『7つの贈り物』

『7つの贈り物』

原題:“Seven Pounds” / 監督:ガブリエレ・ムッチーノ / 脚本:グラント・ニーポート / 製作:トッド・ブラック、ジェームズ・ラシター、ジェイソン・ブルメンタル、スティーヴ・ティッシュ、ウィル・スミス / 製作総指揮:デヴィッド・クロケット、ドメニコ・プロカッチ / 撮影監督:フィリップ・ル・スール / 美術監督:J・マイケル・リーヴァ / 編集:ヒューズ・ウィンボーン,A.C.E. / 衣装デザイン:シャレン・デイヴィス / 音楽:アンジェロ・ミィリ / 出演:ウィル・スミス、ロザリオ・ドーソンウディ・ハレルソンバリー・ペッパー、マイケル・イーリー / オーヴァーブルック・エンタテインメント、エスケープ・アーティスツ製作 / 配給:Sony Pictures Entertainment

2008年アメリカ作品 / 上映時間:2時間3分 / 日本語字幕:松崎広

2009年2月21日日本公開

公式サイト : http://7-okurimono.jp/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2009/03/10)



[粗筋]

 神は7日間で世界を創ったという。だが僕(ウィル・スミス)は、たった7秒で人生を叩き壊した。

 ――それから長い時間を費やしたが、僕の“リスト”に並んだ名前もだいぶ絞り込まれてきた。そうして僕は、エミリー・ポーサ(ロザリオ・ドーソン)という女性を訪ねる。今日日珍しい凸版印刷の仕事で生計を立てていたが、先天性の心臓疾患に蝕まれ、最近は納税が滞っている。僕が国税庁職員として納税期限の延長を提案すると、彼女は素直に喜んでくれた。

 僕はエミリーへの接触を繰り返しながら、更に“リスト”の絞り込みと消化を続ける。盲目のピアニスト、エズラターナー(ウディ・ハレルソン)は生計を立てるために肉のネット販売会社でオペレーターを務めているが、僕の乱暴な言葉にも最後まで礼儀を損なわなかった。求めている条件に合致する。

 ポリーの助けを得て、窮地に陥っているメキシコ移民の女性も見つけた。苦しむ彼女のもとには、ふたりの美しい子供がいる。彼らを救い出してあげるべきだ、と実感した。

 刻一刻と、最後の計画を実行に移す瞬間が近づいている。弟(マイケル・イーリー)にも語ることの出来ないこの計画の全貌を唯一知る親友のダン(バリー・ペッパー)も、苦悩しながら「約束を果たす」と誓ってくれた。

 もう、迷いはないはずだった。だが、エミリーとの時間をかけた交流が、そんな僕の決意を微かに揺さぶっていた……



[感想]

“衝撃の結末”を謳い、観客に対して「結末は明かさないでください」と注文する、そういう類の映画がたまにある。もともと推理小説好きが高じて、その手の映画を立て続けに鑑賞したことがきっかけで映画道楽に嵌った私にとって、しばしば裏切られるのを承知していても魅力的な惹句だ。本篇もそんな売り込みの仕方をしていたので、鑑賞する機会をずっと窺っていた。

 率直に言えば、その意味ではやや期待外れだった、と言わざるを得ない。サプライズ・エンディングを謳う作品に慣れているとか、ちょっと勘がいいという人なら、予告編や各種媒体で散見する情報と、序盤における描写の幾つかから、あっさり察しがつくだろう。私はそこから更にもうひとひねりがあるのかと最後まで身構えていたが、幾つか見落とした要素があるくらいで、ほぼ想像通りのところに着地してしまった。

 だがしかし、観て不満を覚えるということはなかった。そもそも問題の“衝撃の結末”が主題として充分な重みを備えているから、見抜いたとしても決して軽くはならない。加えて、終盤で真相が明かされるときのためにじっくりと積み重ねていく描写が実に味わい深いので、映画として充分に見応えのある仕上がりとなっているのだ。

 いちばん重要な部分について意図的に触れずに語っているからこそ、主人公の感情の奥行きが伝わってくる。弟との電話越しの会話、“リスト”に掲載した人間に接触するときの言動とその後の表情の落差、そして唯一“計画”の全貌を知っている親友との繊細なやり取りに深みがある。

 とりわけ、ロザリオ・ドーソン演じる心臓疾患の女性・エミリーとの触れ合いで、両者が覗かせる感情の機微が秀逸だ。監督は本篇をまず何よりもラヴ・ストーリーとして読み取れるよう心を配ったようだが、奥に隠された背景に相応しい、類型のない愛の物語を見事に演出している。クライマックス間近、晩餐に招かれた主人公の表情は、真相を知っていればこそ余計に胸に沁みてくる。ウィル・スミスは自らの製作・主演作品において自己陶酔にも等しい異様なテンションの高さで存在感を誇示する傾向にあるが、本篇ではその個性を程良く抑え、メリハリの利いた演技を見せている。

 映画的な魅力をきちんと詰め込んだ映像もいい。カメラのフレームをきちんと活かした構図に、美しい情景、気候を登場人物の感情に重ねていく手管など、こだわりを湛えた映像によって、たとえ予想がついたとしても類を見ないことは確かなドラマを美しく彩っている。本来は大スクリーンで鑑賞する必然性はなさそうな主題を、充分に劇場に足を運ぶ価値のある映像に仕立て上げている。

 そして、主人公の行動の意味を悟ったうえでもなお、それを許容できるか否か、という問いかけの重みは変わらない。その重さを損ねることなく、誠実に描いた本篇は、一見の価値のある作品であると思う。認めるにせよ異議を唱えるにせよ、主人公の行動の結果として描かれるラストシーンは、確実に観る者の胸を震わせるだろう。