『デイ・オブ・ザ・デッド』

『デイ・オブ・ザ・デッド』

原題:“Day of the Dead” / 監督:スティーヴ・マイナー / 脚本:ジェフリー・レディック / 原案:ジョージ・A・ロメロ作品『死霊のえじき』 / 製作:ボアズ・デヴィッドソン、ジェームズ・ダデルソン、ランドール・エメット、ジョージ・ファーラ / 製作総指揮:アヴィ・ラーナー、ダニー・ディンボート、トレヴァー・ショート、デイヴィッド・ヴァロッド、ポール・メイソン、ジョーダン・ラッシュ、ロバート・ダデルソン / 撮影監督:パトリック・ケイディ / 美術:カルロス・ダ・シルヴァ / 編集:ネイサン・イースターリング / 特殊メイクアップ・デザイン:ディーン・ジョーンズ / スタント・コーディネーター:スティーヴ・グリフィン、ディヤン・リストフ / ゾンビ・ムーヴ指導&実践:ブライアン・ラ・デ・ローサ / 音楽:タイラー・ベイツ / 出演:ミーナ・スヴァーリニック・キャノンヴィング・レイムス、マイケル・ウェルチ、アナリン・マッコード、スターク・サンズ、マット・リッピー、パット・キルベーン、テイラー・フーヴァー、クリスタ・キャンベル、イアン・マクニース / 配給:MOVIE-EYE

2008年アメリカ作品 / 上映時間:1時間25分 / 日本語字幕:岡田壯平

2008年08月30日日本公開

公式サイト : http://www.dayofthedead.jp/

シアターN渋谷にて初見(2008/09/02)



[粗筋]

 コロラド州の、何の変哲もない田舎町レッドヴィル。この町で突如、検疫隔離演習が実施されたとの旨で、24時間に亘って住民の出入りが規制されることが通告された。風邪を引いた子供を隣町の総合病院に連れて行こうとしていた親も軍によって追い返され、住民たちは苛立ちを禁じ得ない。

 レッドヴィルの出身者である女性伍長サラ・クロス(ミーナ・スヴァーリ)も、道路封鎖以外の事情を一切知らされておらず、不審を抱いていた。しかも、派遣されるはずだった医療班はいつまで経っても到着しない。サラは委ねられた部下のうち、新兵のバド・クレイン(スターク・サンズ)を引きつれて、実家の様子を見に行くことにした。

 ちょうど恋人のニーナ(アナリン・マッコード)とことに及ぼうとしていた最中だった、サラの弟のトレヴァー(マイケル・ウェルチ)は突然の帰省と横柄な振る舞いに憤るが、対するサラも、風邪気味で寝込んでいるという母をほったらかして恋人といちゃついている弟に怒りを隠さなかった。とりあえず母を地元の病院に連れて行くことを決めると、トレヴァーが気づかっていた友人の様子を見るために、サラはいったんバドとふたりだけで車を走らせる。

 だがトレヴァーの友人宅に友人の姿はなく、代わりにカーテンの裏にふたつの惨殺屍体が隠されていた。とりあえず軍を介して現地の警察を寄越すよう手配し、母や弟たちを拾って病院に赴くと、そこは野戦病院さながらの凄惨な様相を呈していた――多くの町民が訪れ、あちらでもこちらでも、咳き込む患者ばかり。

 病院には、道路封鎖を監督していた上官のローズ大尉(ヴィング・レイムス)もおり、彼に言われてサラは病院のローガン医師(マット・リッピー)に、発見した屍体の状況について離すことになった。「歯形は付いていなかったか」という奇妙な質問に眉をひそめたところへ、母と共に待合室に残してきたバドが駆け込んできて、様子がおかしいと訴える。

 待合室で咳き込んでいた人々が突如沈黙し、一点を見つめている。そして――事態は一挙に、最悪の方向へと転がっていった……!



[感想]

 2004年に公開された『ドーン・オブ・ザ・デッド』は、停滞していたゾンビ映画のジャンルにひとつの潮流をもたらした。ゾンビと言えば緩慢な動き、というお約束を覆し、“疾走する屍”というヴィジュアルを観客に許容させる状況を作ったのである。その前にも『28日後...』というゾンビ映画のヴァリエイションが生み出されているが、あくまで生者であるあちらと異なり、“生ける屍”であった点で、やはりあの作品が分岐点となったと言って差し支えあるまい。

ドーン・オブ・ザ・デッド』はゾンビ映画の祖とも言うべきジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』をリメイクしたものであるが、本篇はその続篇に当たる『死霊のえじき』をリメイクしたものである。『ドーン〜』が事実上新しいヴィジュアルを提示しただけに、こちらはどうなるのかと、期待と不安が半ばしていたのだが、完成した作品は――正直、微妙な代物と言わざるを得ない。

 格別、不出来ではない。むしろ、サヴァイヴァル・アクションとしてツボを押さえた優秀な仕上がりと評するべきだろう。五里霧中のまま生存のための戦いを余儀なくされる人々、最後まで誰が生き残るのか、どうやって逃げ延びればいいのか解らないという状況のなかで必死に試行錯誤する姿と、そこに緊迫感をもたらすためのアイディアの数々は見応えがあり、80分程度の短い尺ながらきちんと楽しませてくれる。

 だが同時に、それだけなのである。これといった新味がどこにもない。サヴァイヴァル・ホラー、アクション映画としての肝要な部分を押さえ、潮流に乗ってゾンビを高速化させた。他に特別新しい趣向を添えているわけではない。

 僅かに目を惹いたのは、「知性や習慣は生前の形跡を留めている」という設定を利用した後半での成り行きと、思わぬ形で地元の市民ラジオ局に集まった面々のあいだで生じる短い騒動である。いずれも決して目新しくはないが、状況をうまく活かして、前者はユーモアとちょっとしたドラマを設け、後者はゾンビの頻出する流れで生じた中弛みをいいタイミングで引き締めている。きちんと流れを考慮して組み込んでいる芸の巧さは評価したい。

 しかしやはり本当にこのくだりぐらいしか、強いて採り上げる見所がないのだ。クライマックスは迫力に満ちているものの、先行作で何度も見たような展開であるし、主人公たちが最後に採る手段にしたところでやはり珍しさはなく、それ以前にああも都合良く運ばないのでは、という疑問が残る。きっと主人公たちも無事では済まないだろうし、あれで助かっているのが不思議で仕方のない人もいた。

 と、全般に否定的な意見ばかりを連ねたが、しかしロメロ監督版で提示された要素を定石に則って丁寧にまとめ、ティーン向けのホラー映画の面白さで引き締めた、よくできた作品であることは間違いない。走り回ることと感染の経路が恣意的であるのが引っ掛かるものの、驚異的な感染率でどこもかしこもゾンビだらけ、という状況を作りあげている点、そういうものが大好きな観客であれば充分に楽しめるはずだ。

 出来ればもう少し独自の見所を設けてほしかったものの、ゾンビ映画の流れを次へと受け継いでいく役割はきちんと果たした、堅実な1本である。――たぶんゾンビ映画マニア以外は普通にキャーキャー言えると思う。