『戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH』

『戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH』

原案:富士急ハイランド『戦慄迷宮』 / 監督:清水崇 / 脚本:保坂大輔 / プロデューサー:小椋悟、谷島正之、宮崎大 / エグゼクティヴプロデューサー:豊島雅郎 / 共同エグゼクティヴプロデューサー:マイケル・J・ワーナー / 撮影監督:田辺司 / 3D撮影スーパーヴァイザー:宇井忠幸 / 美術:福田宣 / 照明:工藤和雄 / 特殊造形監修:西村喜廣 / 編集:堀善介 / 音楽:配島邦明 / 主題歌:ストレイテナー『CLONE』 / 出演:柳楽優弥蓮佛美沙子勝地涼前田愛水野絵梨奈松尾スズキ、平岡拓真、松本花奈、森大悟、荒川ちか、伊藤星、中村久美、中島ひろ子山中崇 / 製作プロダクション:小椋事務所 / 配給:Asmik Ace

2009年日本作品 / 上映時間:1時間35分

2009年10月17日日本公開

公式サイト : http://3d-shock.asmik-ace.co.jp/

ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2009/10/20)



[粗筋]

 ケン(柳楽優弥)は10年振りにこの町に戻ってきた。わざわざ駅まで迎えにやって来た旧友モトキ(勝地涼)との再会を喜んでいると、モトキの携帯電話に驚くべき連絡が入る。

 モトキ同様にケンの幼馴染みであり、いまはモトキと婚約、同居しているリン(前田愛)が部屋で待っているとき、ひとりの女性が訪ねてきたのだ。彼女の名は、ユキ(蓮佛美沙子)。彼女の訪れがケン達を驚愕させたのは、約10年前、一緒に富士急ハイランドのアトラクション『戦慄迷宮』に潜入したのち、ずっと行方知らずだったからだ。

 彼女は本当にユキなのだろうか。どうしても信じられない一同は、ユキの家族に連絡を取り、彼女の家に連れて行った。しかし、ユキの母親は半ば発狂し、さもユキがずっと家にいるかのように振る舞い、確認するどころの状態ではない。ユキの妹・ミユ(水野絵梨奈)も、あの『戦慄迷宮』に一緒に潜入したひとりだったが、当時まだ幼かったため、目の前の女が消えた姉である、という確証を持てなかった。

 ケン達が事態を把握しかねているさなかに、問題が発生する。母の様子に錯乱したユキが階段から転落、意識を失ってしまったのだ。とにかく病院へ連れて行こう、とモトキの車に乗せるが、搬送先がなかなか見つからない。

 ようやく明かりの灯った病院を発見してユキを運び込むが、しかしそこは明かりこそ点いているものの人気がなく、異様な雰囲気に包まれていた。この病院でケンたちは、何故か曖昧になっていた10年前の記憶を蘇らせることになる――



[感想]

 近年、急速に3D上映方式対応の映画が増えつつあるが、日本ではまださほど話を聞かない。映画館での盗撮対策としても期待されているため、恐らく現在多くの企画が準備されている段階だと思われるが、とりあえずホラー映画というジャンルに限って言えば、現行の3D上映方式では本篇が初めての作品となるのではなかろうか。

 だからこそ、なのだろうが、本篇は3D方式で上映する意味、意義というものを考慮した上で作られているのが解る。全体に奥行きを感じさせる構図が多用され、複数の人物を画面に入れる場合は、なるべく身体の一部が切れないように配置している。観る側が立体感を得やすく、またその感覚を妨げないような工夫がなされているのだ。ケンがある人物を抱えている場面ではケンの視点からの映像を織り交ぜて、彼の感覚を観る側に共有させ、登場人物が何かに手を差し伸べるシーンでは正面からのバストアップに切り替え、次の行動に不吉な気配を添えている。3Dを用いて、虚仮威しではないやり方で如何に恐怖をもたらすか、ということを考えていることが表現の随所に窺えるのだ。

 だが、それがいまいち効力を発揮しているように感じられない。原因は、隠された仕掛けと物語の展開とが噛み合っていないことだ。

 本篇は終盤である真相が明かされるのだが、すれっからしの観客には見極めやすい真相であることを割り引いても、意外性は乏しいし、解き明かされたことで恐怖や何らかの感動に繋がっていかない。ネタについて伏せながらだと語るのが難しいが、観客の推理や想像に委ねる部分が多いのはホラーとして普通の手法なのだが、そのために観客が軸足とするべき現実や作中のルールが雑だったり不自然だったりするので、感情を動かされるより先に、もっと根本的な違和感を覚えてしまうのだ。

 物語は現在の出来事と過去の事件とが交錯してき、ある場面での描写の意味があとで判然とする、という趣向で巧みに観客の関心を繋いでいくが、そこにもところどころ矛盾や、解釈しても答の出ない違和感が無数にあるのが引っ掛かる。ある人物が螺旋階段で死んだシーン、背後に意味深な影があり、それが何であるのかのちに判明するくだりには膝を打つ一方で、螺旋階段の上から見下ろした角度で目撃した現象が、別のシーン、別の角度で示されたとき、動きに明らかな食い違いが生じる、といった具合に、観る側の解釈に委ねる、というよりはケアレスミスと思われる描写、あるいは深い考えもなくやってしまった描写が目立つのも難点だ。なまじ最後にどんでん返しがあるからこそ、それを支えるための表現は厳密を期すべきなのに、あちこち杜撰になっている。

 恐らくは、影からいきなり何かが飛び出す、異様な造形で観客を脅かす、という虚仮威しの類の恐怖演出を避け、3D映像ならではの表現を追求するあまり、シナリオや表現の整合性といった細部にまで神経が行き渡らなくなってしまったのだろう。故に、誠実さは感じられるし、映像としてのインパクトはそれなりに味わえるのだが、ホラーとしての面白さ、仕掛けのあるスリラーとしての味わいを削いでしまったようだ。

呪怨』の監督らしい、じわりと染みてくる恐怖の表現や、3D方式を活かした映像美を堪能したいのであればそれなりの満足感を味わえるが、その上でホラー、スリラーとしての結構の巧みさ、完成度の高さを求めるとかなり不満の残る出来である。



関連作品:

輪廻

呪怨 パンデミック

ブラッディ・バレンタイン3D