているのも好感が持てる。

 デニス・クエイドチャン・ツィイーといった主要俳優が、いささかアクは強いが鮮明な演技を示して、物語の重みもきちんと支えている。冬の雪景色を貴重とした、張り詰めた気配の漂う映像もいい。それだけになおさら、伏線を明瞭にするなどの配慮がいまひとつ足りなかったのが勿体ないが、サイコ・スリラーとして佳作の部類に属する、ぐらいは明言してもいいと思う。



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