『Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!』

原作:東堂いづみ / 監督:長峯達也 / 脚本:成田良美 / キャラクター・デザイン:川村敏江、爲我井克美 / 美術:行信三 / 作画監督:爲我井克美 / 音楽:佐藤直紀 / 声の出演:三瓶由布子竹内順子伊瀬茉莉也永野愛前田愛草尾毅入野自由仙台エリ、ザ・たっち、朴ろ美西村ちなみ長沢美樹釘宮理恵皆口裕子木内レイコ / 配給:東映

2007年作品 / 上映時間:1時間10分

2007年11月10日公開

公式サイト : http://www.precure-movie.com/

ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2008/01/03)



[粗筋]

 パルミエ王国復興のためにドリームコレットを用いて“ピンキー”を集めているふたりの王子ココ(草尾毅)とナッツ(入野自由)。ふたりに見出され、伝説の戦士プリキュアとなって戦う、夢原のぞみ(三瓶由布子)たち5人の少女。ナイトメアとの攻防を繰り返しながら、恋に勉強に忙しい毎日を送っていた。

 ――がそこはそれ、たまには退屈を持て余すこともある。そこでのぞみたちが繰り出したのは、お姫様や王子様の扮装を楽しむことの出来るテーマパーク・プリンセスランド。

 それぞれに夢心地を楽しんでいたのだけれど、鏡の迷路を出たあたりから、ココとナッツの様子がおかしい。すぐさまふたりが別人にすり替わっていることを見抜いたのぞみたちの前で、ココとナッツの偽物はナイトメアの操る怪物・コワイナーに変貌した。

 双頭のコワイナーに苦戦しつつもどうにか倒したのぞみたちの前に姿を現したのは、ミギリン(たくや=ザ・たっち)とヒダリン(かずや=ザ・たっち)と名乗る小さな生き物。彼らは鏡の国の住人だったが、鏡の世界の力の源であるクリスタルを奪ったシャドウ(朴ろ美)によって世界は支配されてしまい、ふたりはシャドウの手先にされてしまったのである。シャドウの狙いはドリームコレット

 だが、シャドウによって囚われの身となったココとナッツを見捨てることは出来ない。ミギリンとヒダリンの水先案内によってのぞみたちは鏡の世界に侵入したが、そんな彼女たちの前に立ち塞がったのは――彼女たちに瓜二つの、5人の戦士だった……



[感想]

 子供向けのアニメの感想だろうと粗筋は容赦なく大人の語彙で書いてみた。どーせこのサイトを本来の対象年齢層が見ているはずはなかろうし。

 ――とは言い条、子供向けであり、TVアニメ・シリーズが基本にあるという前提を呑むことが出来れば、これは非常に完成度の高い作品である。

 観客参加型作品を謳い、冒頭にて本編のマスコット・キャラにして一部にとっては比喩としての“王子様”の役割を果たすココとナッツによる、観客を対象にした前説を行っているが、そこからして絶妙なのである。子供には劇場入口であるものを配っており、本編の途中でそれを使うことを求める一方で、扱ううえでのマナーをユーモアに包んできちんと言い聞かせる。他方で、大人相手にはきちんとココとナッツそれぞれの人間形態で挨拶をさせるあたり、保護者以外の大人がいったいどういう客筋なのか百も承知でいることを窺わせ、ニヤリとせずにいられない。

 のっけからこれほどしたたかに繰り出してきたあたりから安心感は色濃かったが、本編も同様で終始外さないクレヴァーぶりを示している。序盤、戦いと無縁なところできちんとメイン・キャラクターたちの個性を浮き彫りにし、オリジナルの人間関係を引き継いだ甘酸っぱいシチュエーションを盛り込んで楽しませたあとは、一気呵成に本筋である戦いに引きこんでいく。駆け引きなどなしの直線的な話運びだが、オリジナルからして決して意表を衝いた展開はさせていないしどんでん返しがあるわけでもないので、観客が期待する話をきちんと選択していく。“夢”と“希望”を謳った真っ直ぐな主題も、油断しているとなかなか胸を打たれる。主人公であるのぞみ=キュアドリームまわりだけではなく、自分の影と対峙する他のプリキュアたちにもドラマが鏤めてあるのが憎い。

 尺が長い分、見せ場を増やす工夫も怠っていない。プリキュア5人の必殺技をまんべんなく、しかもそれぞれの特徴に応じた見せ場を設けて繰り出させ、変身シーンは2箇所用意している。直前の服装も映画ならではのアレンジとして、それまでのお姫様の扮装からの変身と、普段着での変身のふた通りを披露し、より華やかな印象だ。

 ちょうどお姫様の扮装をしているあたりから最初の戦いに臨むあたりまでがやや作画的に質が落ちていたが、そこを除けば脚本、演出、作画いずれもほとんど高いテンションを保っている。純粋に子供向けの映画として、まったく間然するところのない仕上がりだ。

 だが、意識して子供向けに作ったところを受け入れることが出来るなら、大人でも充分に楽しめるだろう。前述の前説からして大人の観客を意識していることは如実だが、表現や配役にも大人を唸らせる工夫が随所に為されている。

 例えばアクションシーン。大技をふんだんに採り入れて華やかさを見せつける一方で、細かな動きに気を抜いていない。こと、個人的に目を奪われたのはキュアレモネードだった。何せ、肉弾戦の最後に繰り出したのは掌底だし、それ以前の見得の切り方が実に格好いい。女の子ばかりのなかで、その佇まいの凛々しさが際立っている。他のキャラクターにしても、アクション場面での動きは充分に見応えがある。

 また、本来の対象年齢を想定して作られた公式サイトやパンフレットでは言及されていないが、鏡の国側のプリキュアたちにベテランやマニア好みの配役をしているのがまた憎い。メンバーの中では“癒し”の存在であるキュアミントの鏡の国側に皆口裕子を配していることに感嘆するのは確実に大人だけだろう。

 子供に対しても大人に対してもアプローチを怠らず、隅々まで完璧に組み立てられた、職人芸の極みとも言える秀作である。無論、TVシリーズを知っていることが大前提となるが、この作品が好きだというなら何一つ不満を抱くことはないだろう。ネタとしても真面目に観に行くとしても、間違いなく報いてくれるはずだ。