『REC:レック/ザ・クアランティン』

REC/レック:ザ・クアランティン [Blu-ray]

原題:“Quarantine” / 原案:ジャウマ・バラゲロ、パコ・プラサ、ルイス・ベルデホ(映画『REC/レック』) / 監督:ジョン・エリック・ドゥードル / 脚本:ジョン・エリック・ドゥードル、ドリュー・ドゥードル / 製作:セルヒオ・アゲーロ、クリント・カルペッパー、ダグ・デイヴィソン、ロイ・リー / 製作総指揮:ドリュー・ドゥードル、カルロス・フェルナンデス、フリオ・フェルナンデス、グレン・S・ゲイナー / 撮影監督:ケン・セイグ / プロダクション・デザイナー:ジョン・ゲイリー・スティール / 美術:クリス・コーンウェル / 舞台装置:デーナ・ロス / 編集:エリオット・グリーンバーグ / 衣装:マヤ・リーバーマン / 出演:ジェニファー・カーペンター、スティーヴ・ハリス、ジェイ・ヘルナンデス、ジョナサン・シェック、コロンバス・ショート、アンドリュー・フィセラ、ラデ・シェルベッジア、グレッグ・シャーマン / アンドレ・ピクチャーズ&フィルマックス・エンタテインメント製作 / 映像ソフト発売元:Sony Pictures Entertainment

2008年アメリカ作品 / 上映時間:1時間29分 / 日本語字幕:森泉佳世子

2009年7月3日映像ソフト日本盤発売 [Blu-ray Discbk1amazon|DVD Video:bk1amazon]

Blu-ray Discにて初見(2009/07/04)



[粗筋]

 ロサンゼルスのテレビ局で『ナイトシフト』という番組のレポーターを務めるアンジェラ(ジェニファー・カーペンター)はその夜、カメラマンのスコット(スティーヴ・ハリス)と共に地元の消防署に密着取材を試みていた。

 消防隊員のジェイク(ジェイ・ヘルナンデス)とフレッチャー(ジョナサン・シェック)を案内係にあてがわれ、待機中の和やかな様子を撮影していたところへ、遂に出動命令がかかった。便乗した消防車が向かったのは、年代物のアパート。管理人のユーリ・イワノフ(ラデ・シェルベッジア)によれば、2階に暮らすエスピノーザ夫人が悲鳴を上げているのだという。

 先に到着していた警察官とエスピノーザ夫人の部屋に赴き、鍵を外して中に突入すると、夫人は寝間着の胸許を血で汚し、奇妙な唸り声を上げて立ち尽くしていた。説き伏せながらゆっくりと近づき、抱えて搬送しようとしたそのとき、夫人が突如として警察官のひとりに噛みついた。

 どうにか振り解き、警察官を救助すると、夫人をフレッチャーに委ね、他の面々は1階のロビーに戻る。警官の容態は芳しくなく、至急に治療が必要だった。1階に集まってきた住人たちは説明を求めて騒ぎ立てる。

 そのとき、ロビーに轟音が鳴り響いた。驚き振り返ると、そこには夫人の介抱をしていたはずのフレッチャーが俯せに横たわり、身体の下から血を流していた。

 何か、異常なことが起きている。ジェイクたちは負傷者を救急搬送するべきだと判断したが、あろうことか出入口は外側から施錠されていた。愕然とするアンジェラたちに、外部のスピーカーが呼びかける。あなた達は隔離された、と。

 偶然に潜入したテレビカメラは、アパートの中で発生した異常事態を記録した……



[感想]

 本篇は2007年にスペインで製作された、主観視点映像によるホラー『REC/レック』のハリウッド・リメイク作品である。スペインにて大ヒットを飛ばしたことがよほど耳目を惹いたのか、2008年に日本でオリジナルが公開されたときには既にほぼ完成していたほどで、異様に速いペースでの製作となったようだ。

 制作期間が短かったから、というわけではないだろうが、本篇のプロットはオリジナルをほぼ忠実に踏襲している。舞台こそスペインからアメリカ・ロサンゼルスに移っているが、ローカル局による消防隊の取材から、古びたアパートで発生した事件に巻き込まれ、外側から封鎖されたなかで、異様な事態をカメラが目撃する。極端な言い方をすれば、オリジナルの人物名を変え、英語に吹き替えただけでも良かったように感じられる、そのくらい忠実な作りだ。

 むろん、完璧に同じというわけではない。撮影クルーが“感染者”と接触する機会が増え、思わぬ方法で立ち向かう場面が追加されている。またオリジナルを観たとき、こういうシチュエーションであれば1回ぐらいはあって然るべきでは、と思っていた描写が新たに加えられている。クレジットはされていないが、オリジナルの監督ふたりが助言をしていたことは間違いないようで、膨らましたり、逆に削ったりした部分はことごとく的確だ。

 しかし一方で、全体としての衝撃が弱まっている、という印象も受ける。観ているこちらがオリジナルのプロットをある程度記憶していることを差し引いても、表現の仕方や間によって恐怖を醸成するべき場面で、全般にさらっと流してしまっているのだ。たとえば消防隊のひとりが突然転落してくる場面、スペイン版は絶妙の距離感と間の使い方で異常なまでのインパクトを齎すが、本篇の場合はカメラと落下地点との隔たりが大きく、映像・音共に少し腑抜けたように感じられた。中盤以降、“感染者”が激増したあたりからの逃走劇も、リアリティを求めたのかカメラのぐらつきが大きく、オリジナルよりも位置関係が掴みにくくなっているし、クライマックス、ナイトヴィジョンで描かれるパートにしても、もう少し間合いに気を配っていればより緊張感を高められただろうに、と惜しまれる。

 オリジナルの発表からほとんど間がなく、プロットもほぼ手つかずで復元しているからこそ、比較してああだこうだと言ってしまうが、しかしもとが良質のホラーであっただけに、オリジナルのことをなるべく意識から排除して鑑賞すれば――或いは未だオリジナルを知らないようなら、そのまま鑑賞すれば素直に愉しめるだろう。“感染者”を巡るアイディア自体にはもはや新しさはないが、視点をひとつに絞り、様々な状況から撮影することで生じる映像表現の幅、物語の生々しい手触りはやはり出色である。これほど制作期間が接近していたなら、もっと何かしら差別化する趣向は欲しかった、と惜しまずにはいられないが、基本的な良さを損ねなかったことは評価したい。

 既にオリジナルを鑑賞済で、「1回観れば充分」と感じたなら本篇を観る必要はまったくない。だが、オリジナルの表現手法そのものを高く買っている人や、そもそもオリジナルをまったく知らず、かつホラー映画に関心のある人ならば、一見の価値のある作品であると思う。とりわけ、『エミリー・ローズ』にてタイトル・ロールを演じたジェニファー・カーペンターの演技は、図らずも異常な現場に立ち会う羽目になってしまった女性の恐怖を見事に表現しており、彼女だけでも見応えがある。



 ちなみに本篇のオリジナル『REC/レック』は好評を受けて続篇が制作され無事に完成、秋頃には何らかの形で鑑賞できる運びとなるようだ。……出来ることなら、リメイクである本篇のようにいきなり映像ソフトとしてリリースされるのではなく、短期間でも劇場公開されることを願いたい。



関連作品:

REC/レック

クローバーフィールド/HAKAISHA

エミリー・ローズ