『ゲスト』

ゲスト [DVD]

原題:“The Uninvited” / 韓国映画『箪笥』(キム・ジウン監督作品)に基づく / 監督:チャールズ・ガード&トーマス・ガード / 脚本:クレイグ・ローゼンバーグ、ダグ・マイロ、カルロ・ベルナルド / 製作:ウォルター・F・パークス、ローリー・マクドナルド、ロイ・リー / 製作総指揮:マイケル・グリロ、ダグ・デイヴィソン、アイヴァン・ライトマン、トム・ポロック / 共同製作:リヨコ・タナカ、ケイシー・グラント / 撮影監督:ダニエル・ロンドン / プロダクション・デザイナー:アンドリュー・メンジス / 編集:クリストファー・ワグナー、ジム・ペイジ、デヴィッド・ローゼンブルーム / 衣装:トリッシュ・ケイティング / キャスティング:デブラ・ザーン,C.S.A. / 音楽:クリストファー・ヤング / 出演:エイミー・ブラウニング、アリエル・ケベル、デヴィッド・ストラザーンエリザベス・バンクス、マヤ・マサール、ケヴィン・マクナルティ、ジェシ・モス / モンテシティ・ピクチャー・カンパニー/ヴァーティゴ・エンタテインメント製作 / 配給:角川映画

2009年アメリカ作品 / 上映時間:1時間27分 / 日本語字幕:横手美紀

2010年1月8日DVD日本盤発売 [bk1amazon]

公式サイト : http://www.kadokawa-ent.co.jp/sp/guest/

DVDにて初見(2010/01/08)



[粗筋]

 自宅のボートハウスの火災以来、心を患っていたアナ(エイミー・ブラウニング)に、ようやく退院の許可が下りた。

 父スティーヴン(デヴィッド・ストラザーン)の車に乗って帰った久しぶりの我が家には、だが大きな変化が生じていた。消失したボートハウスは再建され、亡くなった母(マヤ・マサール)の後釜に、晩年の彼女の派遣看護師を務めていたレイチェル(エリザベス・バンクス)が座っていた。

 アナは久々に逢う姉のアレックス(アリエル・ケベル)に苛立ちをぶつけるが、対するアレックスも、“他人”と一緒に暮らさなければならない居心地の悪さと、病院へ送った手紙にいちども返事を寄越さなかったことへの不満を投げつけてきた。

 どうやら父は、アレックスが託した手紙を握り潰していたらしい。姉妹の父に対する憤りは、そのまま彼の恋人であるレイチェルに向けられていく。彼女が来たから、父も家もおかしくなったのではないか。

 アナの胸中に引っ掛かっているのは、あの日まで想いを寄せ合っていたマット(ジェシ・モス)の言葉である。アナが帰宅した直後、ボートで配達に訪れた彼は、火事の直前に何かを目撃したようなことを言いかけていた。

 彼は何を見たのか。もしかしたら、あの火災には何か“裏”があるのではないか。アナがレイチェルへの疑惑を深める中、新たな事件が起きる……



[感想]

 この作品は、2003年に製作された韓国映画箪笥』を、ハリウッドでリメイクしたものである。

 オリジナルは韓国映画界において様々なジャンルやスタイルに挑戦し、国際的に高い評価を得ているキム・ジウン監督が、プロットに工夫を凝らす一方で、韓国らしいモチーフをちりばめた映像美を織り込み、単純にホラーというだけではなく、文芸的な佇まいを感じさせる秀作に仕立てていた。幾分、無駄なところがあるように感じられることが難点だが、一時期のホラーブーム、韓国映画ブームによって日本に届けられた韓国産ホラー映画の中では屈指の名篇であった。

 それだけにハリウッドでのリメイクには期待と不安が半ばしていたが、率直に言えば、不安のほうが的中していた。

 いちばんの胆となるアイディアはそのまま流用している。再構築されているが、原作において魅力となり、或いは印象的であった描写は切り出され、随所で用いられている。そのため、大筋では工夫の光るホラー映画として鑑賞できるが、如何せん、オリジナルの完成度を知っているとどうにも見劣りがする。

 特に問題なのは、アメリカを舞台にするために加えた変更、製作者が拘りとして加えた独自要素が、ところどころ不自然であったり破綻していたり、このアイディアが醸成していた雰囲気を壊してしまっていることだ。

 結末に関わる部分が多いので細かく触れることは出来ないが、最も顕著な疑問として、主人公であるアナが当初入院している精神病院の位置づけがかなり狂っている点が挙げられる。ここには原作にない、ある趣向が凝らされているのだが、事情を考慮すると明らかに非現実的な対応をしている。最後の最後でもうひとつの衝撃として用いているのに、その不自然さのために驚きよりも違和感に結びついてしまっている。

 また、原作では極めて繊細に扱い、強い印象をもたらしていた姉妹や親子の絆、という部分が、このリメイクでは人間関係や風俗の背景をあまりに安易にアメリカナイズしてしまったために、泥臭さやいやらしさのほうが際立ってしまっている。それが原作のような切ない余韻か、恐怖でも驚きといった別の感動に結びついているのならいいのだが、明らかに悪印象としてしか働いていないのは問題だろう。

 原作の優れた美的感覚を見習って、美しさを追求した映像の質は高い。どこかうらぶれたイメージのある湖畔の家は、アメリカに多いスラッシャーや館ものとも微妙に異なる趣があって、独自の雰囲気を作りあげている。もう少し脚本のほうで工夫が欲しかったとは言い条、俳優はいずれも適任で、演技に説得力があるのも美点として挙げられる。それだけに、余計脚本のレベルでの配慮が欲しかった。

 原作を知らなければ、サプライズ要素のあるホラーとしてまあまあ楽しめるものの、原作を観たことがなくとも、アイディアを活かしきっていない、思慮の浅い描写が違和感を残す、勿体ない仕上がりと言わざるを得ない。完全なるオリジナルであればまだしも、リメイクということを考えると、やはりもうひとつの出来である。

 もしオリジナルに愛着があるならあまりお薦めできない。これから観るつもり、という方には、オリジナルではなく本篇を先に観てしまうほうがいい、と申し上げておく。



関連作品:

箪笥

ザ・リング

ワン・ミス・コール

アイズ